悪餓鬼日記帖:なにぃ、文句あっか!

00.02


2000.02.29:

400年に一度の特異なうるう年、Y2K問題の最後のヤマ場を迎えた。
ちょっと話題を呼んだのが気象庁の「アメダス」。古いコンピュータが対応していなかったようだ。今日情シスの担当者に聞いたら、コンピュータによっては400年に一度のうるう年にクロックが対応していないものもあるという。また逆に100で割りきれる年はうるう年でなくなるという点に対応していないものもあって、これが幸いして今回は問題が発生しないという例もあるという。昔、BASICのプログラムでグレゴリオ暦に基づいた万年プログラムを書いたことがあったが、アルゴリズムがはっきりしていたので今度のようなトラブルは起こりようがなかった。
個人的には何もトラブルはなかったが、一つだけ会社のカスタムアプリで珍しい現象が起こった。いくつかのメニューでデータの絞り込みをするために日付の範囲を入力するようになっているのだが、この初期値がおかしくなった。つまり、起動時は今日の日付と一年前の日付が初期値として、例えば今日は2000年2月29日と1999年3月1日が埋め込まれるはずだった。ところが今日に限って昨年3月1日が埋め込まれるべき入力部が空白になっていたのである。これも一種のバグであるが、上書きが出来るので実害は何もなかった。

2000.02.28:

最近になって「確定拠出型年金」というものが検討されているようだが、ちょっとここまで来ると、我慢にもほどがあると言いたくなる。
年金の基礎部分を5万円にしたのを始まりに、この基礎部分を60歳から65歳に延長した。そして今考えられているのが報酬比例部分も65歳からに延長し、かつ保険料はそのままで貰える金額を金利に連動させるという。
この問題の重要な部分は2つあると考える。
そもそも年金の金利を5.5%と設定したのは政府自身であり、90年代不況で金利の確保が困難になった時点で問題を国民に明らかにし、政府による利子補給など早めに手を打つべきであった。にもかかわらず、年金基金の一部が解散しなければならない事態になってもまだ知らん顔をしている。逆に原因を頬かむりして責任の「すべて」を個人に押し付けようとしている。
こういうパターンには前例がある。旧国鉄が膨大な累積債務を抱えた時に何ら手を打たずに放置し、あげくに財産はJR各社にタダ同然で渡し、借金はうやむや、それでも返せないとわかるとたばこの税金で補填するという狡猾なやりかたをしたのは記憶に新しい。政治路線も含めてすべて旧鉄建公団に借金させるという政策は諸外国でも例がない。赤字が発覚したら大きくならないうちに政府がてこ入れするというのが通常である。
もう一つの問題は、金利は勝手に選べという、個人の自由にならないものを個人責任に押し付けるというひどさである。個人が自己の財産を銀行・郵貯・株式等に回すのとはわけが違う。実質的に公的年金という性格を放棄したのと同じである。おまけに金利は個人の意志では決まらない。大抵は政府の政策や機関投資家の動きで市場金利が決まるのであって、そこに個人の意志が反映する余地はまずない。
年金という国民全体で負担と給付のバランスを総合的に考えなければならないシステムは、砂上の楼閣のように風雨に晒されたままにすべきではない。しっかりした土台の上に築いてこそ人々は安心して暮らせるのである。

2000.02.27:

JRの踏切ですさまじい光景を見た。
若い女の子が遮断機をかいくぐって踏切を渡った。と、ここまではたまにある風景。しかしそのあとが恐ろしい。どうやら携帯電話を忘れたらしく、踏切の向こう側にスクーターで来ていた母親らしき人物から携帯を受け取り、二言三言と話していた。そしてである。再び遮断機をかいくぐるという暴挙に出たのである。
電車は上下線とも接近していて、下り線側の電車は警笛を鳴らした。ちょっと、ええ加減にせえや!
携帯電話がなくても死にはしない。死のリスクと携帯電話を天秤にかけるとどちらが重いか、言うまでもないだろう。

2000.02.24:

給料日前で明細書を貰ったが、改めて見たら半年分の交通費だけで20万円もあった。前の事務所から大挙して引っ越した連中の中でも高い方だが、最高は25万円くらいになっているようだ。
交通費だけで会社はかなりの負担をしているように見えるが、実は前の事務所では年間に億を越える家賃を払っていたから安くなったのではないかとの声もある。
組織の再編で設計と現場が一緒になる方がいいという目論見もあったようだが、実際はどうか。聞いてみると設計の連中は移転後もあまり現場には出ていないようだ。若い人達もCADを使って図面を引くのに忙しくて、試運転や客先立会い検査くらいにしか現場に顔を出していない。
現場とは仕事の性質もペースも違うのを一緒にしたことがどういう影響をもたらすのか、結果や如何。

