アユの「冷水病」について


                アユが弱くなっています。   1997年6月記
ここ数年、琵琶湖のアユが弱くなっています。

今津の上田養魚場のご主人は、自然に近い美味しいアユを作ろうと頑張っている人で、
私どもも、一昨年までは、ここから「アユ」をいただいていました。

一昨年にお伺いしたときにも言われていたのですが、「へい死率」が非常に高くなってきています。
上田さんは、漁師さんでもあり、自分のエリでコアユを獲ります。
これを、放流用に出荷すると、悪いときは30%くらい死ぬということです。

上記のことは2年前の話で、今年は「生きているのが30%程度」といった状況のようです。

昨年、徳島の養魚場にお伺いした時も、同様のことを言われました。この時は「琵琶湖を綺麗にしてもらわなければ困ります。」とも言われました。

なんで、このような事になってしまったのでしょうか。

「冷水病」について
病原菌 サイトファーガサイクロフィラ(冷水病菌)
症状 顎がとけて欠落。エラ蓋が赤くなったり、欠けたりする。腹部や体側に穴があく。
初期の稚魚は、エラ臓器などが退色。下顎・口の奇形。
飼育状況 飼育水温が低く、換水率も低い上、過密養殖の場合、感染しやすい。
水温15度くらいが一番感染しやすい。
対策 低密度養殖。高水温飼育と水温の安定。
この病気は、もともとは「銀鮭」の病気だという事を彦根の滋賀県水産試験場で教えてもらいました。
この時には、冷水でかかる病気なので、水温を一定に上昇させると大丈夫と教えていただいたのですが、徳島の養殖業者さんの報告では、菌が弱くなり活動を停止するだけで、死滅するわけではなく、再発するということです。
外国から入ってきた魚病で、現状では有効な対策はないようです。
とにかく、琵琶湖を綺麗にして、元気なコアユを育てることが大事でしょう。
リンク この件についての詳しい事は養殖なんでもありありページ(アユの養殖業者さんです。)まで。
リンク 宮城県内水面水産試験場のホームページにも、解説があります。(2000年9月追記)

神奈川内水試の戸井田さんにお尋ねしました。   1998年5月8日記
質問
  • 素人として気になるのは、琵琶湖のアユが冷水病の菌?を持っているなら、それを食べる人間に対する影響はないのかと言う点です。
  • 実験では、水温25℃以上では菌の発育は止まります。
    哺乳動物の場合、体温が30℃以上ありますから、魚の病原菌の影響は心配ありません。
    しかし、養殖業者が魚の治療に薬(抗生物質)を不正使用し、それが人体に蓄積した場合は困ります。
    今度、人間が病気になったとき、耐性菌の問題で薬が効かなくなる場合があります。
    最も抗生剤は高価なため、アユ等で使用する業者はいないと思いますが。
    タイやヒラメ、トラフグなど高価な海産魚は費用対効果で使う場合もあります。
質問
  • また、将来的に、琵琶湖にいるほかの魚はどうなるのかという点です。
    これらは、全く「素人の不安感」かも知れませんが、教えていただければ嬉しいです。
  • 非常に危惧されています。
    マス類をはじめ、オイカワ等のコイ科魚類も感染することが知られており、今年神奈川でも調査します。
神奈川県水産総合研究所内水面試験場へのリンク

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