巻頭言
伝 え 合 う 力 を
花 田 修 一

 21世紀のわが国の国語教育のキーワードは、「伝え合う力」である。周知のように、小学校・中学校・高等学校の新しい学習指導要領の国語科の目標は、次のように公表された。( )内は、中学●高校の文言を示す。
国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高めるとともに、思考力や想像力及び言語感覚を養い(思考力や想像力を養い言語感覚を豊かにし●思考力を伸ばし心情を豊かにし、言語感覚を磨き)、国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる(国語に対する認識を深め国語を尊重する態度を育てる●言語文化に対する関心を深め、国語を尊重してその向上を図る態度を育てる)。
現行との相違点は、表現が先行していること、「伝え合う力を高める」という文言が新設・強調されたことである。
 では、いったい「伝え合う力」を高めるための国語教室はどうあればよいのか。私は次の二点を「さざなみ国語教室」の同行の士に贈りたいと思う。

1 語り合う国語教室を
 子どもと子ども、子どもと先生、それぞれが、自分の感じたことや考えたことを対等に語り合うことである。「わたしは、こう思うよ。」とお互いが率直に語りかけることである。「ねばならない」から、「こんな思いもある」と価値の多様化を図る国語教室を展開したい。「みんなちがってみんないい」(金子みすず)のだから。

2 真実の国語教室を
 学級崩壊などと誰れが呼んだのか。マスコミに踊らされてはいけない。世紀末は子どもも大人も生きることが大変なのだ。不況の波は子どもの笑顔を奪う。だからこそ国語教室だけでも明るくしたい。先生の表情が沈んでいては暗くなる。いつも前向きに、新しい真実を求め、一歩ずつ進んでいく先生の後ろ姿に子どもたちは共感し、信頼するのだ。先生という仕事も今、受難の時だ。志を同じくする仲間とともに手をとりあって生きていきたい。「真実の言葉、生きる力である」(吉永幸司)のだから。
 「伝え合う力」を高める国語教室に挑戦しよう。さざなみの朋よ!
(お茶の水女子大学附属中学校)