事故詳細

(事故No,19830602a)

 1983年6月2日 午後7時20分頃、アメリカ・テキサス州ダラス発カナダ・オンタリオ州トロント経由モントリオール行きエアカナダ797便DC-9-32(C-FTLU)が、機内火災のためケンタッキー州コビントン(COVINGTON)のシンシナティー空港に緊急着陸したが、停止後に激しく炎上した。
 この事故で乗員5名、乗客41名、計46名のうち乗客23名が死亡した。その他3名が重傷、13名軽傷、7名は怪我もなく無事であった。
 事故機は午後7時3分頃、高度33000フィートを飛行中に客室乗務員がラバトリーの火災を発見し、運航乗務員は、ATCに緊急事態を宣言するとともに緊急降下し、シンシナティー国際空港に向かった。事故機は午後7時20分頃同空港のRWY 27Lに着陸して停止し、約60〜90秒後に非常口が開かれたが、機内は炎に包まれ、23名の乗客が逃げ遅れ焼死した。
 事故調査の結果、最終的に火元は特定できなかったが、事故の経緯が明らかになった。煙が発生する約11分前の午後6時51分頃に後部ラバトリーのサーキットブレーカーが作動し、約8分前の午後6時54分頃に機長がサーキットブレーカーを元に戻し、それとほぼ時を同じくして後部客室で異臭が漂い出した。午後7時3分頃、後部ラバトリーに煙が充満し出したのを発見した客室乗務員が、二酸化炭素ボトルを使用し初期消火にあたったが不調に終わった。その際、客室乗務員はラバトリーの壁の継ぎ目から黒煙が噴き出すのを目撃した。連絡を受けた副操縦士が、現場を確認するために客室に向かった際には、後部ラバトリー付近はゴーグルをコックピットに取りに戻らなければならない程の状態になっており、副操縦士は、現場確認後コックピットに戻った午後7時7分頃、緊急降下の開始を機長に進言した。事故機はメーデーを発信し、非常事態を宣言するとともに緊急降下を開始し、午後7時10分には緊急着陸のためにシンシナティー空港と交信し始めた。降下の間に煙は客室全体を覆うようになり、着陸後、機内に消防隊が踏み込んだ時には、消し止めることが出来ない程に燃えており、機体は全焼した。
 NTSBは、運航乗務員の緊急降下の決断が遅れたこと、機長が火災の状況を過小評価し最寄のルイスビル(LOUISVILLE)よりも3〜5分も余計にかかるシンシナティー空港に着陸したことが被害を大きくしたこと、ぬれたタオルや布を通して呼吸をすることで多くの乗客が救われていることを指摘している。
 事故機は1968年に製造された。


(C)2002 外山智士
ホームページに戻る 民間航空データベーストップページに戻る 世界の航空事故総覧トップページに戻る 全件表示に戻る 年代別検索に戻る 航空会社別検索に戻る 機種別検索に戻る 事故発生国別検索に戻る