事例詳細

(事例No,20030922ji)

 2003年9月22日午後3時頃、羽田発熊本行きスカイネットアジア航空ボーイング737-400で、離陸2分後、コクピット内の客室後方右側サービスドアの警告灯が点灯した。指示を受けた客室乗務員がドアのハンドルがオープンの方向に約10cm動いているのを確認し、ハンドルをクローズの方向に動かしたが、手を離すと再びオープンの方向に戻る状態であったため、機長は熊本到着まで客室乗務員にハンドルを押さえておくように指示し、熊本への運航を継続することを決断した。客室乗務員は、飛行中交代でハンドルを押さえ続けた。
 乗客65名(62名との情報もある)は全員無事であった。空気漏れなどはなく乗客に異常に気付いたものはいなかった。
 同機は、同日午前10時発の羽田発宮崎行き113便でも離陸上昇中にドアの警告灯が点灯し、羽田空港に引き返し整備を受けていた。この宮崎便でのトラブルは同社から国土交通省に報告されたが、本件熊本便のトラブルは報告されなかった。
 本件は、2004年5月27日に航空労組連絡会(航空連:パイロット、客室乗務員らで組織)が、離陸直後にドアの異常を示す警告灯が点灯し、ハンドルに異常が発生したにもかかわらず、客室乗務員がドアハンドルを押さえながら運航を続けたことは安全上大きな問題があること、整備後も同じトラブルが発生することは通常では考えられない事態であることなどから、同社に対する立ち入り検査など監視体制の強化を国土交通省に要請したことで発覚した。
 要請を受けて、国土交通省は直ちに同社に事実関係を確認した。同社の説明する経緯は概ね次のとおりであった。宮崎便では、離陸40分後にドアの警告灯が点灯したが、ドアは施錠されており、機内の気圧の変化もなく危険性はないものの、点検のため引き返した。ドアを解体するなどして点検したが異常は認められず、同日午後2時40分発の熊本便に投入したところ、離陸2分後、再び警告灯が点灯した。客室乗務員がドアのハンドルを押さえると警告灯が消えたため、交代でハンドルを押さえたまま運航を継続した。熊本での整備後は、警告灯はつかなくなり、同機はその後、同日中に2回運航した。
 同社は原因について、警告灯を消すスイッチと連動するハンドルに遊びがあり、接触不良となったことが原因であるとしている。なお本件熊本便のトラブルを国土交通省に報告しなかった件について同社は、宮崎便と継続したトラブルであったため報告しなかったとしている。今後の対策について同社は、点検で欠航便が出るのを防ぐため、今月末に予備機を1台増やし5機体制にするとしている。
 国土交通省は2004年6月11日、同社から提出された事実関係報告書類や、継続的に取り組んでいる機体などの安全性確認検査の履行状況等から警告灯の点灯は警報システムの不具合によるもので、機体から気圧の漏れも発生しておらず、安全運航上、問題はなかったとして、運航を継続した機長の判断についても問題はなかったとの認識を示した。
 ちなみに、ドアのハンドルがオープンの方向に動いても、ドアの構造上与圧が働いているため飛行中にドアが開くことはない。


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