1986年8月31日午前11時52分、メキシコ・メキシコシティー発ティファナ経由アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス行きアエロメヒコ498便DC-9-32(XAJED)とパイパ・アーチャーPA-28-181(N4891F)が、カリフォルニア州ブブエナパーク上空約6560ftで空中衝突し、両機とも近くの街セリトス(CERRITOS)の住宅街と小学校校庭に墜落した。
この事故でアエロメヒコ航空機の乗員6名、乗客58名、計64名全員と、パイパー機の乗員1名、乗客2名、計3名全員、地上の15名の合計82名が死亡、地上の8名が軽傷を負った。
NTSBは、パイパー機が地上物標として選んだ高速道路を見誤ってロサンゼルス国際空港の管制空域に迷い込んだこと、ロサンゼルス国際空港ターミナル空域の管制手順が不適切であったこと、管制官がレーダースクリーン上のパイパー機の機影を見落としたこと、両機のパイロットの目視不充分などの要素が複合し事故が引き起こされたとした。
管制官がパイパー機に気付かなかった背景としては、パイパー機は有視界飛行中であることを示すスコーク1200を設定して飛行しており、レーダースコープをモニターしている管制官はパイパー機が管制空域の上限より上か下限より下を飛行しているものとの先入観を持った可能性と、管制に助けを求めてきた他機との交信に時間を取られるなどワークロードが急に増加した点が指摘されている。
また、両機の位置関係はコリジョンコースにあり、互いに相手機に気付くことは困難であったと推測されている。
パイパー機の天井部分とアエロメヒコ航空機の水平尾翼が衝突し、アエロメヒコ機は水平尾翼が分離し墜落に至った。
事故後FAAは、主要空港のターミナル空域の約55Km以内を飛行する航空機に対し、高度情報をレーダースクリーンに表示できる高性能なトランスポンダーの搭載を義務付けた。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故(増改訂版)」 | イカロス出版 | 1997年 | 203頁〜204頁 |
メアリー・スキアヴォ | 「危ない飛行機が今日も飛んでいる(上)」 | 草思社 | 1999年 | 180頁〜181頁 |
加藤寛一郎 | 「墜落 第七巻 衝突とニアミス」 | 講談社 | 2001年 | 18頁〜74頁 |
デイヴィッド・オーウェン | 「墜落事故」 | 原書房 | 2003年 | 158頁〜160頁 |