2005年6月5日午前11時16分頃、長崎発羽田行き全日空664便ボーイング767-300が、長崎空港を離陸約12分後、高度約3000mを飛行中に機長が機長席と副操縦士席の高度計の値に相違に気付いた。機長は、機長席の高度計の正誤を確認するために予備のコンピュータに切り替えたが、同機には予備のコンピュータが搭載されておらず、この切り替え操作により、機長の意図に反して副操縦士席の高度計を制御しているコンピュータと接続された。機長席の高度計の値と副操縦士席の高度計の値が一致したことから、機長席の高度計に異常があったと判断した機長は、高度計の値を信じ、運航を継続した。しかし実際には副操縦士席のコンピュータに故障があったために、誤った高度で飛行することとなった。同機は、11時24分頃、高度9800m付近を上昇中に高度計が降下中を表示したため、機長は予定していた11300mまでの上昇を断念し、管制官から8800mで飛行する許可を受けて、高度計の値よりも実際の高度が約1600m高い状態で11時26分から約40分間、静岡県上空までの約600kmにわたって水平飛行した。着陸進入時は電波高度計を使用するため、着陸には支障は無く、同機は午後0時32分羽田空港に着陸した。
乗員乗客計96名は全員無事であった。
同社は、ニアミスにつながりかねなかったとして、6月14日に本件の発生について国土交通省に報告した。
国土交通省は、管制の指示である8800mと異なった高度10400mを飛行する結果となり、また誤った高度計の値は管制や周囲の航空機にも送信されていたため、ニアミスにつながりかねない状況だったとして、同社を航空局長名で厳重注意処分とした。
高度計の故障については、副操縦士席の高度計を制御するコンピューターとピトー管をつなぐ連結部に隙間があったために、外気圧が正確に測定できず、高度が実際よりも低く表示されたことが分かった。
同社は機長と副操縦士を乗務停止とし、無線による機長からの問い合わせに適切に対処できなかったとして整備担当者3名を業務から外した。7月21日には、社長を役員報酬減給30%1ヶ月、副社長整備本部長と常務運航本部長を厳重注意、役員報酬減給20%1ヶ月、機長を譴責、副操縦士と整備担当者3名を厳重注意処分など計12名の社内処分を発表した。