「モバイルパソコンを盗まれた」
− モバイルユーザー諸氏の危機管理の為に
平成10年6月、事業部先進モバイラーの一人が、出張先で盗難の被害に遭いました。この経験をモバイルユーザー諸氏の危機管理に役立て欲しいとのご本人のご要望もあって、ここに掲載させていただきます。
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1.盗難時の状況
先日マレーシアに出張したときの出来事です。関空を昼頃発ち途中シンガポールを経由してマレーシアのペナン空港に午後九時頃到着しました。今まで十数回来ており勝手知った所でした。
ちなみに今回は私を含め3人での出張でした。
パスポートコントロール、荷物検査、両替と手際よく済ませ一番最初に出口を出て空港からホテルまでのタクシーチケットを購入するためチケットカウンターに向かったところ、既に10人くらいの列が出来ており順番を10分位待ったと思います。
尚、この時の荷物は3点で、空港設置のキャリーカーに大きなスーツケース、モバイルパソコンの入った手提げのアッタシュケース、手みやげの酒の入った免税店のビニールバッグを並べて載せていました。
順番が来るまで列の進行に合わせて私の右側にあるキャリーカーを押して行きこの間は常に荷物に目を光らせていました。順番が来て行き先を告げ、支払いをし、釣りを受け取るまでほんの2〜30秒だったかと思いますが、この間だけ荷物から目を離してしまったのです。その時パソコンの入ったアッタシュケースのみを盗まれてしまいました。
他の二人はどうしていたかというと、一人はタクシー乗り場で待っており、もう一人は未だゲートから出てきておらず、この時は私一人でした。
当時空港ビル内は到着客、出迎えの人々でごった返しており、よけいに気がつきにくかったのだと思います。周りを見回しても既に後の祭り、もはやどうしようもありません。取りあえず外で待っている一人に連絡し、残りの荷物を見てもらい警察に届けに行きました。
2.警察への届け出
警察での被害届は自己申告でした。警察官の言うとおりに被害内容、状況を自分で記入するわけです。簡単なインタビューを含め一時間ほどで終わりましたが、落ち着いて来るにつれ情けないやら腹が立つやら、疲れがどっと出てきたものです。被害届に警察の確認スタンプ、署名が入ったもののコピーを受け取り、警察での届け出は終了です。私物を含めた被害は
1)モバイルパソコン
2)アッタシュケース
3)めがね
4)カメラ
5)電子手帳
6)電卓
でありました。幸いなことに、
パスポート、現金、クレジットカードは身につけていましたので無事でした。また業務上の書類、生活用品は大きなスーツケースに入れていましたので業務には差し支えなかったことも幸運でした。
3.海外出張時の注意点
今までよく言われてきているし、常識と思われますが今回の私の経験からあらためて考えると以下があげられます。
1)手押し車(キャリーカー)は出来るだけ使用しない方が良い
自分の手で直に荷物をハンドリングする事により直接監視出来る。カーに乗せると大きい荷物の陰に小さい荷物が隠れることもあるし、カーごともって行かれる心配もある。
2)手提げ(小さいアタッシュのような)鞄には貴重品を入れない
今回の場合も手提げだけがやられました。大きな荷物は目立つし持ち運びも大変なので盗らなかったのでしょう。
パスポート現金等は入れないのはもちろんですが、パソコンも避けた方が無難かも知れません。ただしパソコンは振動、熱等を考慮すると手提げの方が安全なのですが....。
(XX班コメント :
パソコンをプチプチマットで簀巻きにしておくと効果があります。)
3)何か用事をする時は荷物を見てもらうこと
一人の出張時は仕方ありませんが複数の場合は必ず見てもらうこと。たとえ同行者が上司、偉い方であろうと。
4)パスポート、現金、クレジットカードは必ず身につけておく
