事例詳細

(事例No,20050322ji3)

 2005年3月22日午前9時17分頃、大阪(伊丹)発福島行き日本航空インターナショナル2261便ボーイング767-300(JA8265)が、福島空港へ着陸時に機体後方下部のテール・スキッドを滑走路に接触させた。
 運航乗務員3名、客室乗務員6名、乗客124名、計133名は全員無事であった。
 同機はそのまま着陸して自力走行し、午前9時21分、定刻より6分遅れで駐機場に到着した。接触によりテール・スキッドに擦過痕が出来るなど損傷したほか、滑走路上の中央部の中心線灯1個のアルミ製の土台が割れてガラス片が飛び散るなどして破損した。
 本件の影響で福島空港は一時閉鎖されたが、滑走路上の破片を回収したうえで運航が再開された。また、折り返し便が欠航となったほか、名古屋行きの1便に約40分の遅れが出た。
本件発生当時、福島空港の天候は曇り、風は弱く、視界は良好であった。同機は副操縦士の操縦で進入していた。
 目撃者によると、ドーンという大きな音と共に着陸し、主脚の接地から前輪の接地までに時間を要していたという。
 テール・スキッドは、幅約25cm、長さは最も伸びた状態で機体から約45cm突き出したそり状の金属製部品で、離着陸時に機体後部が滑走路面に接触した際に伸縮して衝撃を吸収する緩衝装置である。内部には高圧ガスが充填されたシリンダーが内蔵されており、主脚を出すとそれに連動して最も伸びた状態になる。ボーイング767-300では、座席数を増やすためにボーイング767-200の胴体をストレッチした結果、離着陸時に滑走路に機体後方下部を接触させやすいために、万一、接触させた場合でも衝撃を緩和して機体が壊れるのを防ぐ目的でテール・スキッドを設けている。国土交通省航空局運航課は、本件について、あってはならないこととしながらも、テール・スキッドが、機体後方下部を構造上接触させやすいボーイング767-300型機を守る緩衝装置であったことから事故にはあたらないとした。
 本件の発生について、日本航空福島事務所から福島県福島空港事務所に連絡があったのは、発生から約20分経過した午前9時40分頃で、同事務所では連絡が早ければ、滑走路の修理などの対応が早くできたはずだと指摘した。日本航空によると駐機場到着後、約15〜20分で乗客が降機し、その後に機長らが機体を確認し報告したため時間を要したという。
 3月23日には、福島県知事が記者会見で、国と日本航空に原因究明と対策を求める意向を表明した。 日本航空は3月30日、福島県に対して中間報告を行った。中間報告では、予想以上に強い追い風と不安定な気流の中で機長が副操縦士から操縦を引き継ぐ時機を逸した可能性があること、副操縦士が気象状況に気をとられていたこと、機体の失速に副操縦士が気づかなかった可能性があること、着陸時の機首上げの際に水平尾翼のトリムを調整したため機首上げの角度が大きくなって機体後部が接触した可能性があることなどが盛り込まれていた。
 4月14日、日本航空は、福島県に最終報告を行ったが、中間報告の内容とほぼ同じで、機長が副操縦士から操縦を引き継ぐ時機を逸したこと、副操縦士が不規則な強い追い風などの気象状況に気を取られすぎたこと、着陸時に水平尾翼を調整したため機首上げの角度が大きくなりすぎたことなどを原因として挙げた。
 日本航空グループは、管制塔から許可を得ないまま離陸滑走を開始した件(2005年1月)や、非常脱出装置のモードを切替忘れたまま運航した件などの不安全事象が相次いだことから、3月17日に国土交通大臣から日本航空インターナショナルが業務改善命令を、日本航空と日本航空ジャパンが厳重注意の警告書を受け、CEOの交代人事を当初予定していた6月から4月に早めるなどの発表をしたばかりで、本件についてもマスコミに大きく取り上げられた。国土交通省は、3月24日付で航空・鉄道事業者、航空管制機関宛に、ヒューマンエラーが多発していることから緊急安全点検を行うように通達するとともに、3月28日以降日本航空を中心に航空22社の査察を行った。


(C)2005 外山智士
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