事故詳細

(事故No,20050820ja)

 2005年8月20日午後11時15分頃、成田発オーストラリア・パース行きカンタスオーストラリア航空70便エアバスA330-300(VHQPF)が、和歌山県串本町の南約900kmの太平洋上空高度約11000mを飛行中に、床下前方貨物室内での発煙を示す操縦室内の発煙警告灯が点灯した。同機は最寄の関西国際空港に貨物室内で出火の疑いがあることを伝えて緊急着陸を要請のうえ、翌21日午前0時51分頃緊急着陸し、誘導路上で全エンジンを停止し、脱出用スライドによる緊急脱出を行った。午前1時15分頃に乗員乗客全員の避難が完了したことを機内に入った消防署員が確認した。
 この事故で、乗員13名、乗客181名、計194名のうち、9名が打撲など軽傷を負い病院に運ばれた(うち1名は当初骨盤骨折の重傷と報じられていたが、検査の結果、骨折は見られず、打撲と判明した)。負傷者はいずれも脱出用スライドでの降機の際に負傷した。負傷者の国籍は、日本6名、オーストラリア2名、中国1名であった。このほか、擦り傷程度で病院に搬送されなかった負傷者は10〜30名程度いたと伝えられる。
 同機は成田国際空港を午後9時38分に離陸した。運航乗務員は、発煙警告灯が作動した際、出火の疑いがあるためマニュアルに従って消火装置を作動させたが、消火が確認できないため、緊急着陸を決断した。
 関西国際空港では、救急車や化学消防車などを待機させ不測の事態に備えた。泉佐野市消防本部には午前0時29分に関西国際空港内の中央警備防災センターから航空機火災発生の一報が入り、救急車2台とポンプ車を含む計6台が出動し、滑走路脇で待機した。空港ではこの6台を含む24台の車両が事故機に着陸に際して待機した。
 着陸後の点検では機体に出火の形跡は確認されず、発煙警告灯の誤作動と見られているが、乗客の一部は焦げ臭いにおいがしたと証言している。
 乗客らの証言によると、離陸約2時間後にコンピューターエラーのため念のため日本に戻る旨のアナウンスがあり、その後、衝撃防止姿勢に関するアナウンスがあった。着陸後は乗務員から緊急脱出し機体から出来るだけ離れるように指示があった。脱出時に乗務員に「ハリーアップ」とせかされたと話す乗客もいた。乗客らは、詳細を知らされない状態で衝撃防止姿勢の指示を受けて墜落の不安を感じ、着陸後の間髪入れない緊急脱出の指示に爆発の不安を感じたと言い、脱出時はドア付近に乗客が殺到し、パニック状態になっていたという。
 機外に脱出した乗客は、誘導路上に設置された救護所で応急処置を受けるなどした後、バスでターミナルまで移動し、空港周辺のホテルに宿泊した。
 国土交通省は本件を航空事故に指定した。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、2006年9月29日に経過報告をまとめ、機長は当初誤作動を疑っていたが、操縦席の発煙警告灯が37分間に6回点灯したために緊急着陸を決断したことと、着陸後に消防関係者から管制塔を通じて機首部分から白い煙が出ているとの指摘を受け、火災が発生していると判断して緊急脱出を指示したことが明らかになった。


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