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ALBUM OF THE YEAR 2020
ALBUM OF THE YEAR 2020 ――CDが終わる時代に |
1. 『folklore』 / taylor swift
I knew you'd miss me once the thrill expired アルバムタイトルは勿論、トラックリストも全て、小文字で綴られている。アリアナ・グランデが、チャーリーXCXが、ビリー・アイリッシュがそうしたように。それは何を意味するのか? The Nationalのアーロン・デスナーのプロデュースによる本作は、彼女が元々フォーク・シンガーだったことを否応なく思い出させる。いや、ボン・イヴェールの客演からも分かるように、正確にはフォークではなくオルタナティヴなんだろうけど、《We are never ever getting back together》——「私たちはもう二度と元通りにはならない」と唄ったテイラーが、メインストリーム・ポップの意匠を脱ぎ捨て、「あなたが私のもとへ帰ってくること、分かってた」("cardigan")と囁くというのは、やはり感じ入ってしまうものがある。 "mirrorball"のようなオーセンティックな曲を擁していることもあり、この作品は所謂「伝統的な白人男性」に受け入れられる形式を一見では有しているかもしれない。だが、たとえグラミーで最優秀アルバムを獲ったとしても、それは権威におもねった結果では決してない。ドナルド・トランプのツイートは、アメコミのヴィランのように全て大文字だ。そういう大きくて角ばっていて強そうなものに対して、小さくて丸っこくてひ弱そうな印を掲げて抗ってきた者たちに、彼女は緩やかに連帯した。それが何よりの証左だ。 ただし、これは男性に抑圧される女性へのエンパワメントという単純な図式では勿論ない。完璧な転調によるクライマックスで後半のハイライトに位置付けられた"betty"は、その「男性性」を振りかざして恋人を傷付けた17歳の少年の物語なのだ。リリックシートの最初のページ、「prologue」と題された文章で、テイラーは言う。「この物語を語り継ぐのはあなたです」と。彼のように、私たちは省みなければならない。失言が失言と見なされない気の遠くなるような状況のこの国で、彼女が小文字のタイトルに込めたその想いに、私たちは連なっていかなければならない。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 2. 『Suddenly』 / Caribou
歪んでピッチのズレる電子音、またはアコースティック・ギター、あるいはグランドピアノ("Filtered Grand Piano"だ)。ピッチが恣意的に上げられ、下げられ……。最早、エレクトロニカにディストーションをかけるという実験なのではないかと勘繰ってしまうが、Caribouことダン・スナイスが元数学者と知って妙に納得してしまった。なるほど、科学的である。ただ、計算に計算を重ねられたデジタルの揺らぎがシグニチャーであることは間違いないが、その上に乗る歌メロはどこまでもストレートで美しい。クラブなんて数えるくらいしか行ったことのない永遠のナイトサーフ初心者であるところの私が、それでも何度もリピートしてしまうのは、この破格のキャッチーさゆえだ。教えてくれてありがとうele-king(野田努氏)。バックカタログも全部掘ります。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 3. 『狂(KLUE)』 / GEZAN
その切実さと言葉に圧倒されそうになるが、冷静に音を聴くと、トラックは打ち込みの代わりに声によるパーカッションで構成されている。間違ってもハモネプ(死語)由来のボイパ(死語)ではない。声の切り貼りとループで作られるビート——それが基調となっている(「ウンダダンダッダ!」みたいな)。そのビートが、複数の曲に亘って通底する。それはすなわち、より原始的な、プリミティブな衝動の演出ということだ。捻じ伏せる。どんな理不尽をも捻じ伏せる力。《想像してよ 東京/新しい暴力を 何でもって乗り越えよう?》("東京")と唄うように、彼ら自身にもそれがなんなのかは分かっていない。暴力的な音像だが、当然求めているのは暴力ではない。求められているのは、変化だ。どん詰まりの息苦しさでどうにもならない人は、呪術的意匠で革命と新しい連帯の形を説く現代のシャーマンの声に、是非耳を澄ませてみてほしい。劇薬だが。 《今、お前はどこでこの声を聞いてる?》 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 4. 『Shore』 / Fleet Foxes
