事故詳細

(事故No,20050806a)

 2005年8月6日午後3時40分頃、イタリア・バーリ発チュニジア・ジェルバ島行きチュニインター1153便ATR-72-202(TS-LBB)が、イタリア・シチリア島パレルモ空港に緊急着陸のための着陸進入中に空港から約26.3km北東、海岸線から約13kmの地中海上に墜落した。
 この事故で、乗員4名、乗客35名、計39名のうち乗員2名、乗客14名、計16名が死亡した。生存者の大半は重傷を負っていた。乗客は全員イタリア国籍で、大半は若者であった。乗客は観光地ジェルバ島に向かう途中であった。乗員は全員チュニジア国籍であった。
 事故機は巡航中にエンジン1基が停止し、午後3時24分、パレルモ空港に緊急着陸を求め、着陸進入中であったが、数分後にもう1基も停止したため、パレルモ到着が不可能となり、午後3時40分ごろ、空港手前約30kmの海上で不時着水を試みた。救助された乗客の一部は自力で機体から脱出し、海上に浮上した主翼の上などに避難して救助を待ったが、自力で脱出できずに救助隊に機体の中から救出された者もいた。また、救助された乗客の一部には救命胴衣を着けていない者もいた。生存者の証言によると、乗客が救命胴衣装着の指示を受けたのは、エンジンが2基とも停止した後で、不時着水までに装着が間に合わなかった者も多かった。不時着水と同時に機体は、前部、主翼付近、後部の大きく3つに分断され、すぐに機内は海水で乗客の首の辺りまで満たされた。報道によると、死者のうち少なくとも13名は墜落時の衝撃によって死亡しており、溺死ではなかったことが明らかにされている。墜落後、現場に急行したイタリア沿岸警備隊警備艇が生存者の捜索救助活動を行った。
 エンジンが2基とも停止した原因は、事故直後から、燃料切れまたは燃料に不純物が混入していたことによるものとみられていた。事故機は、バーリで少量の燃料を補充していたため、事故翌日にバーリ空港の燃料貯蔵施設が点検されたが、燃料の質は正常であった。2005年9月7日、イタリアの事故調査委員会であるANSVは、事故機がATR-42用の燃料計(FQI:Fuel Quantity Indicator)をコックピットに搭載していたことを明らかにした。別の機種のFQIを装備することによって、正しい燃料の量の計測が出来ず燃料不足に陥ったものと見られる。同日付でANSVは、欧州航空安全庁(EASA:European Aviation Safety Agency)に対し、ATR-72とATR-42において燃料計設置が誤って行われていないか点検する必要がある旨勧告した。
 事故直後、国営イタリア放送協会が乗客全員が救助される見込みと報じるなど混乱した。また、テロの可能性も懸念されたため、イタリア政府当局が、テロの可能性を否定するコメントを出した。
 チュニインターは、チュニス・エアの子会社で、チュニジア国内線を主に運航する航空会社である。
 ATR-72は、フランス製双発ターボフロップ機で最大座席数72席の旅客機である。
 事故機は1991年に製造された。


(C)2005 外山智士
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