事故詳細

(事故No,20041121a)

 2004年11月21日午前8時21分頃、中国・内モンゴル自治区包頭発同国上海行き中国東方航空5210便ボンバルディアCRJ-200LR(B-3072)が、包頭空港を離陸直後、空港から約2km地点の包頭市内にある南海(Nanhai)公園の凍結した湖(水深2〜3m)に墜落した。
 この事故で乗員6名、乗客47名、計53名全員と、公園関係者1名の合計54名が死亡した。乗客の国籍は1名がインドネシア国籍であったほかは全て中国籍であった。
 事故機は離陸後僅か十数秒で墜落し炎上した。湖畔の家屋が機体の残骸に接触して損傷を受けたほか、公園のチケット売り場と正面玄関も損傷し、停泊中のヨット数艇が焼損した。目撃者によると事故機は低高度で飛行しながら不安定に揺れ始め、尾部から黒煙を吐いて大音響と共に爆発し、閃光を伴って巨大な火の玉のようになってばらばらになり炎上しながら落下したという。飛行中に発生した黒煙はマッシュルーム状に立ち上ったとの目撃証言もある。
 救助隊の第一陣は墜落の数分後には現場に到着したが、湖とその周辺は火の海のようであったと伝えられる。警察官や消防隊員ら数百名によって行われた捜索活動は、当初湖上一面に浮かぶ氷に阻まれて難航したが同日午後3時頃までに搭乗者全員の遺体を回収した。遺体の多くには焼けた跡があり、爆発が大きなものであった可能性を示した。また、現場周辺の樹木は黒く焼く焦げ、建物の窓ガラスは割れて吹き飛んだ。
 事故当時の包頭市は、気温は低かったが晴れていた。包頭市は北京の西方約560km、内モンゴル自治区の工業都市である。
 中国東方航空は、事故当日から事故原因が解明されるまで同社が保有している同型機6機の運航を停止すると発表した。11月23日には中国民用航空総局(中国民航総局)が、CRJシリーズ全ての当面の飛行停止、航空運輸業界に対する全面的な安全点検・検査などの指示を出した。CRJシリーズは、カナダのボンバルディア社が1990年代に開発したコミューター向けジェット旅客機で、中国では中国東方航空、中国南方航空、上海航空、中富航空がローカル線で使用している。
 本件の影響で上海−包頭線は事故後欠航が続き、欠航便のチケットは全て払い戻された。同路線は2005年1月1日から中国東方航空山西公司によってボーイング737を投入して運航が再開された。
 事故翌日の11月22日、事故調査当局は人為的な破壊を示す証拠は発見されていないことを明らかにし、テロの可能性を否定した。
 中国では、11月9日に中国民用航空総局(中国民航総局)が、中国国内の航空機の安全運航時間が500万時間を突破し、過去最高記録を更新した旨発表したばかりであった。
 事故機は、中国東方航空が同社の関連会社の中国東方航空雲南公司からリースを受けて運航しており、2002年に製造された。


(C)2005 外山智士
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