ゼロ年代後半から10年代前半に咲き乱れた北米インディー・ロックの最後の落とし種、のような。重厚でありながら豊かなアコースティック・サウンドが産まれたのは、コロナ禍という2020年の閉塞的な環境が影響したのかもしれない。アタマからケツまで素晴らしい密度と完成度で、特に終盤、"Cradling Mother, Cradling Woman"の強靭な6/8のビートから、ラストを飾るタイトル・トラックの長い長い余韻に至る流れは有無を言わさぬほどの美しさだ。しかし、辿り着いたその海岸、その陸の淵から彼は何を見たのか。この先はあるのか? だって、船がないならそこは行き止まりとも言えるじゃないか、じゃあその先に待っているのは——なーんてポエミーな心配してしまうくらい、鬼気迫る大作だってことが言いたかっただけです、はい。 というか、これにもアーロン・デスナーが関わっているのか……。マジ凄いね……。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 5. 『It Is What It Is』 / Thundercat
バカテクベーシストのソロ・アルバムというより、単純にウェルメイドなポップ・ミュージックという側面が濃くなっている(まぁ、"How Sway"みたいなインスト比率が高い曲とか、"I Love Louis Cole"の超絶シンコペーションとかには相変わらず度肝抜かれるんですが)。前作同様、曲間の繋ぎは痺れるくらい見事。"Funny Thing"のフェイドアウトから"Overseas"への接続とかね。だが一転、"King Of The Hill"からのシリアスなムードにはドキッとさせられる。それこそ「片想い」のようなメランコリーが通底している。最終的にはそれが《It is what it is》——「しようがないね」という諦念の感情に回収されるのは、サンダーキャットらしいといえばそうなんだけど、ちょっとコミカルだからこそ余計に切ない気分になってしまう。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 6. 『Melee』 / Dogleg
別に新しくないし、音はデカいし、アルバム全部が同じ曲に聞こえるかもしれない。泡沫のように現れては消えるロックンロール・バンドあるいはパンク・バンドの一つに過ぎないかもしれない。でも、今、この音楽が必要だ。去年でも来年でもなく、今年。たまたまこの4人が出会い、たまたまコロナに端を発する負の感情が渦巻き罵声が行き交う今年にレコードを出し、そしてたまたま私が今年聞いたからこそ、刺さったのだ。2006年にアークティック・モンキーズに出会ったように出会っていれば、余裕で年間ベストに選んだろうし、ライフタイムベストになっていたかもしれない。ストリングスのエンドロールには茶々を入れたくなるが、彼らは至って大真面目だろう。街がどうなっていようと、世界がどうなっていようと、彼らはやりたいように、めちゃめちゃのぐちゃぐちゃにする。犬は吠える。 蛇足ですが、なんかに似てる……と思ったらストレイテナーでした。ふふ。え? 似てません? ベーシックなリズムパターンにウォール・オブ・サウンドなディストーション・ギター。アルペジオの挟みかたなんかまさに。これからどうなっていくのか余計楽しみで、なんか嬉しいね。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 7. 『GLINTS』 / さとうもか
僅かに主張するハスキーがとても人懐っこい、稀有な声だ。シティ・ポップ・リヴァイヴァルに間に合わなかった天才。 唐突なトラップの挿入が、自分はDTMの系譜に連なっているんだという宣誓に思える。そして何よりも、詩だ。5音に、6音に、7音にこれ以上ない言葉を当てはめる天才。何はともあれ1曲目・"Glints"を聴いてください。サビ前の《くるまだすから》!! 完っっっ璧じゃないすか!? 何なの? 天才?(3回目) 少々取り乱しましたが、ラストの"ラムネにシガレット"のような情景描写の秀逸さも光る。ラムネ瓶に煙草を1本落として、飲み残しで火が消える「ジュッ」という音が聴こえるようだ。いつだって夏は終わる。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 8. 『ENERGY』 / Disclosure
