━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MikoVoice の使い方( 音声記号の説明 ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目次 1.簡単な発声 2.発声の高低を変えるには 3.発声の速度を変えるには 4.発声の強弱(声の大きさ)を変えるには 5.歌を歌わせるには 6.その他の基本記号 7.マルチトラック 8.音高基準の設定 9.音量基準の設定 10.まとめ ──────────────────────────────────────── 1.簡単な発声 MikoVoice にどのように発声させるかは、文字列で指定します。その文字列には まず「かな」が使えます。「かな」は、そのとおりに発声されます。例えば、 はじめまして と指定すると、「はじめまして」と発声されます。 「かな」には、カタカナや、長音の「ー」、促音の「っ」も使えます。また、 「、」「。」等の句読点も使えます。句読点は無音区間になります。 助詞の「は」は、そのままだと「は」と発音されるので、「わ」に変える必要が あります。例えば、「こんにちは」は、 こんにちわ にします。 助詞の「へ」も、そのままだと「へ」と発音されるので、「え」に変えます。 助詞の「を」は、特に変える必要はありません。 「う」を長音で発音する場合、そのままだと「う」と発音されるので、「ー」に 変える必要があります。例えば、「おはよう」は、 おはよー とします。 「い」を長音で発音する場合も、「ー」に変えます。例えば、「せんせい」は、 せんせー にします。そのほか、 「あ」を長音にする場合(例:おかあさん → おかーさん)も、 「え」を長音にする場合(例:ねえさん → ねーさん)も、 「お」を長音にする場合(例:とおる → とーる)も、同様です。 以上のように、「かな」と句読点だけでも、簡単に発声させることができます。 ただ、この場合、声の高低、速度、強弱が一定のいわゆる棒読みになります。 ──────────────────────────────────────── 2.発声の高低を変えるには 1つの「かな」の発声を1段高くするには、その「かな」の前に半角の「^」を付け ます。例えば、 ^はる、な^つ、^あき、ふ^ゆ り^ん^ご、^みかん、か^き、^バナナ、も^も、ぶ^ど^ー、^トマト のようにとします。これで、各単語の発音は、標準語のアクセントになります。 ある範囲を1段高く発声させるには、その範囲を半角の「[」と「]」で囲います。 例えば、次のようにします。 は[じめま]して、よ[ろしく]、お[ねがいしま]す。 日本語の標準語のアクセントは、基本的に、声の高低差で表現します。そして、 その高低差は1段だけで、しかも、1つの「かな」の途中で高低が変化することは ありません。そのため、上記の記号だけで対応可能です。 疑問文では、語尾を上げて発音します。「かな」列の末尾に「?」を付けると、 疑問文のイントネーションになります。例えば、 い^かがですか? よ[ろしー]ですか? となります。 ある範囲の高低を連続的に変えるには、「P..」の指定( P は Pitch の意 )を 使います。その際、その範囲を「P..」と「P..」で囲います。その囲いの始まり の「P..」には、その範囲の開始音程を指定し、その終わりの「P..」には、その 範囲の最終音程を指定します。 「P..」の .. には、その音程を示す数値を入れます。この値は、0 で基準の音程に、 正値でその段数だけ高い音程に、負値でその段数だけ低い音程になります。 「P..」を使った例を、次に示します。 P1 ^はい、[そー]です。P0 この場合、通常よりも1段高い音程から始まり、以降だんだん音程が低くなって、 最後は通常の音程になります。なお、「は」と「そー」のところで1段音程が高く なっていますが、全体としては両方の音程を重ねた音程になります。 関西のアクセントは、標準語よりもやや複雑で、前記の ^ [ ] の記号だけでは表わし きれないので、「P..」の記号を使う必要があります。例えば、「今日は暑いなあ」を 関西のアクセントで発音するには、 P0 きょーわ、P-1 P0 ^あつい^なー P0 のようにします。 「かな」列の前に「P..」の指定が無い場合、「P0」で始まると解釈されます。また、 「かな」列の末尾以降に、「P..」の指定が無い場合、その前の「P..」の指定がその まま最後まで続くと解釈されます。上例では、 きょーわ、P-1 P0 ^あつい^なー としても同じです。 