事例詳細

(事例No,20040307ji)

 2004年3月7日午後11時頃、成田発シンガポール行き全日空901便ボーイング777-200(JA705A)が、シンガポールの東北東約660km、高度約13200mを飛行中に、副操縦士が激しい腹痛のため操縦出来なくなった。同機は機長一人の操縦でシンガポール・チャンギ国際空港に着陸した。乗員乗客186名は全員無事であった。
 同機は成田空港を午後4時38分に離陸した。着陸約1時間前の午後11時頃、シンガポールの東北東約660km、高度約13000m上空を飛行中に副操縦士は激しい腹痛を訴え操縦できなくなり、以後機長一人で操縦、交信などを行い、チャンギ国際空港には、ほぼ定刻通りの午後11時54分に着陸した。副操縦士は搬送先の病院で急性膵炎の疑いと診断され(後に急性膵炎と確定診断された)、そのまま入院となった。
 全日空は2004年3月9日、本件の発生を国土交通省に報告し、同省航空・鉄道事故調査委員会は航空法上の重大インシデント(乗務員が病気や負傷で運航中に業務を遂行できなくなった場合)にあたるとして調査を開始した。
 2005年1月28日、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は重大インシデント報告書を公表した。報告書は、副操縦士が強い腹痛を訴えた際、マニュアルに従って客室乗務員が操縦室内で看護するなどしたものの、痛みはそのうち治まると判断し、乗客として乗り合わせた医師に診察を依頼することなく、管制機関への通報もしなかった点を指摘し、運航乗務員が急病で正常な運航が出来なくなった時の対応を、乗務員に再教育する必要があると結論付けた。


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