1988年7月3日午前10時54分頃、イラン・バンダルアバス発アラブ首長国連邦・ドバイ行きイラン航空655便エアバスA300B2-202(EP-IBU)が、ホルムズ海峡近くのペルシャ湾に墜落した。
この事故で乗員乗客計298名全員が死亡した。
事故機は、ホルムズ海峡に展開中のアメリカ海軍のイージス艦ビンセンズにイラン軍のF14ジェット戦闘機と誤認され撃墜されたことが分かり、外交問題に発展した。
ビンセンスの乗組員は、民間機か否かの識別にエアラインの時刻表を用いており、民間航空機の管制交信の傍受を怠ったために、定刻より遅れて出発していたイラン航空機を民間機だと判断できなかったことや、レーダー監視員がイラン航空機の上昇と降下を読み間違えたこと等のミスが重なり、敵機であると誤認したことが分かった。
事故当日はアメリカ独立記念日の前日であり、乗組員は敵の攻撃に特に気をつける必要から緊張状態にあったこと、本件事故の1ヶ月半前に友軍艦が友軍機に見せかけたイラクの戦闘機の攻撃を受けて多数の犠牲者を出していたことから、艦長が接近する航空機に対する先制攻撃の決断を急いでいたことなどミスの連鎖を生んだ心理的要因も明らかになっている。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故」(増改訂版) | イカロス出版 | 1997年 | 210頁〜212頁 |
デヴィッド・ビーティ | 「機長の真実」 | 2002年 | 366頁〜371頁 |