事例詳細

(事例No,20050617ji2)

 2005年6月17日午前10時55分頃、大阪(伊丹)発高知行き全日空1609便ボンバルディアDHC-8-402が、離陸直後、兵庫県尼崎市上空高度約1500mを上昇中に機内に煙が充満したため、機長は関西国際空港管制塔に事態を報告したうえで、大阪国際空港に引き返し、午前11時9分緊急着陸した。
 乗員4名、乗客60名、計64名は全員無事であったが、着陸後数名の乗客が立ちくらみや煙を吸い込んで気分不良を訴えた。
 離陸2分後に客室乗務員が客室後方で白煙が発生しているのに気付いた。白煙は客室全体に広がり、ダクトを通じてコックピットにも流入した。乗客によると殺虫剤を焚いたような臭いが漂った後、白煙が充満し、着陸直前には客室内には機内が大量の煙で真っ白に見えたという。機内に火災等の形跡は見当たらなかった。
 大阪国際空港では、同機の緊急着陸に際し、滑走路を2本とも閉鎖され、午前11時36分に再開された。滑走路脇には不測の事態に備えて伊丹市消防局の化学消防車や救急車計11台が待機した。同機は着陸後、滑走路脇の誘導路で停止し、乗客はバスでターミナルビルに向かった。
 同機は、定刻午前10時35分発のところ午前10時49分頃に大阪国際空港を離陸した。
 乗客のうち51名が午後の高知行きの便で再度出発し、6名が飛行を取りやめ、1名が松山に行き先を変更した。
 着陸後の調査の結果、煙はエアコンの吹き出し口から発生していたことがわかった。右主翼下の第2エンジン付近から漏れ出した気化したエンジンオイルが、エンジン付近にある空調系統の空気取り入れ口に流れ込んだことが分かった。
 全日空は、同日付で同社ウェブサイト上に本件発生にかかる謝罪を掲載した。
 本件の影響で折り返し便の高知発大阪(伊丹)行き1610便が欠航となった他、伊丹発の計16便に最大50分の遅れが出た。
 本件については、同年7月16日にエンジン(プラット&ホイットニー・カナダ社製PW150A)内部のコンプレッサーの台座部分の部品の一部(縦約2cm、横約4cm、厚さ約1mm)の欠損がエンジンオイル漏出の原因であったことが明らかにされた。欠損の原因は、圧縮空気の流れの振動による金属疲労であると見られる。国土交通省が、同型機を運航する各社にエンジン点検を指示したところ、全日空グループ所有の8機のうち3機、日本エアコミューター所有の5機のうち2機から同様の欠損が確認された。このため、7月15日発着便のうち全日空グループが計4便を、7月16日発着便のうち全日空グループが計5便を、日本エアコミューターが計9便を、7月17日発着便では、全日空グループが計2便を、日本エアコミューターが計8便をそれぞれ欠航にし、異常の見つかったエンジンを交換した。


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