2000.02.23:

会社のマシンにInternet Explorer 5.01をインストールした。
会社の標準はIE 4.01 SP2だが、5.01になってぼちぼち安定してきたし数人の声を聞いても問題ないようなので決断した。自宅より会社の方を先にしたのは、まだHDの余裕があるし性能がやや上で使いやすいからである。
使い慣れてから自宅にも、と考えている。まず最初に感じたのは「お気に入り」のスクロールが早くなったこと。これから少しづつならし運転をして体で使い方を覚えていかなくてはなるまい。
さて、初物は絶対に食わない主義の私にはWindows2000のバグ騒ぎはちょっと開いた口が塞がらない感じである。大小合わせて63,000個のバグというのは、割り引いて考えても多すぎる。おまけにNT4.0からのアップグレードでは、先にパッチを当ててからでないとインストールしてはいけない、それもそんな緊急情報を発売当日に流すというのはあまりにひどい。会社のマシンでもあったように、出荷前の検査を十分にやっていないというのは、それが意図的なものでなくても客に対するサービスよりもコストダウンを優先しているとしか見えない。私の会社でもそうだが、最近コストダウンによる悪影響が非常に目立つ。

2000.02.22:

今日は所用で事務所には行かず、神戸市内のさるメーカーで簡単な用件だけ済ませた。お陰で息抜きができてのんびりした一日だった。仕事をサボったのも同じである(笑)
それでちょうどPCショップへ行く時間ができたので、小さな容量のHDDを1台買ってきた。在庫処分のため定価の半値以下であった。デジカメ画像やフリーソフト、大事なデータのバックアップに使うつもりである。ネット仲間から貰ったHDDが残り少なくなってきたところだったのでいいタイミングだった。

2000.02.21:

満員バスの中でペロペロキャンディーを口にしている女子高生を見た。まったく呆れたものだ。
あまり口にしたくないが、「幼稚」としか言いようがない。最近若者が次第に幼児化しているとは耳にするし、そのような行動が目に付くこともある。「今の若い者は・・・」というような言い方はしたくもないし、すべきではないが、今の時代を考える上でどうしてもこの問題は避けて通れそうにないようだ。
アジアからの留学生が異口同音に「日本の大学生は勉強しないで遊ぶ話ばかりしている」と言う。残念だが少なくない学生がそう言われても仕方がないのは事実だ。もちろん真面目に勉強したり、将来のビジョンを持って行動している人もいるのだが。
また30あるいは40くらいの男が少年漫画を読んでいる姿もあまり誉められたものではない。
こういう状態になった原因はきちんと分析しないといけないし、反省すべき点はきちんと整理することが必要だ。しかし、もっとも肝心なのは若者自身にこの問題を考えてもらうことだろう。年長の人間は批判するだけでなしに彼らに自分達の人生を考える場所と時間を確保してやらねばなるまい。今の日本社会には彼らに鞭を当てることはあっても、自らを省みる余裕を与えていないような気がする。

2000.02.18:

最近財界あたりから「個」の尊重とかいう言葉がよく出ているらしい。
これからは年功序列でなく実力の時代、だからサラリーマンも競争に勝ち抜かないといけない。そのためにはケンカに強い人間になれ、弱肉強食の世界に生き残る個人になれるように企業は支援するということらしい。
「個」あるいは「個人」の尊重という言葉をこれほどえげつなく解釈するなんぞ今まで聞いたことがない。明らかなすり替えの議論である。
いくら実力の時代とはいえ、他人を蹴落とし、自分一人がいい思いをするという発想そのものが近代民主主義と共存できるとは思えない。人間はサバンナに棲む野生動物ではない。こういう陳腐なダーウィニズムを人類社会に適用できるとはとても考えられない。
そもそも「個」の尊重とは、誰からも強制されることなく誰もが自立できるようにすることであって、他人を傷つけてまで自我を通すことではない。自他共の共存を前提とした言葉をねじ曲げて解釈する権利は何人にも許されていない。
共存といえばフランスで始まった週35時間労働はまさにその実例だろう。これが完璧な解決策かどうかは今後の実績を見るとして、「ワークシェアリング」という考え方が国民の支持を得ている根底に社会の底辺を救おうという合意ができているように思える。「個」の尊重のひとつの実践として注目したい。

2000.02.17:

