NPO法人妙見山麓遺跡調査会
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 山里日記

令和3年秋

 九月の末。お天気良い日でした。午後、おばあさんはサツマイモ掘りをしました。
今年のサツマイモは例年に無く出來が良く、行儀良く並んでいて掘りやすく、一人で掘るのは
ちょっと残念に思いました。 それで、近くを通る人がいたら声を掛けようと思ったのですが誰一人
通りません。とうとう一人で掘り揚げてしまいました。家に持って帰り、冬に備えようと土間に広げて乾かしました。
 その次の日のことです。納屋でかじりかけのサツマイモを見つけました。サツマイモの周りには
かじり滓が散乱していました。納屋は土間から15㎝ぐらいの高さに板が張ってあり、サツマイモが
転がっていたのは、その張り床のすぐ下です。広げたサツマイモからは3メートルばかりあります。
 それを見たおばあさんは腹が立つやら残念やらで大騒ぎをしました。しかしながらしばらくして落ち着くと、
「土間から張り床の上にもって上がれなかったんだ。」と思うと、なんだかかわいそうな、微笑ましい気持ちになりました。
 それで、その日一日はそのままにしておきました。お腹がすいたら続きを食べに来るのでは無いかと思ったからです。
ところが夕方まで何の変化もありません。「食べかけは食べないんだな。」と思いましたが片付けるのは明日にしようと
放っておきました。
 その次の朝、サツマイモはどこにもありません。干からびたかじり滓が散らばっているだけでした。納屋の床下にも、
雑多なもので散らかった床の上にも見当たりません。
  「一体どこへ持って行ったんだろう。床の上にはどうやって持ち上げたんだろう。」「誰か、友達?奥さん?に手伝って
もらったのかしら。それとも土間を引き返してもっと違う処へ?」見つかりません。
 片付けられない症候群のおばあさんは、これからはもう少し片付けることにしようと思いました。
 それから一週間ほど経った朝、庭で体長10㎝ぐらいのネズミが死んでいました。チュウ太では無いかと思いましたが
分かりません。我が家のプー太郎も触りません。その日は夕方だったので翌日片付けました。
 今、おばあさんの悩みの一つは、納屋にねずみ取りを置こうかどうしようか、ということです。チュウ太がひっかっかたら
かわいそうだし、プー太郎が獲物と思い触ってくっついても大変だし、悩んでいます。
 山里の秋は、一日一日、日暮れが早くなります。


令和4年春

 カレンダーを一枚めくると3月。急に春になったような気がしますが、春はまだまだ。それでもおばあさんの心は夏野菜の事に
飛んでいます。今年の夏は何を作ろうかな、去年は種まきに失敗してトマトも茄子もピーマンも、何もかも不作でした。
 今年こそはと慎重に種まきの準備を始めます。少し暖かくなった中頃に色々の野菜の種をまきました。
水やりに、草引きに大忙しの毎日が始まりました。
 ところがプーちゃんときたら冷蔵庫の上で寝てばかり。時々椅子に腰掛けているおばあさんの膝に乗ってきます。お兄ちゃん猫が
亡くなってからは、とても甘えてきます。食事の時間には必ず帰ってきて、おばあさんの膝に乗ります。座ってばかりいるわけには
いきませんので、プーちゃん用に椅子を用意しました。
 4月、5月。野菜の種が芽を出し、少しずつ大きくなり、忙しくなりました。
 イチゴの上に鳥避けに網を張りました。そうしたら次の日、網の中でヒヨが飛び交っていました。きっと様子を見に来たのでしょう。
おばあさんは大慌てでヒヨを追い出します。網のおかげでイチゴは真っ赤になり始めました。
 朝、おばあさんはかごを持って、勇んでイチゴ狩りに出掛けました。ところがどうしたことでしょう。真っ赤なイチゴは一つもありません。
アライグマがやってきたのです。網の下の隙間から、入ってきて食べていったのです。イチゴはアライグマの好物だそうです。
こんな調子でスモモも食べられてしまいました。トウモロコシは鳩が、トマトは雉が。おばあさんの畑は野生動物園です。 他にもいます。
狸、狐、ハクビシン、アナグマ。カラスやサギはトラクターのお供をします。カラスは尾羽をヒョイヒョイと振って、サギは長い首で地面
を突っつきながら、トラクターの周りをうろうろします。
 季節は少しずつ夏へと向かいます。



   

    
サツマイモ掘り


    昨年の芋は、とても大きなものが多くて、お芋掘りは楽しいのですけれど、
   調理にちょっと大変です。細目の焼き芋にしたいようなものは少なくて、
   丸っこいごつごつした大きなものばかり。掘るのはとても大変でした。