陸地を浸食していく海、というアートワークはもちろん気候変動のことを示唆しているのだろう。音響と照明が馬鹿みたいに電気を喰うレイヴ・カルチャーは、サステナブルとは対極にある。"Mali Mali"をはじめとする非英語圏(特にアフリカ)への接近——耳に痛いキンキンするビートと耳慣れない言語は、自分たちが属するクラブ・シーンが成してきた功罪、つまりは環境に及ぼしてきた少なくない影響に、彼ら兄弟が意識的であることの何よりの証拠だ。それでも、"Energy"の「ちょっとやり過ぎじゃない?」ってくらい浮わついている奇天烈なサンバのリズムを聞けば、足は自然と動いてしまう。"Watch Your Steps"——《気を付けて》という彼らの真摯な問いかけには、奇しくもコロナ禍というコンテキストも付加されてしまったが、ディスクロージャーはダンスを、人の営みをいかなる時でも肯定しているのだ。そして、ゆるやかな「幻想」("Reverie")でチルアウトするというのも、少々理想主義が過ぎるとも思うが、納得させられてしまう。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 9. 『What’s Your Pleasure?』 / Jessie Ware
《君の悦びは?》——誰にもそれは止められなし、止める必要もない。誰にも《太陽が昇るのを止められない》し、《君の鼓動を止めることもできない》("Spotlight")。The Weekndの『After Hours』に共振するようなチープな80'sシンセにのせて、軽やかな全肯定を促すディスコ・サウンド。あるいはスコット・ウォーカーばりのドラマチックなストリングス。世界が止まったように見えても、ほら、何度でも足は動く。動き出す。君の悦びは奪えない。そして、アルバムは《君の居場所を思い出して》("Remember Where You Are")という呼びかけで幕を閉じる。素敵じゃないか。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 10. 『Last Straw』 / The Mirraz
心情の吐露は成りを潜め、只管に情景描写が続く。それだけでもう、死ぬほど辛い。あれほど「主張」していたミイラズが、ウェブサイトの案内や、原稿や、スーパーマーケット店内のアナウンスや、どっかの誰かがまとめサイトに上げたライフハック術や、お気に入りのアニメのタイトルと声優を、ただ単に読み上げる。ナレーション(あるいはナラティブ)に徹する。その異様さが、逆に居心地の悪さをこれでもかというほど浮き上がらせる。本当の本当に『言いたいことはなくなった』のだろうか? 好きな人と近所のドラッグストアで洗剤を選ぶことをデートと呼ぶような日々が《続くようがんばるよ》と唄う。そんな藁にもすがるような生活が、2020年のリアルなのは分かる。だがもう少しだけ、もう少しだけ多くを望んではいけないのだろうか。 まぁ、結局はアクモン最新作のパクリというのも、チャーミングじゃないですか? - - - - - - - - - -* * * * * * * * * * 11. 『The Ascension』 / Sufjan Stevens
ひび割れて、時代遅れとさえ言えそうなエレクトロニカにのせて、スフィアンは何度も同じフレーズを繰り返す。"Die Happy"は間違いなくRadioheadの"KID A"のオマージュだが、そこで彼は、《僕は幸せに死にたい》とただ唄い続ける。病的であり、強迫観念的でもある。壊れた時計が何度もアラームを繰り返すような、時計の針が決して先へ進めないような絶望的な音像。 エンドロールである"America"では、心電図のような電子音が、ピッチを上げたり、下げたりしながら、不穏な脈拍を打ち続ける。まだ生きている、が、しかしそれは喜ばしいことなのか? 「昇天」("The Ascension")することしか、救いは残されていないのか? ラスト2分の光が溢れるようなピアノとシンセサイザーによる音像は、やはり死後の世界でしかあり得ないのか? - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 12. 『Morning Sun』 / 岡田拓郎
