事故詳細

(事故No,19960913ja)

 1996年9月13日午後1時16分頃、成田発ドイツ・フランクフルト行き日本航空(日本航空インターナショナルの前身)407便ボーイング747-400(JA8902)が、成田空港を離陸滑走中第4エンジンに不具合が発生し、離陸を中止した。滑走路から誘導路に入り停止した際にタイヤから火が出ているとの連絡が管制からあり、緊急脱出を行った。脱出時に負傷者が発生し、運輸省は本件を航空事故に認定した。
 この事故で乗員20名、乗客333名、計353名のうち乗客3名が重傷、乗客19名が軽傷を負った。
 事故機の飛行前の点検では、異常は見られなかった。事故機は午後1時11分、離陸滑走を開始したが、V1直前に加速が鈍くなり機首が右に取られたため、機長は姿勢を修正し、V1到達後ではあったが、残滑走路長を考慮に入れても離陸中止が最善であるとの判断の下離陸を中止した。離陸中止直後に客室乗務員から離陸中止の際に右主翼端から燃料が流れ出ていたことと第4エンジンから煙が出ていたことが報告された。誘導路上で停止し、ファイヤー・エンジンチェックリストを施行した直後にグランド・コントロールからタイヤ付近で出火していると告げられ、機長は緊急脱出を決断した。緊急脱出は午後1時16分30秒頃から始まり約2分間で完了した。
 1998年5月29日、運輸省航空事故調査委員会は報告書を公表し、脱出用スライドを滑り降りる際に着地が安全に行われなかったことにより負傷者が発生したと指摘した。本件を教訓として日本航空では1998年4月1日から非常口座席の乗客に非常脱出時の援助者として協力を求めるように運用を改めた。タイヤからの出火については、離陸中止時の急減速によりブレーキが発熱し、グリースやタイヤが熱せられ、火及び煙が発生したものとされた。日本航空は1997年5月20日、保有する全機種のAOMを改訂し、離陸中止後のブレーキ温度上昇に対処するための冷却の項目を追加した。
 なお、第4エンジンの不具合はPS3(高圧圧縮機出口圧)取出しパイプのナットが緩んだことによるものであった。同型のエンジン(CF6-80C2B1F)のPS3系統の取り付けナットについては緩みが報告され、緩み止めのセイフティーワイヤーの装着を行うための改修を製造元のジェネラル・エレクトリック社が1993年5月付のサービス・ブリテンで推奨しており、日本航空でもエンジンが工場に入った段階(同社実績で平均約12500時間使用した段階)で順次行うことにしていた。事故機のエンジンの使用時間は4台とも9814時間で、まだセーフティーワイヤーは装着されていなかった。日本航空は1997年9月30日までに対象全エンジンの改修を完了した。
 また、第4エンジンからの発煙は、高速回転中のエンジンを急速に停止させたときに燃焼室に残留した燃料が暖められ不完全燃焼起こし、煙がテールパイプから排出されたことによるものであり、右主翼端からの燃料の流出は、タンク内に満載された燃料が離陸中止の急減速により前方に移動し、燃料タンク上部と外気を結ぶ通気用配管に流れ込み、翼端のサージタンクを経て、通気口から流出したためであって、双方とも一過性で危険性は薄いものであった。


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