1991年5月26日、午後11時17分頃(墜落時刻については、文献によって31分とするもの33分とするものなどがある)、香港発バンコク経由ウィーン行きラウダ航空004便ボーイング767-3Z9ER型機(OE-LAV)が、バンコクのドンムアン国際空港を離陸約16分後、バンコクの北西約174Kmのタイ北西部のウエィン・バンノンのジャングル(海抜約600m地点)に墜落した。
この事故で乗員10名、乗客213名、計223名全員が死亡した。本件はボーイング767型機にとって、初就航以来約10年にして初の大惨事となった。
離陸して5分後に、システムの故障により着陸時のように自動的に逆噴射がかかるおそれがあることを知らせる警報がアナンシエターを通じて発せられたが、乗員は警報装置の誤作動を疑い、ボーイング767のチェックリストを確認したところ、対処は不要と記されていたために何ら対処をしなかった。結局、離陸15分後に警報どおり左翼第1エンジンが逆噴射し、操縦不能に陥ったまま高度10000ft以下で空中分解し墜落に至ったものである。なお、公式の事故調査報告書は逆推力装置バルブの電気系統のトラブルなどいくつかの推定原因を検討したが、原因を確定できなかった。報告書は、事故は乗員にとって予期せぬ事態であり不可避の結果であったとしている。
事故後ボーイング社は、既存の同社737、757、767型機の逆噴射装置を改修するとともに、新造機に搭載する油圧装置を改良した。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故」(増改訂版) | イカロス出版 | 1997年 | 224頁 |
マルコム・マクファーソン | 「墜落!の瞬間」 | 青山出版社 | 1999年 | 67頁〜71頁 |
加藤寛一郎 | 「墜落 第五巻 エンジン損傷」 | 講談社 | 2001年 | 165頁〜184頁 |