事故詳細

(事故No,19781228a)

 1978年12月28日午後6時15分、アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク発同国コロラド州デンバー経由同国オレゴン州ポートランド行きユナイテッド航空173便DC-8-61(N8082U)が、ポートランド空港に着陸進入中に空港の手前11Kmの森に墜落した。
 この事故で乗員8名、乗客181名、計189名のうち、乗員2名、乗客8名、計10名が死亡した。
 事故機は墜落の約1時間前にポートランド上空に到達していたが、午後5時9分にギアダウンを行った際に強い振動と右への片揺れが生じ、ランディングギアの表示灯が左右の主脚については点灯しなかったことから、機長は最悪の事態を考え胴体着陸の準備を行っていた。副操縦士と航空機関士は、残燃料が少ないことを機長に進言したが、機長は胴体着陸の準備のこと以外考えられない状態に陥っており、燃料は燃料計の示す数値よりも実際には数千ポンドは余分にあると強弁した。航空機関士は、この機長の弁を信じ込み。副操縦士は全く信じていなかったが、残燃料がないことについてそれ以上主張しようとはしなかった。結局、最終的には燃料が尽きて墜落した。事故調査の結果、右主脚の油圧アクチュエーター・シリンダーのピストン・ロッドを支えるボルトに腐食が生じ、ギアダウンの際に抜け落ち、右主脚が下げ位置まで勢いよく落下したことが分かった。その際ランディングギアの表示灯を点灯させるセンサーが破損し、表示灯が点灯しなくなったが、脚は正常に降りていたことが判明した。
 NTSBは、本件事故調査報告書において、運航乗務員に対して自己主張訓練を、機長に対して参加型運営を訓練することを柱とする「Flightdeck Resource Management」を課すべきであることなどをFAAに勧告した。ユナイテッド航空はこの勧告に基づいて独自の教育プログラムを開発した。この教育プログラムは後にCRM(Cockpit Resource Management:コックピット・リソース・マネジメント後に転じてCrew Resource Management:クルー・リソース・マネジメント)に発展し、広く航空業界全体に普及し、他業種にまで波及するに至った。
 事故機は1968年に製造された。

◎関連文献(刊行年順)
著者名書 名出版社刊行年頁 数
デヴィッド・ビーティ「機長の真実」講談社2002年89頁〜100頁
デイヴィッド・オーウェン「墜落事故」原書房2003年173頁〜178頁
上記文献のうち現在も流通しているものについてはこちらで入手できます。
 


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