フナ寿司について


フナ寿司について
「鮒寿司」というのは、私の住んでいる滋賀県(こちらでは「湖国」といいます。---琵琶湖のある国という意味)の伝統食で、琵琶湖特産の「ニゴロブナ」の子持ちのものだけを原料にして作った「ナレ寿司」の一種です。
中国大陸からの「稲作」の伝播とともに我が国に伝わり、最古の「すし」の形態を残した貴重な食品です。
琵琶湖の周辺では、「おもてなしの料理」として、お祭りや結婚式や来客時などになくてはならないものとされてきました。
昔は、多くのご家庭で「鮒寿司」を漬けていたようです。
詳しくは、サンライズ印刷出版部発行「ふなずしの謎」(滋賀の食事文化研究会編)を参照してください。

だいぶ前から、「ニゴロブナ」の漁獲が減少し、むちゃくちゃな高値になっています。
ちなみに、4〜5年前に、私が守山漁協のセリ場を見学しに行ったときには、子持ちの「ニゴロブナ」は数匹しか水揚げされておらず、セリ値はKg10000円を越えていました。
これでは安い「鮒寿司」が作れるはずがなく、琵琶湖周辺の「庶民の食べ物」であった「鮒寿司」が、「貴重品・贅沢品」になってしまっているのです。

「ニゴロブナ」が獲れない原因については、彦根の水産試験場で訪ねたときにも明確な答えがなく、推測としていくつかあげられています。

1.ブラックバスの大量繁殖によって、「ニゴロブナ」の稚魚が食べられる確率が高くなった。
昔、いっぱい湖岸堤についていた「ボテ(タナゴ)」は、今はほとんどいません。
ブラックバスによって食べられ、駆逐されたようです。

2.琵琶湖の汚染によって、繁殖がしにくくなった。
アユの養殖業者さんや加工業者さんは「南湖のコアユは弱い、汚い。」といわれています。
ちなみに、琵琶湖は、琵琶湖大橋を境にして「南湖」と「北湖」に分けています。
北湖と南湖を比較すると、人口密度の高い南湖の方が汚染はきついようです。

3.琵琶湖総合開発による湖岸の開発で、「ニゴロブナ」の産卵場が減少した。

護岸提ができ、公園ができていますが、魚にとっては決して生息環境がよくなったわけではないのです。

これらの要素が複合して「ニゴロブナ」の減少を招いてきたと思われます。(昔、ダンゴの餌で鯉釣りをしてたとき、よくフナがかかったのですが、今はほとんどかかりません。)

琵琶湖の総合的な環境の変化については、最近の漁獲状況にも現れています。
たとえば、以前は琵琶湖にはいないといわれていた「ワカサギ」が大量に漁獲されたり、活魚で出荷された「コアユ」の歩留まりが極端に低下したり(つまり「コアユ」が弱くなった。)しています。
(徳島のアユの養殖業者さんをおたずねした時、この点を指摘されました。「琵琶湖を綺麗にして、元気な「コアユ」を出荷してもらわなくては、我々養殖業者は困ります。」という事です。)

こうした状況のなかで、湖国の伝統的文化食を守りたい、子孫に伝えていきたいという事で、韓国から「フナ」を輸入して「鮒寿司」を作るということが行われています。
ただし、この取り組みには賛否両論があるようで、業者さん向けのあるアンケートによりますと、輸入フナの使用について30%の方が否定的で、25%の方が肯定的でした。
また、残りのうちの30%の方が「今後、利用を検討する。」との回答でした。

いずれにせよ、この「鮒寿司」という食べ物は湖国の文化を象徴した食べ物で、別の角度からみると日本人の大好きな「お寿司」の原型ともいえるものです。
琵琶湖の自然環境を守る取り組みを強めることで「ニゴロブナ」の生息環境を改善し、伝統食を守っていく事が重要です。
業界のところでも、「鮒寿司の生産」という伝統技術を守るために、「輸入フナ」の利用も含めて、いろんな努力をしていただきたいと思います。
(最後に、すみません、私は「鮒寿司」が食べられないのです。ごめんなさい。)

「鮒寿司」とは直接関係ないのですが、京都生協では「琵琶湖直送」の「コアユ」「わかさぎ」「瀬田しじみ」などを取り扱っています。
「瀬田しじみ」は、堅田漁協に水揚げされたものを中心に、11月〜4月までの間取り扱っています。
「コアユ」は、3月頃から7月頃まで、守山漁協に大量に水揚げがあったとき、送っていただいています。
これは、通常、市場出荷されるのより一日早く売場に並びますので、鮮度バツグンです。
「わかさぎ」は、大量に水揚げされたときだけなので、不定期です。これも、その日の朝水揚げされた「わかさぎ」を、当日午後に売場に並べます。

以上、ご紹介しました。

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