2005年6月15日午前9時59分頃、新千歳発羽田行き日本航空インターナショナル1002便ボーイング767-300(JA8986)が、羽田空港に着陸した際、ノーズギアのタイヤ(直径93cm、幅35.5cm)が2本とも外れ、ホイルの一部が破断し、滑走路中心線灯1基が破損した。
運航乗務員3名、客室乗務員9名、乗客210名、計222名のうち、女性乗客2名と男性乗客1名の計3名が首の痛みや吐き気を訴え、うち女性乗客1名は、羽田空港の診療所で頸部に全治1週間の怪我と診断された。
外れたタイヤはゴムの部分のみが抜け落ちており、そのうち左タイヤはパンクした状態で停止した機体の尾翼下の滑走路上で、右タイヤは誘導路上で発見された。左タイヤは同年4月11日に交換され、交換後329回、右タイヤは同年5月27日に交換され、交換後109回着陸していた。なお、右タイヤは交換前にもタイヤとして使用され、これまでに表面のゴムを張り替えて再生させる作業を5回行っていた。日本航空グループでは通常400回着陸毎にタイヤを交換しており、これまで本件のような問題が発生したことはなかった。また、タイヤ圧の点検は毎日行うが、本件発生前日夜の検査でも異常は見られなかった。
左タイヤには、表面に長さ約40cm〜50cmのX字状の裂け目があり破裂したものと見られ、また、右タイヤには接地面を一周する円周状の傷があった。
同機は、午前8時28分に新千歳空港を離陸し、着陸まで運航は正常で、着陸後、逆噴射などの通常の減速方法で減速しながら約1000mを滑走した後、走行不能になりA滑走路上に車軸を直接に接地させた状態で停止した。
地上の目撃者によると、接地後右タイヤが先に脱落した。また、乗客の証言によると、着陸時に機体が跳ね上がるような強い衝撃を感じ、滑走路を滑走中にはガタガタと振動を伴ったという。運航乗務員の証言によると、着陸進入前に、降雨のため後輪からしっかり接地させることを打ち合わせたが、後輪接地時までは異常はなく、前輪が接地した際にガツンという複数回の衝撃と共に機体が大きく揺れ、ズルズルズルと停止したという。同機では、機長昇格訓練中の副操縦士が、機長席で習熟訓練のため操縦を担当していたが、急激な操作はしていないと証言している。
本件発生当時の羽田空港の天候は雨、視程は約7km、風速は7〜8mで、着陸に支障のある天候ではなかった。
乗客は午前10時58分に全員が降機し、バスでターミナルビルに向かった。ノーズギアが機能しないために、通常の牽引作業では機体を運び出せず、貨物を降ろし油圧機械で機体を持ち上げるなど、撤去作業が難航し、A滑走路は午後3時16分まで閉鎖され、後続便はC滑走路から離発着した。本件の影響で出発便206便、到着便171便、計377便に30分以上、最大で2時間30分の遅れが出て、計19便が欠航した。
本件発生直後に機体点検したところ、ノーズギアの支柱根元のケーブルを保護する部品に亀裂が発見され、胴体下部や左エンジンのブレードに破片が衝突したとみられる損傷が発見された。
同日、国土交通省は本件を重大インシデントに指定した。翌16日に事故調査委員会は、右タイヤに充填された窒素ガスの内圧が低下したため、着陸時の衝撃で弾け飛び、左タイヤが機体重量に耐え切れず破裂したとの見方を示した。
6月17日、国土交通大臣は、3月に事業改善命令を受け、4月に再発防止策を出したばかりの日本航空グループにおいて本件の発生を見たことを重く見て、同グループに対し、学者など外部有識者による委員会を設置するなど安全対策の助言受け入れ体制を社内に整備するよう異例の追加的な行政指導を行うことを決めた。
日本航空は15日付で自社ウェブサイトにお詫びを掲載した。また、本件の発生を受け、日本航空ではグループ各社の保有する222機全機についてタイヤとホイルの緊急点検を17日までに行った。