1998年5月12日午後6時12分頃、成田発香港行きユナイテッド航空801便ボーイング747-400(N179UA)が、成田空港の402番スポットからプッシュ・バックを受けた直後第1エンジン排気口から出火し、乗員乗客が緊急脱出した。
この事故で乗員20名、乗客365名、計385名のうち乗客4名が重傷を負い、客室乗務員1名と乗客19名の計20名が軽傷を負った。
運輸省は本件を航空事故に指定した。
2000年12月1日、運輸省航空事故調査委員会は報告書を公表し、第1エンジンの炎はトーチングであり、客室乗務員の一人がこれを機外火災と判断して、乗務員相互の意思疎通のないまま緊急脱出アラームを作動させた結果、緊急脱出が行われ、脱出用スライドを滑り降りる際に負傷者が発生したと指摘した。
トーチングは不完全燃焼となったガスが排気口付近で燃焼する現象で、炎が大きく上がるものの一過性の炎で、安全を脅かす性質ものではなかった。ユナイテッド航空の客室乗務員インフライト・ハンドブックにもトーチング自体のために機外に出るとか緊急脱出が求められるわけではない旨明記されていたが、客室乗務員には、トーチングがどのようなものであるかという認識が乏しかった。また、トーチング発生直後、トーチングを目撃した客室乗務員がインターホンを用いて機長とチーフパーサーに連絡しようとしたが、インターホンが繋がらず、火災に発展することを恐れた客室乗務員は緊急脱出アラームを作動させた。同じ頃インターホンの回線はチーフパーサーとコックピット間の通話に使われており、チーフパーサーはこのまま待機するようにコックピットから指示されていた。緊急脱出アラームの作動に驚いた機長は直ちに機内アナウンスで座席に留まるよう大きな声で2度呼びかけたが、緊急脱出アラームの作動で騒然となった機内の喧騒に掻き消されて1階の殆どの乗員乗客には聞き取れなかった。
ユナイテッド航空では、フライト・オペレーション・マニュアルにおいて、コックピットの指示が仰げない場合は、客室乗務員独自の判断で緊急脱出しても良い権限が与えられていた。
事故機は1991年に製造された。