今回はこれがせめてもの救いでした。特にパスポートは金目でないと思い、つい鞄の中等に入れてしまうものですが、海外ではある意味ではお金より大事です。
5)警察に必ず被害届を出す
盗られたものはまず戻ってきませんがめんどくさがらず届け、被害証明をもらうことです。日本へ帰ってからクレジットカードの盗難保険申請をするとき必須の書類となります。クレジットカードに自動的についている保険は人の傷害、死亡のみでなく物損も補償しています。会社から支給のコーポレートカードも同様です。
6) IGNのID使用停止措置
(XX班にて追記)
直ちに、XX班へ電話連絡し、
IGNのIDを無効にしてもらうこと。
7)日本人は常に狙われていると言う認識をする
我々が海外出張するときは、旅慣れている、知った場所である、一般の旅行客の様な素人でない等々の思いが少なからずあるもので、これが落とし穴だった気がします。現在、東南アジア各国は景気が悪く失業者も多いため特に治安が悪いようです。
初心に返ってもっと慎重に行動する事が必要でした。
以上ですがモバイルユーザー諸氏にとっては、「なんや当たり前やないか」、「言われるまでもなく十分注意はしてるよ」といったことばかりだと思います。私もそうでした。しかし災難は突然やってくるもの。もう一度再確認してください。
4.おわりに
今回の盗難は私にとって非常にショックでした。今まで20年余り海外出張を経験し一度も被害にあったことが無く、自分でも常に注意をしてきたつもりですし、自信もあったわけです。出張に行く部下に対しても注意を喚起していたこの自分が、と思うとなおさらです。さらにモバイルパソコンを活用し、その便利さ、快適さ、機動力等恩恵にあずかり、もはや海外出張には必須の武器となっていた会社の財産まで無くしたことに対する自責の念で、その夜はなかなか寝付かれなかったほどでした。
ただ、こんな事は私だけで十分ですし何らかの形で皆様にもお伝えしようと思っていたところ、XX班のA主任より依頼があり紹介させていただきました。何かのお役に立てば幸いです。
以上
「モバイルパソコンを盗まれた」(2件目)
− モバイルユーザー諸氏の危機管理の為に
これで2件目になりますが、平成10年11月、事業部モバイラーが出張先で盗難の被害に遭いました。この苦い経験をモバイルユーザー諸氏の危機管理に役立ていただくため、ご本人の報告を掲載させていただきます。
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1.発生日時及び場所
1998年11月11日 午前8時(入国直後) 晴れ
ヨハネスブルグ空港駐車場(ターミナルビル前屋外)
2.盗難品
ブリーフケース
(モバイルパソコンを含め書類など)
3.発生状況
1)
日本よりシンガポール経由にて、同行の商社の出張者1名とヨハネスブルグ空港到着後、Baggage
Claimにてブリーフケース、ショルダーバッグとスーツケースをカートにのせImmigrationを出た。
2) 銀行にて現地通貨に交換している時、遅れてImmigrationを通過した同行者が同社の現地人運転手を伴ってやって来、並んで通貨交換を始めた。この間に運転手は小生のカートに同行者のスーツケースを積み替えた。
3)
後から通貨交換を始めた同行者のほうが、先に換金が終わったので、遅れて換金が終わった小生は、カートを押す運転手と同行者の後を追いかけて行く状態となった。このため、いつもは手に持っているブリーフケースはカートにのったままとなった。
4)
車(ベンツ)に先に到着した運転手が、トランクに小生のスーツケース、ショルダーバッグとブリーフケースをのせた。同行者がこれを手伝ったが、スペアタイヤが邪魔をして同行者の荷物は入れられなかった。
助手席に置こうと同行者と運転手は話し合っていた。
5)
丁度この時、我々と背中あわせの空いた駐車スペースにピックアップトラックがバックで進入して来た。