通勤電車を観察していたら面白いことに気がついた。快速電車に使われている電車の種類である。
私が小学生の頃から走っている113系と呼ばれるオレンジと緑のツートンカラーの電車が今も走っている。資料を調べると1963年に最初の車両が関東地区に投入されていることがわかった。記憶をたどると、関西には確か翌年、オリンピックの年に小学校の窓から真新しい電車が走るのが見えたように思える。ということは35〜36年も走っていることになる。これだけ長寿の車両も珍しいだろう。
もちろん途中で冷房を取り付けたり、内装を変えてみたりしているが、いわゆる「足回り」つまり台車や制御装置は通常のメンテナンス以外そのまま使われているということである。物作りの世界では常識のモデルチェンジにも生き残り、今も現役ということはそれだけ丈夫あるいは大切に使われてきたのだろう。特に電車のモーターはインバーター駆動以外は直流のもの故に手入れが大変なのであるが、それを維持してきているにはそれなりの理由があるはずだ。
最近「環境にやさしい製品」と良く言われるが、「丈夫で長持ち」というのもその一面として尊重したいものだ。

2000.02.16:

昨日、今日と突風が吹き荒れてものすごく寒い。通勤のバスを待つ間、吹きさらしになるので顔と耳は痺れるような感じがして痛い。ここまで冷えると事務所の暖房は効いていないのと同じようになる。
近畿の北部でも大雪警報が出っ放し、近年にない大雪だ。今週はこうした寒い日が続くらしい。
ううう、ブルブルッ!

2000.02.15:

私が付き合いのある某職場の話。
前任の係長が定年退職し、交代で他所の事務所から来た係長がちょっとどころかかなりの変わり者で、部下に嫌われている。傍から見てもやはり変わって見える。
先日も月末の在庫や棚卸しデータをプリントアウトしたものを部下が持っていこうとしたら、「ちゃんと連絡書を作って下さい」との指示。わざわざ自分の印鑑まで押して関係先へ配布させた。そもそも、こういうルーチンの月報は決まった先へ決まった部数を配布するので、意味のない書類を添付するなんぞ誰も頭の中になかった。それを無理矢理やらせたものだから部下は開いた口が塞がらなかった。
もっとすさまじいのは、急に大きな荷物が届いたので荷降しの手伝いを頼まれた時に、「何の連絡も伝票もない仕事を手伝う必要はない」として、トラックの運転手を困らせたことである。これも部下の怒りを買った。
私も昔に少しだけ仕事の付き合いがあったが、年を重ねて人間が丸くなるといったことは彼にはまったくなかった。

2000.02.14:

最近の少年犯罪の増加・凶悪化の問題がよく話題になるが、特異な例はともかく底辺の問題としてちょっと気になることがある。それは自立の問題だ。
昔から海外経験の豊富な識者から「日本人は自立していない」と指摘されてきたが、最近はそれが克服されるどころか後退してきているのではないかと思えるようなことがある。その一つはいわゆる「先回り」である。
つまり本人が多少の痛い目に会うことで身を持って経験する「やってはいけないこと」を実感することが減っているのではないか。それは何も親が包丁などの危険な道具を使わせないといったことだけではない。例えば会社でも新入社員を単なる手伝い仕事で忙殺させておいて、本人が自分の仕事の意味を充分理解できないままいきなり一人前の担当者にしてしまうということも含まれる。その場合、本人も生まれてこの方全責任をまかされ、自己の力で解決したという経験が少ないために自分では判断・決定出来ずにオロオロするという側面もある。
かいつまんで言うと、自分の責任で解決すべきことが誰かが面倒を見てくれる「他人事」になっているのである。なおかつ拙いのは、周囲が手を出して先回りしてしまうからますます本人には何が問題だったのか認識できずに終わってしまうことである。
この問題はとりあえず指摘するにとどめておいて、後日改めて詳細を書きたい。

2000.02.13:

家族でちょっと外出した。
冬とはいいながら少し気温も上がり、やわらかい日差しを受けながら10Kmばかり歩いた。子供がいるためにゆっくりしたペースだったが、さわやかな空気を満喫した。切り株だけの茶色の田圃、枝だけの茂み、ひんやりとした風、その中で眩しいほど赤く咲く椿の花は印象的だった。

2000.02.10:

通勤電車の中で「デイリースポーツ」を読んでいるオバサンを見かけた。
一般紙の休刊日ではない。何に興味があるのか知らないが、珍しい光景だった。

2000.02.09:

昨夜の雪で街は一面の銀世界となった。坂道では無理をして出てきた車がスリップして動かない。バスも山手側はチェーンを装着したもので運転、途中でチェーンなしのものと乗り継ぎとなった。
しかし、それも10時ごろまで、後は雪も解けて元に戻った。
やはり2月である。

