事例詳細

(事例No,20051201ji)

  2005年12月1日午後4時48分頃、鹿児島発羽田行きスカイマークエアラインズ306便ボーイング767-300ER(JA767B)が、鹿児島空港を離陸直後、鹿児島県曽於市上空高度約1650mを上昇中に、コックピットの計器に第2エンジンの火災警報が表示された。同機は第2エンジンを停止して引き返し、午後5時4分頃、鹿児島空港に緊急着陸した。
 運航乗務員2名、客室乗務員9名、乗客79名、計90名は全員無事であった。
 着陸後の点検で、第2エンジン後部外側のアルミ製の外板の側面に上下約60cm、横約1.5mの穴が開いているのが発見され、穴の周辺が焼けて黒ずみ、すすで覆われているのが確認された。内部の点検では、低圧タービン最後方のブレードの欠落も確認された。また、滑走路上にはエンジン内部のブレードの破片(最大で約15cm大)が約600mに渡って多数散乱し、滑走路脇の芝生約9m四方が燃え、空港の消防隊が消しとめた。本件の影響で滑走路が午後5時22分から約58分間閉鎖され、計8便が欠航、30分以上の遅れが計16便に生じ、約1700名に影響が出た。さらに、機材繰りのつかなくなった同社便について12月2日、3日、4日で計24便が欠航となった。同機は調査終了後、代替エンジンに換装し、12月10日に路線に復帰した。
 同機は午後4時45分に鹿児島空港を離陸した。機長と整備士の証言によると、出発前点検及び離陸時に異常は認められなかった。乗客の証言では右主翼の方向から白煙が出ているのを見たという。後日、滑走路上の部品の散乱と滑走路脇の芝生の炎上は、同機の離陸時に起こったものであることが分かり、エンジンの破壊は離陸時に始まっていたこと、右主翼補助翼がエンジンの破片により7箇所の損傷を受けていたことなどが判明した。なお、同機の破片は飛行中に地上にも散乱したと見られるが、地上での被害はなかった。
 国土交通省は本件を重大インシデントに指定し、同型のエンジンを使用している航空会社に対し緊急点検を指示した。同社にとって創業以来初めての重大インシデントとなった。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が、当該エンジンを取り外して東京に運んで分解調査したところによると、2段目のタービンブレード74枚のうち1枚が根元から脱落し、2本が根元から折れ、その他の段のブレードは1段目を除いて6段目までの多くが欠損していたが根元は残っている状態であった。また、1段目と2段目のタービンの間にあるガイドベーン(整流板)も欠損し、高圧タービンも損傷を受けていた。根元から脱落したブレードか、整流板のいずれかがエンジン破壊の起点になったものと見られている。エンジンの内部破壊により、高圧・低圧タービンが破損し、空気の流れが悪くなり、高温・高圧のガスがたまって爆発的な異常燃焼を起こし外板を吹き飛ばしたと見られる。スカイマークエアラインズでは、エンジンの整備を定期的にドイツの会社に委託している。


(C)2006 外山智士
他項目へのリンク(クライアントサイドイメージマップ)