手持ちぶさたの小生は、ぶつからぬようカートを移動させたが、十分スペースがなかったので、空カート置き場に返却しようとカートの鼻先をボンネット側に向けた。
6) 2人が助手席側に移動しはじめ、小生がカートの鼻をボンネット側に向け直したとき、一台離れた左後ろから小生に声をかける男がいたので振り向いた。男は三つ口で、眼鏡をかけた小柄な東洋人であった。
Koreanかと英語で問いかけられたので違うと応えた。さらに、小生の理解できない言葉を大声でしゃべりまくってはいるが、視線は小生を向いていたので注意を集中した。しかし聞き覚えのない言葉なので、理解できないと英語で応え向き直りかけた。この間15秒あるかないかであったと思う。
7)
向き直る途中、トランクが閉まっていない状態が横目に写ったので、ほぼ後ろ手に近い格好でトランクを閉め、空カートを収納場所に押していった。車に戻ってみると、同行者から、小生のブリーフケースが盗まれたと告げられた。
8)
聞けば彼らも、助手席にトランクを入れようと移動中、ボンネットの前で東洋系中年女性から、ボンネットにクリームが塗ってあると呼び止められ、ティッシュぺーパを手渡されボンネットで足止めされていたとのこと。
9)
小生が車を離れている間、運転手は男がブリーフケースを持ち逃げしたと見知らぬ男から告げられたので、指差された方向に、逃げた男を追ったが、男は駐車場出口に待たせてあった車に飛び乗り逃げてしまったとのこと。
10)
空港の警察に被害状況を報告し調書を作成して貰った。コピーをもらう待ち時間刑事からファイルされた顔写真を見せられたが、いずれも中米人で該当者はいなかった。
4. 所感
1)
後悔先にたたずではあるが、今回の盗難事故は以下の点に注意しておれば防げたであろう。
(1) ブリーフケースは必ず手に持つ。
いつもはそうしているが、今回は荷物が多くカートにのせていた。換金時運転手が、小生のカートに同行者の荷物を移しかえ、さっさと運んでくれたので、取り出すのを戸惑ったのが第一原因。
(2)積み替えなどの操作はそれだけに集中する。
トランクに積み込みが終わった直後に声をかけられ、ほんの僅かな時間ではあるが、注意と視線が外に向いたのが原因第二。トランクを完全に閉めるまで目を離さないこと。
(3) 複数と言えど安全ではない。
相手は最低でも4人組みで、どの時点からかは分からないが、我々が迎えの車
(ベンツ=金持ち)
にたどり着く前から的を絞っていたとも考えられる。こちらが複数の場合でも、チームワークのとれた用意周到な窃盗団にスキをつくらないには、見知らぬ人から声をかけられても知らぬ顔をし、応対しないこと。但し、顔見知りか否かは、一瞥しなければわからない面もあるが、空港などで声をかける人間は関係ないと割り切ってしまうことであろう。
幼い頃の親の警告を今にして実感した。
2) ヨハネスブルグでは、毎日20人程度の殺人事件があると現地駐在者から聞いている。アパルトヘイトが廃止され、自由と平等の国になったが、治安は最悪の状態で、国外逃避者もまだ底を打っていないそうで、安心して住める国ではない。警察力も我が国とは比べ物にならないくらい低い。日本が寄贈した自転車により、警官の行動範囲が格段に向上したとニュースになるくらいである。仮に現行犯の盗難にあっても、犯人を追跡するのが適切か疑わしいところもある。状況判断を的確にするしかないであろうが、今回のような4ないし5人組みの窃盗団への対抗策は、上に示した注意を払い、盗難を防ぐことが肝要である。
3)
幸い出張に必要な書類は殆ど送付してあったし、日本からはFAXで応援してもらったので仕事面では支障はなかったが、貴重なモバイルコンピュータを失ってしまった。警察への届け出や、盗難品の補充に無駄時間が発生するし、同行者や、現地駐在者にも心配をかけることとなって迷惑をかけてしまったことは残念である。
以上