1974年12月1日午前11時9分、アメリカ・インディアナ州インディアナポリス発同国オハイオ州コロンバス経由ワシントンDC行きトランスワールド航空514便ボーイング727-231(N54328)が、ワシントンのダレス空港に着陸進入中、空港から42.5Km手前のバージニア州アッパービル近郊のウェザー山中(標高510m地点)に墜落した。
この事故で乗員7名、乗客85名、計92名全員が死亡した。
事故原因は管制官からの進入許可「cleared for the approach」をパイロットが最終進入開始時の高度である1800ftまでの降下を許可されたものと理解して、最低安全高度3400ftを割りこんで高度を下げ過ぎたためであった。「cleared for the approach」は管制官側は最低安全高度3400ftまでの降下であると考えていたが、事故機のパイロットのみならず、この空港を利用するパイロット達は、この指示が為された時は高度について格別の指示がない限り高度1800ftまでの降下を許可されているものと捉えている場合があることが分かった。
本件事故の2ヶ月前にはユナイテッド航空機が同じ原因によるインシデントを起こしていたが、ユナイテッド航空社内で注意喚起されるにとどまり、他社の知るところとはならなかった。
本件事故を教訓に航空安全報告制度(ASRP)が設立され、インシデントやトラブルの事例(いわゆる「ヒヤリ」、「ハット」)についてNASAを介することにより会社の枠を超えて情報を共有し、事故の未然防止に役立てようとする試みが始まった。
また、本件事故を契機として、アメリカでは旅客機にGPWSの登載が義務付けられ、以後全世界に拡大していった。GPWSの登載義務付けにより、高度の下げ過ぎや、コースの逸脱などで山岳地帯に墜落する事故は激減した。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故」(増改訂版) | イカロス出版 | 1997年 | 132頁〜134頁 |
宮城雅子 | 「大事故の予兆をさぐる」 | 講談社(ブルーバックス) | 1998年 | 291頁〜292頁 |
山本善明 | 「日本航空事故処理担当」 | 講談社+α新書 | 2001年 | 210頁〜212頁 |