素晴らしい音響。ラップトップ1つあれば何でもできるこの時代に、それでもレコーディングにコストと情熱をかけること、録り音の可能性を追求することへの執念が感じられる。国内シーンでロックバンドが華開いたゼロ年代に青春を過ごした者として、時折バックに挿入されるディストーション・ギターの色気を支持しないわけにはいかない。ラスト・トラックの"New Morning"が重苦しい表拍のキックで始まり、《朝が来る前に》という急かされるようなリリックがリフレインされると、流石に小難しいことを考えざるを得ない。が、結局は"Lost"のメロディの美しさにやられる、という単純極まりない理由でこの順位に。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 13. 『Sparkle』 / iri
こんなインターネットの最果てまで辿り着いてくれるような奇特な人は、「スパークル」と聞けばまず山下達郎を連想するだろうが、(本人の意図は知らんけど)そのインスピレーションはあながち的外れではないと思う。ハスキー・ヴォイスのiriが紡ぐ音楽は、ジャンルとしてはヒップホップに括られるのだろう。しかし、トラップの「チキチキ」が足されることはあっても、このトラックは飽くまで生楽器のアンサンブルを主体に組み上げられている。海外のアクトが、打ち込みの音源をライヴではバンド・セットを率いて再現するように。 パンチラインはあってもフックには乏しい気もするが、彼女にとっては「引っ掛かり」はない方がいいのかもしれない。「フロー」という文字通り、美しく、気持ちよく、流れていく言葉と音楽。ね、「スパークル」でしょう? - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 14. 『健全な社会』 / yonige
日本でもやっとストリーミング全盛となったこの2020年、若手のバンドが死にものぐるいで「オリジナル」を求めるというのは理解できる。有象無象が蔓延る幾万のカタログの中から自分たちのニューリリースをタップしてもらうために、一体何ができるのか? 正直、yonigeのことはauのCMソングしか知らなくて、「ほーん、ゴッチが1、2曲プロデュースしたんか」くらいの動機で聴いてみたが、寝屋川出身の彼女たちは、ソングライティングを抜本的に変えるのでも、シグニチュアルな音作りをするでもなく、あくまでプロダクションによって唯一無二に近付こうとしたように思える。そして、私のようなスノビズムに毒された人間にも届いたということは、その差別化は一定の成功を収めたといえるのではないか。 未だ、下駄箱を埋め尽くすローファーの一つに過ぎないかもしれない。だが、それが何だというのだ。私たちのほとんど全員は、みんなそうして今日も闘っている。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 15. 『The Neon Skyline』 / Andy Shauf
前作を聞き逃していたのが悔やまれる。ゴッチがリコメンドしてたのを素直に聴いとけば良かった。いやでもこういうちょっと興味あるものをサラッと聴けるようになったのも、Spotifyをはじめとするストリーミング・サーヴィス様々というか……。 全編ジャキジャキしたフレッシュなギターと、反響が限りなくミュートされたモッタリドラムに乗せてお届けされる、所謂グッド・ミュージック。この牧歌的なムードは、ひょっとすると今年聴くべき音楽ではないのかもしれない。でも、まぁ「今年聴くべき」とかよくよく考えたらどうでもいいもんね。随分このアルバムに弛緩する時間を貰いました。こういうライヴが今観たいですね。カモンベイビー、トライアゲイン! - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 16. 『The New Abnormal』 / The Strokes
1曲目、打ち込みのようなドラム・パターンから顕著な「ありそうでなかった」感。プログラミングされた音源をステージ上では生バンドで再現する、ヒップホップ・アクトのあの感じを死に体のロックンロールへ逆輸入した、ってことなのでしょう。ロックンロール・リバイバルの旗手とされた『Is This It』から20年、間違ってもこれで復権などという容易い話ではない。けれど、シーンの間隙を縫って生き延びる、そもそもストロークスはそういうバンドだったのかも。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 17. 『夢の骨が襲いかかる!』 / 長谷川白紙
