事故詳細

(事故No,19800819a)

 1980年8月19日午後10時頃、パキスタン・カラチ発サウジアラビア・リヤド経由同国ジッダ行きサウジアラビア航空163便ロッキードL1011トライスターが機内火災のためリヤド空港に緊急着陸した。
 この事故により乗員14名、乗客287名、計301名全員が死亡した。
 事故機はリヤド空港を離陸約7分後に貨物室内で煙を感知していたが、パイロットが今後の対応について協議するのに4分間も費やしたうえ、着陸に際しても、最短距離で機体を停止させて乗客をいち早く緊急脱出させるべきところ、通常の着陸をしたうえに誘導路までタキシングしてから停止させたために2分以上も機体の停止が遅れてしまった。そのうえ、機体停止後も3分以上エンジンを稼動させ続けたことから救助隊の旅客機への接近が妨げられ、客室乗務員も緊急脱出を行う機会を得ることが出来なかった。
 また、救助隊も知識が不足しており、事故機のドアを開けることに成功したのは、エンジン停止から23分後のことであった。
 機長は事故機を緊急着陸させるのに集中しており、もはやその他の事項に対する正常な判断が出来なくなっていた。着陸30秒前に機長は客室乗務員に着陸後も緊急脱出はしないように指示を出すなど混乱していた。副操縦士は経験が浅く機長をサポートすることが出来ず、航空機関士もまた機長と同じく緊急事態に動揺して判断力が低下し混乱しており、誰一人として適切な行動をとることが出来なかった。
 乗客は全員が機体前方部で折り重なるようにして死亡しており、主な死因は煙による有毒ガス中毒と全身火傷であった。
 本件事故を教訓にロッキード社ではトライスターの貨物室の天井板を耐熱性の強い強化ガラス性のものに変更するなどの改修を加えた。

◎関連文献(刊行年順)
著者名書 名出版社刊行年頁 数
デイビッド・ゲロー「航空事故」(増改訂版)イカロス出版1994年170頁〜172頁
デヴィッド・ビーティ「機長の真実 ―The Naked Pilot―」講談社2002年142頁〜151頁
上記文献のうち現在も流通しているものについてはこちらで入手できます。
 


(C)2002 外山智士
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