1988年4月28日現地時間午後1時55分頃、アメリカ・ハワイ州ハワイ島ヒロ発同州オアフ島ホノルル行きアロハ航空243便ボーイング737-297(N73711) が、同州マウイ島付近の太平洋上高度24000ftを巡航中に機体上部がコックピットの後ろから主翼前縁付近までの18フィートにわたって吹き飛び、急減圧を起こしマウイ島カフルイ空港に緊急着陸した。
この事故で乗員5名、乗客90名、計95名のうち、通路に立っていた客室乗務員1名が急減圧の際に機外に吸い出されて死亡し、7名が重傷、57名が軽傷を負い、30名が無事であった。
機体外板のリベット孔沿いに広範囲に発生した金属疲労による亀裂(マルチプルサイト・クラック)が、1箇所の破断により瞬時に崩壊し、設計時の予測を大きく上回る巨大な穴を機体に開けることになった。このため機内は瞬時に減圧し、設計時に計算された制御された減圧は得られなかった。さらに機体上部を失ったことにより客室床に負荷がかかり床に歪みが生じたことにより、床下の左エンジンの燃料制御ケーブルが切断され、急減圧とほぼ同時に左エンジンが停止した。床の歪みによって生じたケーブルへの負荷は、ケーブルの設計上許容されるものであったが、ケーブルは腐食していた。
アロハ航空は飛行距離の短い路線が多く、保有する機体は他社に比べて、飛行時間に対して飛行サイクルが著しく多いことに加え、潮風の影響にさらされやすい風土もあり、金属疲労や腐食が予測を超えて進行したものとみられる。
事故機の乗客2名は搭乗の際に機体中央部客室ドア付近の外板の亀裂に気付いていたが、乗務員に伝えなかった。
事故機は1969年に製造された。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
メアリー・スキアヴォ | 「危ない飛行機が今日も飛んでいる(上)」 | 草思社 | 1999年 | 91頁 |
加藤寛一郎 | 「墜落 第三巻 機体異常」 | 講談社 | 2001年 | 18頁〜79頁 |
デイヴィッド・オーウェン | 「墜落事故」 | 原書房 | 2003年 | 71頁〜76頁 |