みんなの前で声を出すのは恥ずかしい?
伊 庭 郁 夫

 学級開きから約2ヶ月が過ぎた明るく活発なクラスである。しかし、男子の活発さに比べ、女子の元気のなさが4月から気になっていた。
 そんなある日、5年生の子ども達に尋ねてみた。
「みんなの前で話すのが平気だよと言う人は?」
約半数の子どもが手を挙げる。男子がほとんどだが、女子もいる。
「平気だという人は、その理由を言って下さい。」
「1年生の頃は、恥ずかしかったけれど、だんだん慣れてきました。」
「生まれつき、声が大きくて平気です。」
「大きな声の友達につられて、みんなの前でも気にならなくなりました。」
「聞こえないと、他の人の迷惑になるからです。」
そこで、一つ問い返した。
「迷惑になるって、具体的に言うとどういうこと?」
「何度も、言い直すと時間が無駄になるからです。」
なるほどと思いながら、今度は、
「みんなの前で話すのが苦手だよと言う人は?」
と尋ね、理由を聞いた。すると、ほとんどが、
「恥ずかしい。」
という反応であった。ところが、
「本当に恥ずかしいのは?」
と聞くと、平気だという子ども達から、
「聞こえなくて、何度もやり直している方が恥ずかしい。」
という反応が次々と返ってきた。

 そこで、私自身の子どもの頃の体験談を話し始めた。
「実は、先生はみんなと同じ小学生の頃は、いるのかいないかわからないような子どもでした。」
 すると、「えーっ」といった驚きの声。もう少し話を続ける。
「先生に当てられないように、いつも自信がない時は、下を向いて顔を隠していました。」
と言って、実際に再現してみせる。子ども達は、くすくす笑っている。

 今年は、「計画を書き、汗をかき、恥をかきながら」話す機会を多くしていきたい。
 帰りの会で、当番のスピーチをしている。一言で終わらないよう指導しているが、戸惑う子どもの姿も目にする。
 また、一方的な話し方ではなく「伝え合う力」がつく学びの場を作りたい。
 社会科の「米づくり」の学習では、地域の農家の方にお話を伺った。後半、質問の時間を設定したが、中には説明された内容を尋ねている子どもがいた。
 聞くことの大切さを思い知らされる昨今である。
(安曇川町立安曇小)