1988年6月26日午後2時50分頃、エールフランス296Q便エアバスA320がフランス・ミュールズ近郊のアプスハイム空港上空において低空低速でのデモンストレーション飛行中に空港から800m離れた森に墜落した。
この事故で、乗員乗客127名のうち乗客3名が死亡、98名が重軽傷を負った。
機長はエアバスA320独自の失速防止システムが働いていると信じて、高度、速度とも必要以上に下げて、観客にアピールしようとした。ところが、実際には高度100ft以下では失速防止システムは作動しないように設計されており、機長はそのことを失念していた。高度が100ftを割りこんだ時に副操縦士が機長に注意を促したが、機長は聞き入れなかった。機長は30ft以下(約9m)にまで高度を下げ、より高い迎角で、観客にアピールしようとした。滑走路端が迫り着陸復行に転じようとしたが、高度があまりに低すぎたため、アイドル状態だったエンジンが推力を出し始めるまでに森の立ち木に接触して墜落した。高い迎角は、機体の実際の高度を錯覚させる要因のひとつとなった。
事故機は航空ショーの一環として企画されたデモンストレーション飛行を行うため、ミュールズ飛行クラブにチャーターされていた。墜落の瞬間はこのデモンストレーション飛行の模様を取材中のテレビカメラに収められ全世界に配信された。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
遠藤 浩 | 「ハイテク機はなぜ落ちるか」 | 講談社(ブルーバックス) | 1998年 | 108頁〜115頁 |
マルコム・マクファーソン | 「墜落!の瞬間」 | 青山出版社 | 1999年 | 151頁〜159頁 |
加藤寛一郎 | 「墜落 第二巻 新システムの悪夢」 | 講談社 | 2001年 | 182頁〜184頁 |