次に、1つの「かな」だけの音程を変える場合ですが、これには、「p..」の指定 ( p は小文字)を使います。この指定を「かな」の前に置くと、その「かな」だけ の音程が変わります。この「p..」の .. の数値は、「P..」の場合と同じです。 「p..」の指定は、「^」を付ける場合と比べると、面倒ですが、音程を任意の高さ (低さ)に変えることができます。 ところで、「^」は複数個付けることができます。その場合、その個数の段数だけ 音程が高くなります。 「[」と「]」の囲いは、入れ子にできます。また、「]」と「[」で囲こめば、その 範囲の音程を1段低くすることもできます。この場合も、入れ子にできます。 なお、「^」、「[」と「]」の1段の音高差は、任意に変更できます。この詳細は、 後で説明します。 ──────────────────────────────────────── 3.発声の速度を変えるには 発声の速度の指定には、「*Te..」「S..」「s..」という3種の記号があります。 いずれの場合も、.. のところには、数値が入ります。 「*Te..」の Te は Tempo の略で、1分間に発声する「かな」の数を指定します。 例えば、「*Te400」では、1分間に 400 字を読み上げる速度になります。 次の例は、1分間に 600 字の速度で「東京特許許可局」と発声します。 *Te600 と[ーきょー] ^とっきょ きょ^か^きょく ちなみに、人間では、この速度で言える人は少ないのではないでしょうか。 「*Te..」の指定が無い場合、標準で「*Te300」の速さになります。 「*Te..」の指定は、途中で変えても構いません。1つの「*Te..」は、次の「*Te..」 の直前まで有効です。 「S..」の指定( S は Speed または Span の意 )は、ある範囲の速度を連続的に 変えるときに使います。その際、その対象範囲を「S..」と「S..」で囲います。その 囲いの始まりの「S..」には、その範囲の開始速度を指定し、その終りの「S..」には、 その範囲の最終速度を指定します。 「S..」の .. には、その速度を示す数値を入れます。この値は、具体的には1つの 「かな」が発声される時間長の割合になります。この割合では、4 を基準値にして います。つまり、「S4」のときに、「*Te..」で規定されている速度になります。 なお、基準値を 4 にしたのは、歌を歌う時の速度の基準を 4分音符にしたことと 関連しています。(後述参照) 「S..」の .. の数値が 4 以外の場合、その値を 4 で割った値が、その時間長の 割合になります。例えば、「S2」では、2÷4 で、基準の時間長の半分になります。 同様に、「S6」は基準の 1.5 倍に、「S4/3」は基準の3分の1になります。 .. の数値は、整数だけでなく、実数でも、分数でも構いません。これは、「S..」 以外の .. の場合も同じです。但し、「S..」の場合は、その定義上、0 や負値は 指定できません。 「S..」を使った例を、次に示します。 S3 い^かが S4 ですか? S4 この場合、「いかが」の部分の速度は「S3」から「S4」に連続的に変わって、 「ですか?」の部分は、「S4」の一定速度になります。 「かな」列の前に「S..」の指定が無い場合、「S4」で始まると解釈されます。また、 「かな」列の末尾以降に「S..」の指定が無い場合、その前の「S..」の指定がそのまま 最後まで続くと解釈されます。上記の例では、末尾の「S4」の指定がなくても同じです。 「S..」と「P..」の指定は、長音の「ー」にも使えます、次にその例を示します。 はい S4/6 ーーーーーーー P2 ーーー P6 ここでは、「い」を伸ばす「ー」の長さを「S4/6」と指定しているので、通常の長さ の 1/6 になります。それを 7+3 回続けますが、最初の 7回の音程は、P0 から P2 まで変わり、最後の 3回の音程は、P2 から P6 まで変わります。 最後に、「s..」の指定( s は小文字)ですが、これは、その直後の「かな」だけの 発声速度を変えるときに使います。この .. の数値は、「S..」の場合と同じです。 ──────────────────────────────────────── 4.発声の強弱(声の大きさ)を変えるには 1つの「かな」の発声を1段強く(大きく)するには、その「かな」の前に半角の「~」 を付けます。この「~」は複数個付けても構いません。その場合、その個数の段数だけ 強く(大きく)なります。 