金属樹をつくってみよう
目的
 金属イオンが溶けている水溶液に、それよりイオンになりやすい金属片を浸すと金属イオンが、金属樹と言われる樹枝のような金属結晶になって析出する。この金属樹をつくって観察してみる。
 
準備
器具:ビーカー(100 ml)、ガラス棒、サンドペーパー(150番程度)
薬品:2 %硝酸銀水溶液(0.1〜0.2 mol/lでもよい)、銅線(約10 cm)
・銀イオンは、還元されやすく、光(特に紫外線)が当たると銀イオンが金属銀になったりしやすいので、硝酸銀水溶液は褐色ビンに保存する。硝酸銀は、劇物である。
 
手順と留意点
@銅線の半分ほどを、サンドペーパーでみがきさびを落とす。
Aみがいた部分を鉛筆などを利用して、らせん状に巻く。
Bビーカーに2 %硝酸銀水溶液を約70 ml入れる。銅線をガラス棒に引っかけ、らせん状の部分が水溶液に浸るようにし、静置し様子を観察する。
・銅線のかわりに銅片(1 cm×2 cm程度)を糸などでつるしてもよい。この場合もサンドペーパーでよくみがいて用いる。
・ビーカーのかわりに、試験管で行ってもよい。そうすると溶液が少なくてすみ、廃液処理、省資源の意味でもよい。その場合は、18 mmφ試験管に1/3程度の溶液(約10 ml)を入れて行う。
・金属樹は、少しの振動でもはがれ落ちてしまうので、さわらないで観察する。移動する場合は、溶液が動かないように慎重にする。
・硝酸銀水溶液は、手などの皮膚や衣服などに付着するとしばらく(数分)して、黒変する。洗っても取れないので、もしついたときは、すぐに水道でよく洗い流しておくように生徒に注意しておく必要がある。黒くなった皮膚は、あかとなってはがれ落ちるまで取れない。
 
後始末
・重金属イオンである硝酸銀水溶液は、回収し廃液処理する。
・硝酸銀水溶液が残らないように、器具は水道水でよく洗い流す。机上は雑巾掛けをしっかりし、雑巾をよくすすいでおく。
 
結 果
・銅線を硝酸銀水溶液に浸すと、銅線の表面から黒いこけ状のものが出てくる、しばらくして結晶が成長してくると、銀白色の樹枝状の結晶になり、さらに成長していく。
・時間がたつと徐々に水溶液が、青色になってくる。
 
発 展
鉛樹(えんじゅ)をつくる。0.1 mol/l酢酸鉛(U)水溶液に亜鉛を浸す。
銅樹を作る。硫酸銅(U)水溶液に鉄や鉛。
・金属塩と金属の逆の組み合わせで反応しないことを確かめる。例えば、硫酸銅(U)水溶液に銀を浸してみる。
・水溶液に寒天やゼラチンを%になるように加え加熱し溶解後、冷却しゲル化したもので金属樹をつくると保存や移動ができる。ただし、硝酸銀水溶液は、寒天やゼラチンと反応し黒変してしまうのでできない。
 
補 足
 硝酸銀が、有機物に触れると黒変するのは、銀イオンが、有機物によって還元され金属銀の微粒子になるためである。
 
■参考文献
(1)盛口襄・高田博志,「いきいき化学アイデア実験」,新生出版(1990),pp.205〜207,“102 ジャンボ銅樹”,時計皿を使い直径20cmの大きな金属樹を作る方法が紹介されている。
(2)長倉三郎・武田一美監修,「新訂図解実験観察大辞典 化学」,東京書籍(1992),pp.305〜308,奥原千里,“170 銀樹、スズ樹、鉛樹を作る”,スズ樹は亜鉛−スズ電池で作る方法。寒天を用いて長く保存する方法が紹介されている。
 
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