鯛の食べくらべ

10年以上、水産バイヤーをし、その前はコックやお店の魚担当をしてきたのですが、「天然マダイと養殖マダイ」の食べ比べは、
一度もしたことがありませんでした。今回、鯛をテーマにした文章を書く機会ができましたので、やってみることにしました。
家族みんなで試食したのですが、面白い結果が出ています。
私自身は、どちらが養殖で、どちらが天然だというようなことは言わなかったのですが、家族で評価が分かれました。
うちの嫁さんは漁師の娘なんで、魚のことはちょっとぐらい(鮮度とか)わかります。「養殖のほうがコリコリしてる、私はこれがいい。」ということでした。ところが、中一の娘は、「これ、固いし美味しくない。こっちのほう(天然)が柔らかくて美味しい。」と言いました。私が「それは天然や。」と言うと、「おーーー!!」と喜んでいました。
中三の息子は、オンラインゲームに熱中しており、「食えればいい、味なんてどうでもいい」という感じで、なんの反応もせずに、食べてすぐ自分の部屋に戻り、ゲームをしてました。入試が終わったとこなんで、しかたないですわ。(^_^;)

2003年3月9日記
上が、長崎産の天然マダイ、約1.1kgでした。尾の先端が黒いし、全体にスマートなので、チダイと間違うことは無いですね。鮮度的には、活け絞めではなくノジメで、硬直中でした。丁度、ウマミが乗っているところだったと思います。
下が、愛媛産の養殖マダイ、約1kg。なんとなく「ずんぐりむっくり」していて色も黒く、いかにも養殖鯛らしいです。もちろん、市場には活魚で入荷していますので、身はいかっていました。
こうして並べて写真を撮り、初めて気がついたのですが、胸鰭も尾鰭も天然のほうが長いようですね。天然の場合、生きていく上で遊泳力の強さが要求されるので、自然にヒレが長くなるのかなと思いました。
価格的には、天然鯛が養殖鯛の2倍ほどしています。(価格差ほどの味の差は無いと思いますが・・・・・・・。)
頭から撮ってみました。
気のせいか、なんとなく天然鯛のほうが口が大きく、精悍な表情をしていると思います。

目が白抜きになっているのは、私の写真技術のまずさで、実際はちゃんと目がありましたよ。(^_^;)

どちらもメスです。
これは天然マダイですが、ごらんのとおり、3月初旬の時点で、このように抱卵しています。片側はまだ未熟ですので、産卵までは、少し間があると思います。

なお、養殖マダイも同じように抱卵しており、片側の卵が未熟であるところも天然と同じでした。

写真は撮っていないのですが、内蔵では養殖と天然の差がありました。天然では、内臓に脂肪分がほとんどないのですが、養殖は白っぽい脂肪の塊がありました。でも、昔よりましになったかな・・・という気もします。(一昔前の養殖鯛の内臓は、脂でベタベタでしたからね。)
片身を切り身にしてみました。
左が養殖で、右が天然だというのは、魚になれている方ならすぐわかるでしょうね。

塩をして、冷蔵庫で一晩寝かせました。今日の夕食のオカズになります。(塩焼き)

塩は、先日の横浜オフの時に、多田さんから頂いた「古代の塩」を使いました。

塩焼きでどうだったかは、別項で書きます。
切断面の比較をしたかったのですが、あまりよくわかりませんね。(写真技術のアップが重要課題だと思っています。(^_^;))

天然鯛のほうが、身が赤くて、血合いもハッキリしています。
片身は刺身にしました。
とりあえず、3枚おろしで写真を撮り、比較しました。
上が養殖、下が天然です。

上の項でも書いていますが、天然鯛のほうが赤っぽい身です。
養殖鯛は、灰色っぽくて透明感がありますが、これは鮮度の良い証拠です。
脂ギンギンではありません。
短冊での比較です。
写真ではちょっと見にくいですが、天然鯛は赤い縞模様がはっきりしており、養殖鯛はこの縞模様が薄いです。

ということで、おわかりかもしれませんが、
写真では
一番上が、養殖鯛の背身
二番目が、天然鯛の背身
三番目は、養殖鯛の腹身
一番下が、天然鯛の腹身です。
「鯛の塩焼き」です。
嫁さんが焼いてくれたので、どちらがどうかというのは、見ただけでは分からなくなってしまいました。

食べると分かります。
やはり養殖鯛は脂肪分が多い。
ただ、昔の養殖もののようパサパサしておらず、けっこうきめこまかく、その上脂がのっているため、美味しかったです。
天然鯛は、養殖鯛より脂は少ないのですが、味に深みがあり、こちらも美味しかったですよ。十分、満足できました。子供達(特に、魚食いの娘)も、「美味い美味い」とご機嫌でした。

先に書いたように、値段が倍ほど違います。それをどう評価するのかが難しいですね。
「鯛のあら炊き」です。
下の方にある黄色いのは卵です。その左側の2つも卵です。これは美味しかった。

こうなると、どれが天然でどれが養殖か、さっぱり分かりません。

あら炊きでも思ったのですが、ひと昔前までは、養殖鯛のつきものだった「パサパサ」感が無くなっており、天然と比べてもそう変わらない身質になっているような気がします。
養殖も進歩してるんだなーーと思いました。

こうなると、天然鯛の半分の価格で買える養殖鯛。これは値打ちものだと思います。

天然鯛は、この価格と味に納得できるなら、決して高いものだとは思いません。

ちなみに、小売店で買うとすれば、養殖鯛は1尾1200円〜1500円ぐらい。
天然鯛は1尾2500円〜3000円ぐらいになるでしょう。(いずれも、丸のままで)
これはもう、買う人のお好み次第。買う人の価値観と財布の中身に合わせて選べばいいと思います。
しかし、養殖鯛の質が良くなりましたね。臭みも全然ないし。養殖業者さんの努力に敬意を表したいと思います。



湖南アルプスの麓から

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