ある範囲の発声を1段強く(大きく)するには、その範囲を半角の「<」と「>」で 囲います。この囲いは、入れ子にすることができます。ある範囲の発声を1段弱く (小さく)するには、その範囲を半角の「>」と「<」で囲います。この囲いもまた、 入れ子にすることができます。 ある範囲の声の強弱(大きさ)を連続的に変えるには、「V..」の指定を使います ( V は Volume の意 )。その際、その範囲を「V..」と「V..」で囲います。その 囲いの始まりの「V..」には、その範囲の開始強度を指定し、その終りの「V..」には、 その範囲の最終強度を指定します。「V..」の .. には、その強度を示す数値を入れ ます。この値は、0 で通常の強度に、正値でその段数だけ強く(大きい声に)、 負値でその段数だけ弱く(小さく声に)なります。 「V..」の指定が、「かな」列の前に無い場合、「V0」で始まると解釈されます。 また、「かな」列の末尾以降に、「V..」の指定が無い場合、その前の「V..」の 指定がそのまま最後まで続くと解釈されます。 「v..」の指定( v は小文字)は、その直後の「かな」だけの発声強度(声の大きさ) を変えます。この .. の数値は、「V..」の場合と同じです。 なお、「~」、「<」と「>」、「V..」と「v..」の1段の音量差や、「V0」と「v0」 の基準音量は、任意に変更できます。これについては、後で説明します。 ──────────────────────────────────────── 5.歌を歌わせるには 音符を示す記号を「かな」の前に付けると、その「かな」はその音符の高さと長さで 発声されます。発声の強弱(声の大きさ)は、前記の「V..」と「v..」の指定を使い ます。 中央の「 ド レ ミ ファ ソ ラ シ 」の高さは、それぞれ、「 c d e f g a b 」で 表わします。この直後に、「#」を付けると半音高い音になり、「%」を付けると半音 低い音になります。また、この直前に「+」を付けると1オクターブ高い音になり、 「-」を付けると1オクターブ低い音になります。2オクターブ高い音は「++」を付け、 2オクターブ低い音は「--」を付けます。 音符の長さは、音符の高さの記号の直後に数値で示します。この数値は、基本的に、 前記の「S..」と「s..」の指定で使う数値と同じです。この数値の基準値は 4 です が、音符の場合、それは 4分音符に対応しています。従って、8分音符の長さは 2 に なり、2 分音符の長さは 8 になります。また、符点 4分音符の長さは 6 になり、 4分音符を 3等分した連符の1つあたりの長さは、4/3 になります。 今までに述べた記号を使って、例えば、「ドレミファソラシド」と音階を 4分音符で 発声するのは、次のようになります。 c4 ド d4 レ e4 ミ f4 ファ g4 ソ a4 ラ b4 シ +c4 ド 終止符は「r..」で示します。この .. に入れる数値は、音符の長さの場合と同じです。 例えば、4 分休符は「r4」に、8分休符は「r2」に、2 分休符は「r8」に、全休符は 「r16」になります。 曲のテンポは、前記の「*Te..」で指定します。この .. の数値の意味は既に述べた 通りですが、音楽的には、1分間に 4 分音符が何回あるかを示す値と解釈できます。 曲の調号は、「*Ks..」で示します。Ks は、Key Signature の略です。この .. には、 何調かを示す値を入れます。正値は調号に使われる # の数を、負値は ♭の数を 指定します。例えば、ト長調とホ短調は「*Ks1」に、ヘ長調とニ短調は「*Ks-1」に、 ニ長調とロ短調は「*Ks2」になります。なお、ハ長調とイ短調は「*Ks0」になります。 「*Ks..」の指定をしておけば、その調で必要な半音の上げ下げの位置を特に気にする ことなく、音符の記号を書いていけます。また、内部的にも、「*Ks..」の指定以降、 歌を歌うモードになります。 いずれにしても、歌を歌わせるときは、必ず最初に「*Ks..」の指定をします。また、 「*Te..」の指定も最初に必要です。 以上説明した記号を使えば、ほとんどの日本語の歌は歌えます。 最初の例として、比較的簡単な「春の小川(作詞 高野辰之、作曲 岡野貞一)」を 示します。 *Te110 *Ks0 e4 は g4 ー a4 る g4 の e4 お g4 が +c4 わ +c4 わ a4 さ a4 ら g4 さ e4 ら c4 い d4 く e4 よ r4 e4 き g4 ー a4 し g4 の e4 す g4 み +c4 れ +c4 や a4 れ a4 ん g4 げ e4 の d4 は e4 な c4 に r4 d4 す e4 ー d4 が g4 た a4 や a4 さ g4 し a4 く +c4 い +c4 ろ b4 う a4 つ g4 く g4 し e4 く r4 e4 さ g4 ー a4 い g4 て e4 い g4 る +c4 ね +c4 と a4 さ a4 さ g4 や e4 き d4 な e4 が c4 ら r4 次の例は、「蛍の光(作詞 稲垣千穎、スコットランド民謡)」です。 *Te100 *Ks+1 d4 ほ g6 た g2 る g4 の b4 ひ a6 か g2 ー a4 り b4 ま g4 ど g4 の b4 ゆ +d4 ー +e12 き +e4 ふ +d6 み b2 よ b4 む g4 つ a6 き g2 ー a4 ひ b4 か g6 さ e2 ね e4 つ d4 ー g8 つ r4 V+1 +e4 い +d6 つ b2 し b4 か g4 と a6 し g2 ー a4 も +e4 す +d6 ぎ b2 ー b4 の +d4 と +e12 を +e4 あ +d6 け b2 て b4 ぞ g4 け a6 さ g2 ー a4 わ b4 わ g6 か e2 れ e4 ゆ d4 ー g8 く V+1 ──────────────────────────────────────── 6.その他の基本記号 無音区間は、全角の「。」「、」(既述)と、半角の「.」「,」「/」で指定します。 その長さは、それぞれ、休符の「r8」「r4」「r3」「r2」「r1」に相当します。これ 以外の長さの無音区間は、「r..」で指定できます。 コメントは、半角の「!」から改行までの間に書きます。コメントの部分は、すべて 無視されます。 半角の空白、タブ、全角の空白、改行コードは、無視されます。 「かな」と「かな」をなめらかにつなげて発声させるには、その間に半角の「&」を 入れます。一方、「かな」と「かな」をはっきり区切って発声させるには、その間に 半角の「|」を入れます。例えば、「青い」では、 あ&^お&い。 あ|^お|い。 となります。この違いは、割とはっきり分かります。しかし、「かな」の組み合せに よっては、違いが分かりにくい、あるいは、全く分からない場合もあります。例えば、 「白い」では、次のようになりますが、その違いは微妙です。 し&^ろ&い。 し|^ろ|い。 「話す」ときと「歌う」ときでは、モードを切り換える必要があります。 「話す」モードにするには、「*Sp」を指定します。( Sp は Speak の略 ) 「歌う」モードにするには、「*Si」を指定します。( Si は Sing の略 ) 「*Sp」も「*Si」も指定されていないときは、「話す」モードになっています。 「*Ks..」が指定されると、「*Si」の指定がなくても、「歌う」モードになります。 「話す」モードには、「*Sp0」と「*Sp1」の2種類があります。 「*Sp0」では、聞き取り易さを優先します。そのため、指定されている発声速度より 遅くなる場合があります。 「*Sp1」では、聞き取り易さよりも、指定された発声速度を守ることを優先します。 そのため、発声速度を上げるほど、聞き取り難くなります。 「*Sp」は、「*Sp0」と同じです。 「*Sp0」と「*Sp1」の違いは、例えば、次の早口言葉を聞き比べると分かります。 *Te900 *Sp0 と^な^りのきゃ^くわ、^よくか^き^くうきゃ^くだ。 *Sp1 と^な^りのきゃ^くわ、^よくか^き^くうきゃ^くだ。 ちなみに、この例で、発声速度を「*Te400」ぐらいまで遅くすると、違いは分からなく なります。 ──────────────────────────────────────── 7.マルチトラック MikoVoice では、複数の発声を重ねて出力することができます。1つの発声は1つの トラックに指定します。そして、このトラックが複数使えます。 トラックの切換は、「*Tr..」という記号で指定します。この「..」にはトラック番号 の数値( 0 〜 15 )を入れます。例えば、「*Tr2」は、トラック2に切り換えます。 複数のトラック(マルチトラック)を使えば、和音を発声することができます。次は 「ドミソ」の和音を発声する例です。 *Te50 *Ks0 *Tr0 c8 ド *Tr1 r2 e6 ミ *Tr2 r2 r2 g4 ソ ここでは、ドミソを同時に発声するのではなく、少し時間差をつけて発声しています。 複数のトラックを使えば、斉唱(同じ旋律を2人以上の歌手が歌うこと)もできます。 