1976年9月10日午前11時15分、イギリス・ロンドン発トルコ・イスタンブール行き英国航空476便トライデント3B(G-AWZT)とユーゴスラビア(当時)・スプリト発西ドイツ(当時)・コローニュ行きイネックス・アドリア航空(本社:ユーゴスラビア〔当時〕)550便DC-9-32(YU-AJR)が、ユーゴスラビアのザグレブ(現クロアチアのザグレブ)の北東約24Kmの上空33000ftで空中衝突し、両機とも近くのハーバァッカ、ガジェに墜落した。
この事故で英国航空機の乗員9名、乗客54名、計63名全員とイネックス・アドリア航空機の乗員5名、乗客108名、計113名全員、地上の住民1名の総計177名が死亡した。
衝突の瞬間、イネックス・アドリア航空機の左主翼端が、英国航空機のコックピットを直撃した。イネックス・アドリア航空機は、衝突により左主翼・左エンジンなどを失い、空中分解しながら墜落した。英国航空機は運航乗務員全員が衝突の衝撃で即死し、垂直安定板、方向舵も喪失し、墜落した。
高度別に区切られた各管制区の管制官の間で、担当便の移管が円滑に行なわれず、上昇中のイネックス・アドリア航空機への管制が宙に浮いてしまったことが事故を招いた最大の要因であった。なお管制ミスの誘因としては、管制センター自体が繁忙期にある中、とりわけミスを犯した管制官は通常2名で1管制区の管制を行なうところ、アシスタントが急病のため急遽1名で管制に当たっており、冷静な判断が行なえるだけの余裕がなかったことなども指摘された。この事故の顛末は「空中大衝突」とのタイトルで映画化された。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故」(増改訂版) | イカロス出版 | 1997年 | 138頁〜140頁 |
デイヴィッド・オーウェン | 「墜落事故」 | 原書房 | 2003年 | 197頁〜206頁 |