事故詳細

(事故No,19701002a)

 1970年10月2日午後1時、アメリカ・カンザス州ウィチタ発同国コロラド州デンヴァー経由同国ユタ州ローガン行きGolden Eagle Aviation108便マーチン4-0-4(N464M)が、巡航中にコロラド州Silver Plumeの西約17kmの地点に墜落した。
 この事故で乗員3名、乗客37名、計40名のうち、乗員2名、乗客30名、計32名が死亡した。
 事故機は、ウィチタ州立大学のフットボールチームとスタッフをユタ州ローガンまで運ぶためにJack Richards Aircraft CompanyがGolden Eagle Aviationからチャーターした2機のマーチン4-0-4のうちの1機であった。両機とも運航乗務員はGolden Eagle Aviationの乗務員であり、事故機の副操縦士はGolden Eagle Aviationの社長が勤めた。
 両機はオクラホマ州オクラホマシティーからフェリーされた後、カンザス州ウィチタで乗客を搭乗させ、給油のための経由地デンヴァーに向けて出発した。事故機がデンヴァーに向けて巡航中に副操縦士が客室を訪れた際に、数名の乗客がデンヴァーからローガンを飛行する際は、景色の良いルートを飛行してはどうかと助言をした。事故機がデンヴァーに到着したのは午前11時19分頃であり、両機は給油などのサービスを受けた。その間、事故機の副操縦士は景色の良いルートを検討するためにこのセクションの航空路図を数枚購入した。もう1機のマーチン4-0-4であるN470Mは、事前に予定していたフライトプラン通りにデンヴァーに向けて離陸した。
 事故機は副操縦士がパイロットフライング(PF:操縦を担当するパイロット)として左席に座り、午後0時29分、デンヴァー・ステープルトン国際空港を離陸した。事故機は谷に抜けるために僅かに南に旋回し航空路を外れた。事故機はUSハイウェー6のやや南をハイウェーに沿いにLoveland Passに向けてGeorgetownとSilver Plumeを通過して飛行しようとした。Georgetownの標高は8512ftでSilver Plumeは9118ftであった。谷底の標高はその後も上昇し続け、Loveland Passでは11990ftに達して上昇し続けた。Dry Gulch近くを飛行中に、副操縦士は、おそらく事故機が前方のロッキー山脈分水界を超えることが出来ないことに気付き、右旋回を開始した。旋回の後、機長が操縦を交代し左旋回を開始したが、機体が振動し始めた。機長は機首を下げたところ、31度の左バンク、4度の降下角でTrelease山(標高12447ft)の標高10800ft地点の木々に衝突した。木々は425ftにわたって切り倒された。
 事故調査報告書は、運航乗務員が前方の障害となる地形を回避するために、高度を上げることも、コースを引き返すこともしなかったことを推定原因に指摘した。また、事故に関する顕著な要因として、事故機が渓谷の上空に到達した際、5165ポンド過積載であったこと、デンバー−ローガン間の飛行ルート選定の際の飛行計画立案が事実上欠如していたこと、運航乗務員にマーチン4-0-4の性能や限界に対する知識が不足していたこと(同型機での飛行経験が機長には123時間、副操縦士には30時間しかなかった)などが指摘された。
 事故機は1952年に製造された。


(C)2006 外山智士
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