1983年9月1日午前3時39分頃、アメリカ・ニューヨーク発同国アラスカ州アンカレッジ経由韓国・ソウル行き大韓航空007便ボーイング747-230B(HL-7442)が、巡航中にソビエト連邦(当時、現ロシア共和国)サハリン南西部沖合のモネロン島の北の公海上(おおよそ北緯46度35分、東経141度20分)に墜落した。
この事故で乗員29名、乗客240名、計269名全員が死亡した。
航路を逸脱してソ連領空内に入り込んだ事故機をアメリカのスパイ機と判断したソ連軍のスホーイSu-15戦闘機が午前3時27分に熱探索誘導(赤外線追跡)ミサイルとレーダー誘導ミサイルで攻撃した。事故機は高度35000フィートで被弾後、急減圧を起こし、約12分間操縦不能になりながら飛行を続けていた。
ICAOの最終報告書によると事故機のパイロットが、アンカレッジ空港離陸後に自動操縦装置をヘディングモードにセットしたままINSモードに戻し忘れたか戻し遅れたために、ヘディングモードが継続され、航路を約500Kmも西側に逸脱し、ソ連領空を侵犯することになった。ソ連軍は、直前にサハリン近海を飛行していた米軍の偵察機と事故機を誤認し、充分な確認を行うことなく、また、国際緊急周波数での警告や曳光弾の発射といった国際的に取り決められた迎撃手順を踏まずに攻撃した。
本件事故は、「大韓航空機撃墜事件」として、大きな国際問題となった。ソ連は、ボイスレコーダーやフライトレコーダをはじめ主要な残骸や遺体に至るまで、その殆どを回収し隠匿した。そのため真相が明らかになったのは、ソ連が崩壊した後、事故から10年以上経ってからのことであった。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故」(増改訂版) | イカロス出版 | 1997年 | 182頁〜185頁 |
マルコム・マクファーソン | 「墜落!の瞬間」 | 青山出版社 | 1999年 | 79頁〜83頁 |
デヴィッド・ビーティ | 「機長の真実」 | 講談社 | 2002年 | 201頁〜214頁 |
小山 巌 | 「ボイスレコーダー 撃墜の証言 ―大韓航空機事件15年目の真実―」 | 講談社+α文庫 | 2002年 | |
デイヴィッド・オーウェン | 「墜落事故」 | 原書房 | 2003年 | 179頁〜183頁 |