   昨年初めて近所の幼稚園児をお芋掘りに招待しました。
   というのは表向き。
   一人で掘るのがしんどくなってきて、手伝ってもらいました。
   彼も喜んだけど、ママは大変でした。スマホを構えて写真撮影に大忙し。
   バケツ2杯に山盛りのサツマイモを持って意気揚々と引き上げました。

    それから一週間ほどして、おばあさん友達が応援に駆けつけてくれました。
   ピクニックです。お弁当やお茶、おやつまで用意して、シートを広げて先ず腹ごしらえ。
   毎年の恒例となっています。大いに助かりました。
 








古い道具(農業機械)を動かしてみよう 

 民俗資料、主に農業関係の道具を預かることになりました。使い方のわからないもの、壊れたものなどがあります。
 使ってようとおもいます。使い方や直し方を教えてください。
 昨年末、足踏み脱穀機で黒豆を脱穀しました。体力がなくなりこれが最後となりました。
 その後、唐箕を使って選別します。黒豆の出來は上々でした。
 見るだけではおもしろくも何ともありません、触ってみなくては、動かしてみなくては、使ってみなくちゃ-。 
   

 

 米作り、今度こそ諦めました。30キロの袋が持てません。自家消費分ぐらいはと再開した米作りでしたが、令和2年秋の収穫を最後とすることにしました。
  黒豆も手に負えなくなり、自家消費分と、枝豆として友人に送る分だけにしました。
 体力のなさは年ごとに思い知らされます。
 
 米や黒豆を植えないとすると何を作れば良いか。
 とうとう、管理を他人に任せることにしました。耕作放棄地にするよりはと決断しました。
 
 日本中の山間部では、人出が不足して、耕作放棄地が増えています。この多可町でも同様です。空き家も増えています。
 コロナ禍の中で、地方への移住という新しい生活スタイルも生まれてきましたが、そう簡単にすべてが解決することはないでしょう。
 
 単なる趣味の一つとしての野菜作りだけでは何も解決しないことは判っていても、何とかなればと思います。友人達にしてもわずかな野菜だけのために遠方から一日掛けて取りに来るほど暇ではないでしょう。
 
 やはり野菜作りは年寄りの趣味の範囲でしかないのでしょうか。それほどたくさんの種類や量を作っているわけではありませんが、お近くを訪ねられたら是非お立ち寄り下さい。土に触れて、何かを感じて下さい。

 

 希望者があれば、足踏み脱穀機と唐箕でワイワイやってもいいかもしれません。
でも、エコは体力が必要ですよ。

     



〒679-1214
兵庫県多可郡多可町加美区的場391
神崎勝・惠子
TEL/FAX 0795-35-0555
Eメール npo-mic@zeus.eonet.ne.jp
URL http://www.eonet.ne.jp/~myouken-iseki

  
 耕作放棄地が増えています。放棄して1年目は一年草の雑草が生い茂り、2年目3年目になるとトラクターでは耕せなくなります。一年間耕作を休むと次の年は真っ新から始めなくてはなりません。地力がなくなり、何よりも耕作に対する意欲が失われます。まさに「継続こそ力なり」、です。
 耕作放棄地にしないために体力が続く限り頑張っていこうと思います。
今年はフォックスフェイスがよく出来ました。
狐そっくりです。上手く言ったものです。

 百姓はしんどい、でも同じしんどいのなら面白いのが良いといろいろ作ってます。


 猫もお花見に!  春の田んぼ、水田  



雉もやってきました   豌豆の支柱  
 山に木がなくなり、手入れを怠ると洪水に繋がります。水田も雨の多い時期にはダムの役目を果たします。
 アスファルトやコンクリートの道は歩きやすく埃も立ちにくいでしょうが、地温や気温が上がったり、水が浸み込まないので川のようになります。
 私たちの住む町でも農道が舗装されています。自動車や農業用の機械が増えたからでしょう。舗装された道は走りやすく、手入れも不要です。
 土の道にすると手入れが大変だからでしょう。 若い人たちが減って、道普請が重荷になってきているのです。
 「スローライフ」や「環境を守る」ということは口では言えても実行することは、どんなに大変なことか。
 直売所に来るお客さんのなかにも、農作業の経験のない人たちは、土地があれば何もしなくても野菜や米は出来るものと思っている人がいるようです。
 交流事業などもありますが、農作業でも初めから最後までではなく、「良いとこ取り」ではもう一つと思うことがあります。無理は承知ですが。
 「スローライフ」は今の私たちの生活には合わなくなってきているのでしょうか?
 「環境を守る」、より経済が優先するのでしょうか?
 せめて10年、20年先を考えて行動を起こさなくてはと思います。