2000.02.07:

2月2日に書いた、システムを2月29日に止めるかどうかの最終結論が出た。
陸蒸気組は停止、新幹線組は稼動する。
陸蒸気組、新幹線組のいずれもシステムは昨年のY2K作業の中でちゃんとシミュレーションで確かめたが、陸蒸気組は情シスが万が一の不安を口にしただけでビビッてしまい、尻込みをした。一方の新幹線組は「動かさないと仕事にならん」と訴えたら、情シスから「心置きなくどうぞ」との返事が返ってきた。
すぐにパニックを起こす性格と、もしトラブっても何とかなるさという姿勢との違いが如実に出たようだ。

2000.02.06:

中小企業を保護するために「下請法」という法律があるが、私のいる大企業で下請法を知らない社員が意外と多い。それも新入社員ではなく、ベテランでも「え?そんな法律があるの?」と平然と語る人がいた。これでは下請けいじめがなくならないはずだ。
昨今の不況でコストダウンが声高に叫ばれる中で、下請けにその犠牲を強いる例があとを絶たない。
一昨年、うちの会社では社長が大幅なコストダウンを全社に指示した。その直後ある資材担当者が下請け企業に向かって「社長がああ言ってるんだからお前のところも価格を下げろ」と発言して物議をかもした。他にも大きな反響があったために、「下請け価格を下げよというのは本意ではない」と社長が弁明をする羽目になった。大企業にあぐらをかいて暴言を吐く社員がいるのは情けない。ちゃんとした教育が必要だろう。
というのも、大企業の中にいると、そうした下請けからの不満はほとんど聞こえてこないからである。大抵の中小企業は親企業の無理難題に表立って反論することはまずもってない。「すぐに品物を持ってこい」とか「値段を下げないと発注してやらない」とか言われて、腹の煮えくり返る思いがあってもじっと我慢するのである。それが理解できずに、大企業の横暴を平然と言ってのける人がたまに出る。だからちゃんと教えないとわからない。
弱者の気持ちは強者が一歩下がって聞かねばならない。

2000.02.05:

外国語アラカルト・16(最終回)
学生時代はお情けでなんとか落第を免れたという英語の成績、それが入社以来二十ン年間横文字を中心とした仕事をしてきた故に、何時の間にか抵抗感が消えていたというところまで来た。一体何がそうさせたか。私の場合は度胸であろう。入社して最初の外人との会話で「お前の英語はまったくわからん」とまで言われたのを皮切りに、少しづつ慣れていった。というよりも、そうしないと仕事にならない職場であったことが根底にあった。しかしもし私が町角で外人に道を尋ねられても逃げるような性格だったら上司は私を他の職場へ異動させただろう。
さて、一般的に言って最良の外国語の訓練は何かと尋ねられたら、私はこう答える。「半年か一年間、日本人が一人もいないところで暮らすこと」。つまりそこの土地の言葉を覚えない限り飢え死にするしかないという環境であれば、人間は必死になるだろうというと考えるわけである。
以前日本の自動車会社がこぞってアメリカに現地法人を作った時、日本の技術者が多数派遣された。そしていきなり異国に連れて行かれた彼らの妻のことをTVでやっていたのだが、赴任した当初はドラッグストアでしどろもどろのある主婦が、半年後には店員と「ハーイ、コンニチワ。今日もいい天気ね!」とやっている姿を映していた。まさに「必要は発明の母」ならぬ「必要は言葉の母」であるということを証明するものであった。

これでこのシリーズは一旦終了する。後は散発的に紹介するかもしれないが、私が持っている基本的ネタはすべて語った。しかし、外国語の奥はまだまだ深い。ひとりの個人が経験し、学習すべきことは無限にある。

2000.02.04:

