地ぞう川とガワッパ  西彼杵郡時津町(とぎつちょう)日並郷(ひなみごう)
 国道206号線沿いの日並橋(ひなみばし)のそばに、小さな地ぞう様がたっています。この地ぞう様については、次のような話が残っています。

 そのむかし、この川にガワッパ(カッパのこと)が住んでいました。タ方ともなると、とび石づたいに渡る子どもの「じご」(しりのこと)をぬくと、村人たちからたいへん恐れられていました。

時津農協日並支所横の地蔵さま 1998/6 撮影
時津の国道206号線沿い
日並橋の地蔵さま・元禄元年(1668)開眼
寛政4年(1792)修理再建

 ある時、村の次郎右衛門(じろうえもん)という人が、ゆう気を出して、刀を腰にさし、ガワッパ退治に出かけました。しかし、その日は、ガワッパを見つけることができませんでした。

 いく日か過ぎて、満月に近いある夜、川岸の所にガワッパが現れました。次郎右衛門は、すばやく腰の刀をぬき、力いっぱい切りつけました。確かな手ごたえはあったのですが、ガワッパの姿は、川底深く消えていきました。次郎右衛門は、しばらく、ようすをみていましたが、つぎの日、来てみることにして、家に帰りました。
 ところが、その夜中、どうしたことか次郎右衛門の枕もとにガワッパが現われました。

河童・田中義人 作
河童・田中義人 作陶

 ガワッパは、
「今まで人間に化けて悪いことをしていました。どうか許してください。」  とあやまり、
「川のそばに地ぞうをたててくだされば、地ぞうがある間は、二度と子どものじごはぬきません。」  と約束したそうです。

 次郎右衛門は、この夜のできごとを村人たちに話しました。村人たちは話し合って地ぞう様をたてました。

 このこと以来、ガワッパの姿を見る人もいなくなり、この川を地蔵川と呼ぶようになりました。

<時津町郷土誌 時津町教育委員会 郷土誌編集委員会 昭和54年5月発行より>
<ふるさと散歩 とぎつ 時津郷土研究会 時津町教育委員会 平成3年8月発行より>


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