事故詳細

(事故No,20060929a)

  2006年9月29日午後4時57分、ブラジル・マナウス発ブラジリア経由リオデジャネイロ行きGOL航空1907便ボーイング737-8EH(PR-GTD)が、高度約37000ftを巡航中に同国パラ州南部の密林地帯上空で小型ジェット機エンブラエルLegacy 600(N600XL)と空中で接触し、パラ州との州境付近の同国マトグロソ州ペイショトジアゼベドの北方約30km地点の密林に墜落した。Legacy 600は主翼と尾翼を損傷したが、セラ・ド・カチンボの空軍基地への緊急着陸に成功した。
 この事故で、GOL航空機の乗員6名、乗客148名、計154名全員が死亡した。本件は、ブラジル史上最悪の航空機事故となった。なお、Legacy 600の乗員乗客は全員無事であった。
 GOL航空機は午後3時35分にマナウス・Eduardo Gomes国際空港を離陸し、午後6時12分にはブラジリアに到着する予定であった。GOL航空機はカチンボの南方約205kmの地点でレーダーアウトしたため周辺のアマゾン川流域の密林地帯をブラジル空軍が捜索し、翌30日朝、密林の中に残骸を発見した。現場は陸路での接近が難しい地域で、ヘリコプターが救助隊員を順次ロープで降下させ、ヘリコプターが発着できるように樹木の伐採作業から始めなければならないなど捜索・救助活動は難航した。密林の木々の損傷状況や残骸が狭い地域に集中して落下していることから、機体はほぼ垂直に落下したと見られている。なお衝突現場周辺で旅客機が低空飛行していたとの目撃情報もある。
 事故当時現場周辺は雲が垂れ込めて断続的に激しい降雨があった。空中衝突が発生した空域はブラジル軍が管制を行なっている空域であった。
 エンブラエルLegacy 600は、サンパウロ近郊のSao Jose dos Campos空港を午後2時51分に離陸し、マナウスを経由しアメリカの企業に納入される途中の新造機であり、接触当時の状況について同機のパイロットは、どこからともなく現れた大きな影が機体をかすめ翼を損傷したと述べた。Legacy 600の左主翼ウイングチップがGOL航空機の左主翼リーディングエッジに接触し、GOL航空機の左主翼桁に損傷を与えたために、GOL航空機はコントロールを喪失して墜落したものと見られる。
 2機の航空機には共にTCASが装備されており、事故当初から何故接触したのかとの疑問の声が航空関係者から出ていた。これまでの事故調査で、Legacy 600のトランスポンダーが事故当時何らかの理由で作動していなかったことが明らかになっている。
 なお、本件報道に際してブラジルCBNラジオがヤマハ関連会社の社員少なくとも20名が搭乗していたと報じたため、ヤマハ本社が確認に追われたが、後に誤報と判明した。
 GOL航空は2001年1月に創業した新興航空会社で、多数のボーイング737を用いてブラジル国内線及びアルゼンチン・ボリビア・パラグアイ・ウルグアイなどの近隣諸国とブラジルを結ぶ国際線を運航しており、欧米の格安航空会社をモデルに機内食や飲み物のサービスを簡略化するなどして業績を伸ばし、国内シェア2位の航空会社に急成長した。現在1日約500便を運航している。同社にとって本件が初の航空死亡事故となった。
 GOL航空機は2006年9月12日にボーイング社から納入を受けたばかりで僅か234時間しか飛行していない新造機であった。


(C)2006 外山智士
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