1970年7月3日午後7時5分頃、イギリス・マンチェスターからスペイン・バルセロナに向かっていたダン・エア・サービスのデハビランド・コメット4(G-APDN)が、バルセロナの北東約50Kmのモントセーニ山に墜落した。この事故で乗員7名、乗客105名、計112名全員が死亡した。
事故機は航法装置の故障により、航路を東に約25Km逸脱しており、このことにパイロットも管制官も気付かなかった。事故機の機影がレーダースクリーン上のどの輝点か分からなかった管制官は、事故機に左旋回し方位140度で飛行するように指示を出し、輝点の動きで見極めようとした。実際には事故機は遥か手前の空域を飛行中でレーダースクリーン上に映っていなかったが、管制官はレーダースクリーン内で予測される事故機の動きに近い動きをしている他機の機影を事故機と勘違いして高度2800ft(約853m)までの降下を承認した。雲の中を飛行していた事故機は知らずに高度を下げ、高度3840ft(1170m)で山に衝突した。高度2800ftは管制官の見ていた機影の位置では安全に飛行しうる高度であった。
本件事故後、バルセロナに二次監視レーダーが導入され、トランスポンダーを搭載した航空機については機影を取り違えることはなくなった。
◎関連文献(刊行年順) |
著者名 | 書 名 | 出版社 | 刊行年 | 頁 数 |
デビッド・ゲロー | 「航空事故」(増改訂版) | イカロス出版 | 1997年 | 93頁 |
デイヴィッド・オーウェン | 「墜落事故」 | 原書房 | 2003年 | 162頁〜165頁 |