日本金属学会1997年春 講演概要


オゾンガスによる過酸化物の合成

京大院 小川 貴道 学生 長澤 大 エネ科 鈴木 亮輔 小野 勝敏

目的 空気中には極微量しか存在しないO3ガスは、最近無声放電により大量かつ高濃度で発生できるようになった。O3分圧 1 気圧は熱力学的には酸素分圧 1019 気圧以上に相当するので、超高圧酸素下でしか合成できなかった酸化物、過酸化物を全圧 1 気圧で合成できる可能性がある。例えば、3価クロム Cr2O3 が純酸素中では安定であって、磁性材料 CrO2 の合成には熱力学的には純酸素中でも合成可能であるが、実験的には 723K で 1400 気圧以上を要したと報告されている。超伝導酸化物等、高酸化力を持つ O3 ガスの材料合成プロセスへの適用を考えて、金属及び純金属酸化物に O3 を高温で吹き付けることによって過酸化物等の合成を試みる。

方法 全圧 1 気圧の酸素ガスに毎時 140g の O3 を富化できるオゾン発生機を用い、5.9vol% 迄の O3 を含有させて所定温度に保持した試料に 200ml/min. の流量で水冷ランスから吹き付けた。O3 濃度はヨウ化カリウム水溶液を用いた湿式定量分析によった。排ガス中の有毒な O3 は加熱した分解触媒に導き完全に酸素に分解し大気解放した。

結果 Cr2O3 に O3 を反応させると 473K 以下で CrO3 単相、657K 以下で Cr2O5 が合成され、他に Cr5O12, Cr3O8 がわずか副成した。なお 657K 以上では O3 濃度が 0.01% 以下に減少するために反応しない。Ag2O に作用させると 373K でもその表面に Ag2O2 を生じた。また BaO に作用させると純酸素中でも合成できる BaO2 を生じた。一方、 O2 では合成できない CaO2, MgO2, SrO2 などを O3 で試みたが水酸化物の合成を促進するのみであった。


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