研究方針(講義の間の雑談)
新規な研究を
端的に言えば「ノーベル賞を目指す」。これはあまり言うと鼻で笑われる。
私の分野は広く言っても物理化学だからノーベル賞とはかなり遠いが
超伝導酸化物でノーベル賞を頂いた発見者も直ぐそばにいたことから
諦めないでいたい。政治的な工作をしたノーベル賞はいらないが、
日本人はもっとノーベル賞を取って良いと思う。
税金を使わせて頂いていながら世界に冠たる発明・発見ができないのでは申し訳ない。
何でも良いから「何か面白いことを」
最初は小さくても、些細なことでも良いから、少しでも世界で誰も気が付かなかったことを明らかにしたい。
先駆的研究とは孤立無援の研究でもある。発表してもだれも凄いと思ってくれない。宝探しとは山師であり、詐欺師と通じるところがある。
百のアイデアを出し、90を頭の中で潰し、10を文献で検討、残った3を実証したい。
実用化できない研究は価値がない
誰もやらないのは金儲けにならないからと見捨てられているものも多い。どんな基礎研究にも実用化の糸口が落ちているはずである。
およそ工学を志すならば金儲けになる技術を身につけるべきである。熱力学は金儲けにつながる学問である。不可能を予測してくれる学問であるからだ。
それを改めてほじくり返してもこれまた税金・研究資金・研究時間の無駄。何のためになるのかを見定めて研究したい。
「エコプロセス工学」とは環境に優しいことは勿論だが、エコノミックにも通じ、
経済社会で成立しない新プロセスは頭の中で検討するだけで十分であろう。
研究のための研究というドツボに入り込まないように。
しかし、これまでその穴に飛び込まずに逃がした虎児、大魚は何匹いたことか。
他の研究者にテーマを与えることは、その分野をさらに活発に研究できること、と
割り切ることにした。小心者も大らかに行こう。それにしても中国の研究者は貪欲だ。日本人もそうであっても良いはず。
20年先でも使えるデータを残す
小手先の新規なデータよりも未来永劫に渉って役立つ研究をしたい。
その点、熱力学データ、電気化学データは生き延びる。
百の理論は一つの実験で壊れる。百の実験は一つの理論を創る。
先輩の先生方から教わった教訓の受け売りだが、実験屋の面目。理論を導き出せない実験は無駄。理論を語れない実験屋は無用。
実験の背景に理論があり、常に新しい理論を空想すべきだ。間違っても良い、仮説のある実験をしよう。
inspirationは宇宙から降り注ぐ粒子線が我々の頭の中で破裂するときに生じる。
コンクリートの建物の中にいては駄目だ。休日は宇宙線を浴びねばならない。
夢のある研究を。
次の世代の研究者を育てるためにも大きな夢を追っていきたい。
2006年7月24日更新 2021年6月1日追記
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