2005年1月22日午後9時16分頃、新千歳発羽田行き日本航空ジャパン(日本航空インターナショナルの前身)1036便ボーイング777-200(JA8979)が、管制官の離陸許可のないまま離陸滑走を開始したため、管制官に停止を命じられ、緊急停止した。
乗員10名、乗客201名、計211名は全員無事であった。
同機は、管制官から滑走路に進入して待機するように指示されたが、滑走路に進入した後停止せずに、エンジンの出力を上げて離陸滑走を開始した。同空港の管制を行っている自衛隊の管制官がレーダーで監視中に同機が無断で離陸滑走を開始したことに気付き、滑走開始から約10秒後に緊急停止を指示したため、同機は急制動をかけ、離陸開始地点から約1000m先に停止した。同じ滑走路上には約2分前に着陸した全日空1717便エアバスA320(乗客115名)が着陸後速度を落としながら走行中であったが、同機が停止した地点から約1000m先におり、衝突は免れた。同機は約10分後に離陸をやり直した。
機長は、本件発生当日に提出した日航本社運航本部宛の報告書の中で、離陸準備作業に気を取られうっかりしていたとしてミスを認めたが、全日空機は滑走路から誘導路へ離脱したものと認識していた旨を述べたため、運航本部では、危険な状態ではなかったとして国土交通大臣には報告しないことを決定するとともに、自衛隊に謝罪を行った。1月23日には運航本部長が、管制指示に従わなかった点について再教育が必要であるとして機長と副操縦士を3〜7日間の乗務停止処分にすることを決定するとともに、翌24日にかけて機長から聞き取り調査を行った。
国土交通省は、2月23日に日本航空に対して本件の発生について報告がなかったことについて指摘を行った。航空法では、航空事故に準じるトラブルについて航空会社に国土交通大臣への報告義務を課しているが、結局、日本航空が本件を国土交通省に報告したのは、2月25日のことであった。報告を受けて同省では、管制官の判断で事故が避けられたので重大インシデントとまではいえないとしたが、航空法上の管制指示違反に該当するとして日本航空に厳重注意した。
日本航空では、国土交通省から指摘を受けた2月23日から再度機長と副操縦士を乗務停止とすると共に、3月1日午後には記者会見を行い、判断の甘さを認めて謝罪し、運航本部長の減給処分や、社長らの報酬一部返上(1ヶ月)などの処分を発表した。また、社内調査を機長からの聞き取り調査だけで済ませていた点については安全上の問題があったことを認め、今後グループ全社で安全対策の見直しを行うことを明らかにした。なお、日本航空では、3月1日付で利用者に対してもウェブサイト上で謝罪を行った。
事故当時空港は夜間で降雪があり視界が悪く、2本ある滑走路のうち1本が除雪作業中のため閉鎖され、1本の滑走路で運用されており、混み合っていた。運用中の滑走路は除雪直後で路面の状態は概ね良好であったが、場所によっては雪で滑りやすくなっていたとも伝えられており、管制官の停止の指示が遅れていれば、同機はさらに加速し全日空機への追突が避けられない状態になった可能性もあった。
同機は、定刻では出発時刻が午後8時25分であるが、実際に駐機場を出発したのは午後9時で約35分の遅れが出ていた。