2003年10月7日午前8時34分頃、羽田発八丈島行きエアーニッポン821便ボーイング737-500(JA8596)が、八丈島空港への着陸進入中、八丈島空港の西南西約8.3nmの太平洋上空、高度約300mを飛行中に海上自衛隊厚木基地第4航空群所属のP-3C哨戒機(JN5074)とニアミスした。
エアーニッポン機の乗員5名、乗客57名、計62名と海上自衛隊機の乗員9名は全員無事であった。
エアーニッポン機は、午前8時1分に羽田空港を離陸し、計器飛行方式で八丈島に向かっていた。エアーニッポン機の機長は、ニアミス約3分前の午後8時30分頃、八丈島空港の南西約20Km、高度約1000mを降下中に八丈島空港の西約16Km、高度約300mを飛行中であった海上自衛隊機の存在に気付いた。エアーニッポン機機長は、その後レーダーで北西約10Kmの地点に海上自衛隊機を確認、海上自衛隊機が自らの針路を南南東と報告したためニアミスのおそれがあると判断した。この時、エアーニッポン機は雲中を着陸進入中であり、管制を通じて回避を求めようとしたが、八丈島空港の西南西約7.9nmの海上上空でTCASの回避指示が作動し上昇の指示を出したため、指示に従い上昇しながら右旋回し、着陸復行した。雲中のため海上自衛隊機を視認することはなかった。当初は最接近時の両機の距離が約60mと推測されていたため、エアーニッポンからTCASの作動報告が国土交通省に提出されていたが、後にレーダーの記録を解析したところ約30m下方を海上自衛隊機が通過したことが判明した。この結果を受けてエアーニッポン機機長は、2003年10月11日に国土交通省に異常接近報告書を提出した。報告書の提出を受けた国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は本件ニアミスを重大インシデントに指定した。
海上自衛隊機は、救難ヘリコプターの移動支援を行うため厚木飛行場を午前7時57分に離陸し、有視界飛行方式で硫黄島飛行場に向かっており、八丈島西方海上を高度約1000ftで飛行していた。海上自衛隊機は民間航空機とのニアミスの発生を厚木基地に無線で報告したが、機長は衝突や接触の危険があるとは認識していなかったため、海上幕僚監部は国土交通省への報告を行わなかった。
2004年9月24日、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は報告書を公表し、両機が互いに相手機を視認できない気象状態において、海上自衛隊機が、八丈島空港に着陸のため最終進入経路上を飛行していたエアーニッポン機の前方を左方向から横切ろうとした際に、エアーニッポン機の機長が、EHSI画面上で海上自衛隊機を発見し、八丈レディオと同じ無線周波数で海上自衛隊機に右旋回をすることを要求し、海上自衛隊機がこれに応じて右旋回を行ったところ、エアーニッポン機の位置及び高度を十分に把握していなかったため、両機が更に接近したとの推定原因を明らかにした。
なお報告書は、エアーニッポン機の機長 が、TCASの回避指示に従って回避操作を行ったことで接近状況が解消されたと述べ、TCASの指示がなければ衝突していた可能性があったことを暗に示唆した。。