事例詳細

(事例No,20031105ji)

 2003年11月5日午前10時44分頃、羽田発那覇行き日本航空(日本航空インターナショナルの前身)933便ボーイング747-146BSUD(JA8176)が、那覇空港への着陸進入中、空港の北北東約22〜24Km、高度約360m上空を飛行中に左前方に同方向に飛行し右旋回する軍用機と見られる小型ジェット機を視認し、さらにTCASが作動したため約60m降下して回避した。
 日航機の乗員15名、乗客494名、計509名は全員無事であった。
 日航機の機長は国土交通省に機長報告書(異常接近報告)を提出した。機長報告書は、最接近時には水平距離4〜5Km、高度差60〜90mであったとした。
 その後の調べで、小型ジェット機は嘉手納基地に着陸進入中の在日米軍(米国太平洋空軍第5空軍)第18航空団所属のF-15C戦闘機と判明した。
 国土交通省は本件を重大インシデントに認定した。
 2005年5月27日、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は調査報告書を公表した。報告書によると、米軍嘉手納基地の訓練中の管制官が、嘉手納基地に着陸進入中のF-15Cのパイロットに左旋回を指示したが、高度400m付近で教官の管制官が他機を先に着陸させようとして右旋回に指示を変更した。その後上昇しながら左旋回を指示したため、F-15Cは基地の管制区域を南方に大きく逸脱、日航機の進入コースに接近した。米軍機は危険を回避するために目視で右旋回し、日航機はTCASの指示で急降下したため、両機はすれ違う形で高度約300m、水平距離約500mまで接近したが、異常接近(ニアミス)ではなかったとしている。
 さらに、報告書は、機長報告書(異常接近報告)が提出されたにもかかわらず、日航機のDFDR及びCVRが取り降ろされず、データが残されなかったことについて、トラブル発生後は迅速に確保することが必要である旨指摘した。この点について日本航空は、運航マニュアルを改定する措置を取った。
 なお、本件調査に際し、国土交通省が在日米軍に事実関係の照会を行ったところ、米軍は2度にわたり報告書を提出し米軍側にミスがあったことを認めるとともに、再発防止策についても言及した。米軍の報告書は、2003年12月24日付と2005年4月19日付で国土交通省に提出され、管制官が誤った旋回指示を行ったことを認めたうえで、管制官の再教育、乗組員の安全意識向上、基地周辺の運航方式の再確認などの再発防止策を取ったことを記していた。


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