事例詳細

(事例No,20030213ji)

 2003年2月13日午後1時頃、成田発台北行き日本アジア航空201便ボーイング747-200B(JA8129)が、 沖永良部島の北北西約285Kmの東シナ海上空を飛行中に第2エンジンの出力が低下し、那覇空港に緊急着陸した。
 乗員18名、乗客298名、計316名は全員無事であった。
 同機は午前10時39分に成田空港を離陸、午後1時頃、高度7200mから8500mに上昇中に第2エンジンの出力が低下し、振動が発生した。同機は同エンジンを停止し、午後1時40分那覇空港に緊急着陸した。
 着陸後の点検で第2エンジンのファンブレードの1枚が折れてなくなり、エンジンカバー(ファンカウリング)の下部外側に約40cm四方の穴が開き、内側は長さ約1mに渡って損傷していることが分かった。折れたファンブレードが内側からカバーを突き破ったと見られている。ファンブレードはチタン合金製でエンジン1基に46枚あり、1本の大きさは長さ約1m、幅約20cmで、そのうちの1枚(35番ファンブレード)が根元から約20cmのところで折れていた。両側の34番と36番のファンブレードにも損傷があった。
 第2エンジンは2003年1月に同機に装着された。飛行前点検では異常は確認されなかった。
 緊急着陸により、滑走路は4分間閉鎖され、乗客は再度出国手続を行った上で午後9時30分の代替便で台湾に向かった。国土交通省は本件を重大インシデントに指定した。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、2003年2月21日、破断したファンブレードの破断面の調査結果として、金属疲労がファンブレード破壊の原因であったことが公表した。
 この調査結果を受けて、国土交通省航空局は、耐空性改善通報(TCD)を同型のエンジンを使用している航空各社に通知するとともに、FAAにも対策の検討を依頼した。国内でTCDの対象となる同型エンジンは30基で、そのうち24基がボーイング747型機6機(いずれも日本航空〔日本航空インターナショナルの前身〕グループ所属)に搭載されていた。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、2003年11月28日、最終報告書を公表し、原因は、ファンブレードの1枚が金属疲労で折れ、エンジン内やカバーを破損させたとし、金属疲労の原因としては、1980年と1996年の2回、電気溶接などでファンブレードを修理した際に、一部に微細な傷が発生し亀裂が広がったものと推定した。国土交通省航空局は、同型エンジンの装備機(国内で他に5機、全てボーイング747型機)を使用している日本アジア航空、日本航空(日本航空インターナショナルの前身)、ジャルウェイズの3社に対し、安全確認とファンブレード全体への精密探傷検査を指示した。


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