キーボード1本(しかもほぼローズ)と歌のみ。そしてカヴァー。異様。オリジナルよりカヴァーの方がその異質さがよく分かる。"LOVEずっきゅん"、おかしくないですか? いや、完全におかしいんだけど"LOVEずっきゅん"のイデア的なものがあるってゆーか、"LOVEずっきゅん"のイデアって何。 でもまぁ正直、これからは編曲の時代なんだってことを改めて目の当たりにしたって感じです。メロディが使い尽くされたから、もうカヴァーでいいじゃん、っていう潔さ。アレンジメントが何より大事なんだっていう。そしてそこにこそオリジナリティが宿るんだってことを見事に証明してくれた1枚。でも、やっぱり次のオリジナル・アルバムも楽しみです。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 18. 『VOO DOO?』 / ドミコ
変、変、変拍子。いや、でもギターはかなり分かりやすい、キャッチーだ。《ぐるぐる回ってよ/あたしの周りに》というリリックに"地動説"と名付けるところからしてなかなかに倒錯しているが、そういうポイントに何故かゆらゆら帝国のDNAを確かに感じる。ゆら帝が言葉の響きそのものを問い直すことによって異常さを提示したのに対して、彼らは"びりびりしびれる"とか"噛むほど苦い"とかセンテンス単位で異様さを抜き出すから、ちょっと質は異なるけれど。彼らもめちゃくちゃライヴが観てみたい。またツーピースバンドってとこがイカしてますよねー。 - - - - - - - - - -
* * * * * * * * * * 19. 『At The Beginning』 / THE NOVEMBERS
子供に名前を付ける。その圧倒的な全能感と吐くほどの恐怖感を描いた先駆者として、誰もがスピッツを挙げることだろうが、彼らも果敢にその表現にチャレンジしている。赤ん坊が寝息を立てている——ただそれだけで身体を突き抜けていく畏れにも似た感動は、当然日が経つにつれどうしたって薄れていってしまうけれど、それでもこのアルバムを聴く度にきっと思い出すことができるだろう。総てがはじまったその日のことを。《いつもここがはじまり》だと。
* * * * * * * * * * 20. 『Mutable Set』 / Blake Mills
可変セットは、後から変更を加えることができる集合です。
* * * * * * * * * * 散々な1年でしたが、しかしというかやはりというか、2016年以来の当たり年だったのではないでしょうか。ひどい時代には良い作品がたくさん生まれるっていうね。 コロナ禍だからこそリリースできた、もしくは新たなコンテキストが添えられたということはあるかもしれませんが、作品の内容そのものに影響を感じることはほとんどありませんでした。チャーリーXCXの素晴らしいジャケ写くらい? この変わってしまった世界そのものを描いた作品は、きっとこれから上梓されるのでしょう。 そういった素晴らしいアルバムたちに触れて感じたのは、もう、確実に、私たちは変わらなければいけないのだということです。もう本当に逃げられないところまで来てしまっている、ということを突き付けられた気がしました。年を跨いで以降、本当にうんざりするぐらいの出来事が続いていますが、差別発言(と本人は思っていないのでしょうが)で職を辞した件の政治家のような人間が未だに権力を握っている社会に対して、やはり声を上げなければならないのだと思いを新たにしました。 ただ一方で、恥ずかしながら自分自身の振る舞いの中にも、そういう唾棄すべきものを感じることがあります。うんざりするような、怒りをおぼえるような人々と、お前は本当に違うと言えるのか? お前も偉そうに見かけだけ正しい文章を、インターネットの海に垂れ流しているだけではないのか? そういった自分の中の見たくないものが、件の政治家のような存在をのさばらせ続けているのではないか? そう、省みなければならないのだと思います。そして、変わってしまった世界と同様に、私たち自身が変わらなければいけないのだと思います。家庭で、職場で、信頼できる友人との場で、ひとつずつ、ひとつずつ、自分の行いを自分で正していくしかないのだと思います。 ……こんなこと書くつもりじゃなかったのに、なんか重くなっちゃったな。要するに、職場のおじさんの他愛もない雑談に、「それは違うんじゃないすか」って一言言えるかどうか、結局そういうことの積み重ねだと思うんですよね。ひとつずつ、変わっていきたい。変わっていきます。 2021/2/28 |
SONG OF THE YEAR 2020
1. "Donuts Mind If I Do" / CHAI
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