来年度、すなわち4月以降の操業カレンダーが発表された。それを見てびっくりした。何と年度始めの数日を休業にし、それを年度後半の土曜日に振り替えるというのである。現場は前半が暇なためにそうしたというが、大変な問題が今になって解った。全員が休むと決算処理が出来なくなるのである。
工場は休みでも本社や他の工場は出勤している。したがって例年通り年度始めに3月末と決算データを作るスケジュールはすでに決定しており、工場一つだけが休みになっても待ってくれない。ということは決算に絡む仕事をしている事務系の人間は休日出勤せざるを得ないという、実に馬鹿げた話になってしまったのである。このカレンダーは会社幹部と労組の話し合いで決まったというからさらに驚いた。企業として一番大切な「決算」のことを忘れるなど、狂っているとしか思えない。
現在経理と電算を中心に出勤させるメンバーの人選をしているようだが、私も関係しているだけに出勤せざるをえまい。それにしても無理して作ったカレンダーというものがどういう影響を及ぼすものかということを理解しないと、とんでもないことが起こるという例を見事に作ってしまった。
似た話を一度聞いたことがある。それはトヨタの話だったと記憶しているが、やはり自動車の不況で操業調整をやらんがためにある年のカレンダーをいじくった。ところが出勤日の一つが町の祭りと重なったために大騒ぎになったという。結果はどうなったか記憶にないが、不規則なカレンダーは地域住民まで巻き込むことも有り得るということだ。今回の件も、まずは休日出勤組の通勤の足と昼飯をどうするかが当面の問題になるだろう。他にもまだ何かありそうだ。

2000.02.03:

一昨日のトラブル、やや深刻な原因である。まず、注文までのプロセスで上司の決裁用書類が二度作成されたことが発端だった。一度目は正常に流れ、本人によって一旦は正しい注文書が発行された。その後2ヶ月経って記憶が曖昧なまま二度目が作成された。ここまではよくある錯誤で、チェックがかかれば防げる問題である。ところがこのチェックが本人自身によってまず無視され、なおかつコンピュータ側の警告(エラーではない)も無視して発注先を変えるという強硬手段に出たのである。
もうすこし細かく言うと、発注先を変更する場合はコンピュータの通常の変更メニューではできない。当然ながら新規発注とは違い、発注先コードには既に別の番号が入力されているので、書き換えようとすると警告が出るし、またその時点で何故食い違いが発生したか書類を調べて原因を追求することができた。普通の人間ならそうしたであろうし、そうすべきだった。ところが彼はそうせずに、重大なデータを書き換える時に使う特別の変更メニューへ入って強行突破をしたのである。言わば鉄道のATSが赤信号の警告を出しているのに、解除ボタンを押して無理矢理突っ込んだのと同じ行為をしたのである。
この点を彼に聞いたところ、まったくチェックする意志も強行突破をしたという自覚もなかったとの発言であった。私は愕然とした。これではシステム側でどんなブロックをしようと意味をなさない。
それと、彼は上司の判を貰った後、それを金科玉条にしてあらゆる疑問を押し殺し、ひたすら猛進する性格に見えた。というのも似たようなトラブルを過去に起こしていたからである。こういう人間は私にとって初めて見るタイプである。「思い込んだらひとつの道を」というのは漫画の世界では楽しいキャラクターではあっても、現実の世界では恐ろしい事故を起こす可能性を持っているようにしか見えない。事実、この話で相談を受けたときに、私は背筋に冷たいものが流れるような気がした。
彼がどのようにしてこのような性格になったかは知らない。ちなみに、彼は入社してまだ日も浅いということではない。まだ10年にはならないが、何年かおきに職場を渡り歩いている人間である。

2000.02.02:

Y2K問題に絡んで陸蒸気組が妙なことを言い出した。「2月29日はシステムを止める」と。
おいおい、何を考えとるんじゃ!
情シスとしてはホストの日付関数に問題がない限り(一応シミュレーションはしてある)動くとの見解であるのに、何を血迷ったのだろう。彼らは時々こんな下らない猜疑心を持ち出す。
彼らは例えば日次データは翌日に手動でコンバートしている(新幹線組は夜間の自動処理)。きっかけは一度コンバートのときにデータが狂ったことがあり、それ以来毎日全データをチェックしたうえでコンバートをかけることにしたという。ちゃんと原因を追求すればどうってことないはずだが、こういうことには非常にこだわる。書類も取消線と訂正印を嫌うくらいだ。
これに対して新幹線組は強行突破を図るべく、情シスと協議中である。

2000.02.01:

2月に入った。気になっていた1月のデータはとりあえず無事だったようで、私の関係する限りの範囲では問題は起こらなかった。
しかしである。Y2Kとはまったく関係のない重大問題を一人の若者が起こしてしまった。何と品物を発注する相手先の会社コードを別の会社ものに勝手に書き換えてしまったのである。おまけに支払いデータまで流れてしまったので大騒ぎになった。早速両社を呼び、上司がミスを詫びると共に善処を約束した。
ミスの原因はこれから詳細に究明することになるが、本人はどうやら会社コードが変わることについての重大性をまったく認識していなかった模様である。キーボードで簡単に入力できることも根底にあるようで、コンピュータ側の対策を検討せねばなるまい。冷や汗の一日であった。