2005年3月16日、羽田発千歳行き日本航空インターナショナル1021便ボーイング767が、脱出用スライドを自動展開モードに設定し忘れたまま運航した。同機は午後1時40分頃新千歳空港に着陸した。
運航乗務員2名、客室乗務員6名、乗客250名、計258名は全員無事であった。
ボーイング767には4箇所にモード切替が必要な脱出用スライドが装着されているが、自動展開モードに設定しなければ、非常時に扉を開けても脱出用スライドが展開しない。
社内規定では、客室乗務員の責任者が、ドアモードの変更を機内放送で指示し、他3名の客室乗務員と分担してレバーを切り替え、相互確認し、責任者に合図をして確認することになっているが、同機では、午前11時59分羽田空港第1ターミナルビルを出発した際に、客室乗務員の責任者が、機内放送で指示するのを忘れ、他の3名の客室乗務員も確認しなかった。残りの2名の客室乗務員は、手荷物の確認のため、機内を巡回していてドアモード切り替えをしていないことに気がつかなかった。同機はそのまま午後0時8分に離陸した。同社は客室乗務員6名を同日以降乗務から外した。客室乗務員らは、ある者は誰かがやっていると思い込み、ある者は切り替えを失念していた。同便は、手荷物の収納に手間取り、警察の容疑者護送を行うなど通常より繁忙な状態にあったことも遠因となったと見られる。
日本航空インターナショナルでは、これまで、客室乗務員の責任者がドアを閉めスイッチ切り替えを確認した時点で、機長に出発準備完了を報告し、機体が誘導路を走行し始めるまでに着席し、機長に最終報告をすることになっていたが、同年2月に手順を変更して、ドアを閉めた時点で機長に出発準備完了を報告し、機体が動き始めた後でのドアモード切り替えも可能にし、切り替え後に2回目の報告を機長に行い、着席し最終報告を行うことにしたばかりであった。より早く出発させることを目的とした手順変更であったが、この変更が切り替え忘れの原因のひとつとなったものと見られている。
日本航空は3月17日に国土交通省に本件について報告した。国土交通省は、同年1月以降、管制指示違反などのトラブルが同社で相次いでいることを重く見て、3月17日付で航空法に基づき、日本航空インターナショナルに事業改善命令を出し、日本航空ジャパンと持ち株会社の日本航空に厳重注意を行った。日本航空インターナショナルは、日本航空時代の1999年2月にも、脱出用スライド部品にマニュアルと異なる潤滑油を使用したとの理由で事業改善命令を受けている。
事業改善命令を受けて、日本航空では、日本航空会長が代表権を返上し、日本航空インターナショナル社長の副社長降格などの4月以降の役員人事案を発表した。