事例詳細

(事例No,20040409ji)

 2004年4月9日午後0時25分頃、大阪(伊丹)発熊本行きJALエクスプレス2385便ボーイング737-400(JA8996)が、管制官に指示された滑走路25とは反対の方向の滑走路07から滑走路に進入しようとした。滑走路25上には離陸滑走を始めた航空自衛隊の練習機T400(航空自衛隊美保基地第三輸送航空隊〔鳥取県境港市〕所属で美保基地に向かう途中)がいたが、JALエクスプレス機が正面から対向して降下してくるのを発見して自ら離陸滑走を約380mで中止して滑走路脇に退避し、最終進入中のJALエクスプレス機は、管制官の指示で着陸復行した。JALエクスプレス機は午後0時31分に滑走路25に着陸した。
 JALエクスプレス機の乗員乗客64名と航空自衛隊機の乗員5名に怪我はなかった。
 JALエクスプレス機は、当初滑走路07から着陸する予定であったが、風向きが変わったため熊本空港管制塔は使用滑走路を反対側の滑走路25に変更し、午後0時15分頃にJALエクスプレス機にその旨を伝えていた。
 防衛庁とJALエクスプレスの報告を受け、2004年4月13日、国土交通省航空鉄道事故調査委員会は本件を重大インシデントに指定した。
 2004年4月14日、国土交通省航空局管制課は、当面の対応策として大阪航空局、東京航空局を通じて全国の主要28空港の空港事務所に文書で、管制官に指示内容の確実な復唱をパイロットに求めるよう指示した。従来の運用においても、指示内容の復唱は原則であったが、着陸前などの煩雑な時間帯には復唱がなされない場合もあるために、復唱の確実な施行により意図を確認することで再発防止を図ることとした。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、2005年1月28日に報告書を公表し、管制官が着陸予定時刻の約15分前に滑走路変更を指示し、これに対しJALエクスプレス機機長は了解の返事をしたが、実際には適切に聴取出来ておらず、その後約10分間にわたって思い込みのもとに進入を継続し、滑走路の約8km手前、高度約500mで管制官に指摘を受けるまで滑走路変更に気付かなかったのが原因とした。報告書は本件発生の背景について、同機は、当初滑走路に西側(滑走路07)から進入する予定であったが、風向きが変わったため、管制官が東側(滑走路25)からの進入を指示し、同じ管制官が、その後4回にわたり滑走路25への進入であることをJALエクスプレス機に伝えていたが、JALエクスプレス機からその都度了解の返事を受けたことで、この管制官は、東側から進入しているものと思い込み、他の管制官からJALエクスプレス機が滑走路07へ進入しているとの指摘を受けるまで、異常に気付かなかったこと、機長には当日別便で熊本空港に着陸した際に滑走路07へ進入したことにより、進入は滑走路07に行うものとの思い込みがあったこと、また、機長は副操縦士を指導しながら操縦しており、機長、副操縦士とも指導に気をとられ、管制官の指示への注意が不足していたことなどを指摘した。また、報告書は、使用滑走路などの重要事項についてはパイロットは復唱し、乗員同士や管制官の間で相互確認に努めるべきであるとした。


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