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事故詳細

(事故No,19890719a)

 1989年7月19日午後4時、アメリカ・コロラド州デンバー発イリノイ州シカゴ経由ペンシルバニア州フィラデルフィア行きユナイテッド航空232便DC-10-10(N1819U)が、アイオワ州上空37000フィートを飛行中に尾部の第2エンジンのファンディスクが脱落、油圧系統3系統を全て切断し油圧系統がダウンし、油圧による操縦が出来なくなった。パイロットは左右のエンジン推力のコントロールだけで同州スーシティー・ゲートウェイ空港に緊急着陸を試み、滑走路端に接地したが左にそれ、右翼端が地面に接触し滑走路を横滑りしたあとばらばらになりながら激しく横転した。
 この事故で運航乗務員3名、客室乗務員8名、乗客285名、計296名のうち、客室乗務員1名、乗客110名、計111名が死亡し、47名が重傷、125名が軽傷を負い、乗客13名は無事であった。
 第2エンジン故障の原因としては、第1段ファンディスクの製造ミスにより見えない亀裂が生じ、ジェネラル・エレクトリック社の2種4回の検査体制でも製造ミスを発見できなかったこと、また、ユナイテッド航空の分解整備においても、簡単な目視のみで済ましていたことなど、複数の要因が判明した。
 事故機に非番(デッドヘッド)で偶然乗り合わせたパイロットは、1985年8月12日の日航ジャンボ機墜落事故の発生を受けて、油圧系統が失われた機体の操縦方法について個人的に検討し、シミュレーター訓練の際に練習をしたことがあり、彼が着陸までスロットルを握ることになった。
 この事故での機長をはじめとする運航乗務員たちの勇姿は、事故後マスコミにより大きく取り上げられ、NTSBからも賞賛された。本件は、CRM(Crew Resource Management)の成功例として広く知られるようになり、CRMそのものの有効性を実証する事例として航空業界全般にとどまらず他の業界までCRMが普及してゆくきっかけを作った。ユナイテッド航空は1979年以降CRM研修の開発に先駆的に取り組んでいた。

◎関連文献(刊行年順)
著者名書 名出版社刊行年頁 数
デビット・ゲロー「航空事故」(増改訂版)イカロス出版1997年216頁〜218頁
マルコム・マクファーソン「墜落!の瞬間」青山出版社1999年321頁〜365頁
加藤寛一郎「墜落 第一巻 驚愕の真実」講談社2001年215頁〜264頁
桑野偕紀
前田荘六
塚原利夫
「そのとき機長は 生死の決断」講談社2002年180頁〜197頁
上記文献のうち現在も流通しているものについてはこちらで入手できます。
 


(C)1999-2002 外山智士
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