事故詳細

(事故No,20060503a)

  2006年5月3日午前2時13分頃、アルメニア共和国・エレバン発ロシア共和国・ソチ行きアルマビア967便エアバス320-211(EK-32009)が、着陸進入中にソチ・アドラー空港の南西の沖合約6kmの黒海に墜落した。
 この事故で乗員8名、乗客105名、計113名全員が死亡した。
 乗客の国籍は、アルメニア国籍77名、ロシア国籍26名、ウクライナ国籍1名、グルジア国籍1名であり、乗員8名は全員アルメニア国籍であった。
 事故機は午前0時47分にエレバンを出発し、ソチの管制官とは午前1時10分に交信を開始した。運航乗務員は現在の気象状況について進入管制官とディスカッションした後、午前1時26分、ソチの天候が最低気象条件を満たしてないことからエレバンに引き返すことを決めた。午前1時30分、運航乗務員は最新の気象情報を管制官に求め、視程3600m、雲底高度170mとの回答を得た。この情報を聞いて機長は、やはりソチへの着陸進入を行うことを決め、高度3600mへの降下の許可を得た。午前2時に高度1800mへの降下の指示が出された。その時、アドラー空港の気象状況は、ほぼ同空港の最低気象条件に等しかった。アドラー空港管制塔は、事故機に高度600mへの降下を許可した。事故機はグライドスロープを捕捉し、午前2時10分にギアダウンした。運航乗務員は着陸の準備が完了したことを管制塔に報告し着陸許可を得た。この時、管制官から気象状況は視程4000m、雲底高度190mと報告された。この直後、気象状況は急速に悪化し、30秒後に管制官は、雲底高度が100mになったことを報告した。管制官は、運航乗務員に着陸進入の中止と、上昇しながら右旋回し高度600mまで上昇するように指示した。事故機はその時高度300mを飛行していたが、着陸復行し高度450mへ上昇しながら旋回しようとした。上昇しようとするのと同時に対地速度が急減し、事故機は降下に入り、海上に墜落した。
 収容された遺体はいずれも救命胴衣を着用していないうえ、損傷が激しいものもあり、事前に準備された不時着水ではなかったこと、おそらくは墜落から水没まで時間がなく、墜落の衝撃も激しかったことを示していた。身元確認が困難な遺体にはDNA鑑定も施行された。
 事故当時現場付近は、激しい降雨と低視程の悪天候で、目撃者等によると、事故機は60度近い急角度で海面に墜落した。残骸は広範囲に散乱したが、主要な部分は水深約700m(ブラックボックスの発信機の電波を解析した結果では水深約680m)の海底に沈んだ。捜索・収容作業は約25隻の規模で行われたが、悪天候に阻まれて難航した。ロシア非常事態省は、テロの形跡はないとしてその可能性を否定した。
 ロシア・アルメニア両国は、5月5日を服喪の日とし反旗を掲げた他、娯楽イベントが中止され、ロシアにおいてはテレビの娯楽番組も放送が控えられた。
 アルマビアは、アルメニア最大手の航空会社である。
 ソチは、グルジアとの国境付近にある黒海東部沿岸の有名なリゾート地である。
 事故機は1995年に製造された。定期点検は事故の前月に行われていた。


(C)2006 外山智士
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