但し、音声合成では、全く同じ旋律を同じ声で複数重ねても、単に声が大きくなるだけ なので、少し工夫が必要です。例えば、各トラックで音程を少しだけ変えるのも1つの 方法です。また、声質(後述参照)を変える方法もあります。 次は、「仰げば尊し(作詞・作曲者不詳)」の最初の部分を斉唱した例です。ここでは、 2トラック間に、0.1 の音程差と 3 段の音量差をつけています。独唱の場合と比べると、 響きが違いますが、あくまで同じ声の2人の斉唱です。 *Te80 *Ks-3 *Tr0 V+1 P0 g2 あ g4 お a2 げ b4 ば b2 と +c4 お +c2 と b4 し *Tr1 V-2 P0.1 g2 あ g4 お a2 げ b4 ば b2 と +c4 お +c2 と b4 し *Tr0 V+1 P0 g2 わ f4 が g2 し a4 の +c2 お b8 ん r2 *Tr1 V-2 P0.1 g2 わ f4 が g2 し a4 の +c2 お b8 ん r2 また、複数のトラックを使えば、輪唱、コーラス、エコーなどもできます。次は、 「さくらさくら(日本古謡)」の最初の部分にエコーをかけた例です。 *Te75 *Ks0 *Tr0 V+1 a4 さ a4 く b8 ら a4 さ a4 く b8 ら a4 の b4 や +c4 ま b4 も a4 さ b2 と a2 ー f8 も e4 み c4 わ e4 た f4 す e4 か e2 ぎ c2 ー -b8 り *Tr1 V-1 r0.75 a4 さ a4 く b8 ら a4 さ a4 く b8 ら a4 の b4 や +c4 ま b4 も a4 さ b2 と a2 ー f8 も e4 み c4 わ e4 た f4 す e4 か e2 ぎ c2 ー -b8 り ここでは、2トラック間に、150 ミリ秒の時間差と 2 段の音量差をつけています。 これで広いホールで聞いているような残響感が得られます。なお、この時間差の計算 ですが、第2トラックを r0.75 だけ遅延させているので、*Te75 のテンポの時には、 r4 は 800 ミリ秒ですので、r0.75 の遅延は 800÷4×0.75 = 150 ミリ秒の時間差に なります。 マルチトラックでは、各指定の適用範囲を意識しておく必要があります。 「*」で始まる指定(例えば、*Te *Ks など)は、全トラックで共通に適用されます。 つまり、これらの指定は、トラックが切り換わっても有効です。 「*」の無い指定(例えば、P.. V.. ^ [ ] など)は、現トラックにのみ適用されます。 つまり、これらの指定は、各トラックで個別になります。例えば、トラック1で「V1」 を指定しても、トラック2では、その「V1」の指定とは無関係です。 ──────────────────────────────────────── 8.音高基準の設定 発声の高低は、前述のように、「^」「[」「]」「P..」「p..」や音符の記号で指定し ますが、これらに関連した音高の基準設定等について、ここで説明します。 「*Pa..」( Pitch for Accent の意)は、「^」1つあたりの音高差を設定します。 ここで .. に入れる数値の単位は、半音になります。半音というのは、音楽の用語で、 音符に♯が付くと半音上げ、♭が付くと半音下げますが、あの半音のことです。なお、 「*Pa..」の指定が無いときは、「*Pa1.5」になります。 「*Pi..」( Pitch for Inflection の意)は、「[」「]」1つあたりの音高差を設定 します。ここで .. に入れる数値の単位も、半音です。なお、「*Pi..」の指定が無い ときは、「*Pi1.5」になります。 なお、「P..」と「p..」の1段の音高差、つまり、この .. の数値の単位も半音です。 これは、特に変更する必要がないので、変更できるようにはなっていません。 「*Pk..」( Pitch for Key の意)は、歌を歌うときの調(キー)のシフト量を設定 します。これを使えば、音符の記号はそのままで、調(キー)を簡単に変えられます。 ここで .. に入れる数値の単位は、半音です。この値が正のときは調(キー)を上げ、 負のときは調(キー)を下げます。 例えば、音符の記号で「c」は、「*Pk..」の指定が無ければ、中央のドの高さですが、 「*Pk+3」を指定すると、中央のドよりも 3 半音高くなります。また、「*Pk-2」では、 2 半音低くなります。 なお、「*Pk..」の設定は、話すときの音高にも影響します。例えば、「こんにちわ」 と話す音高は、「*Pk..」の指定が無ければ、その声の音源の基準音高になりますが、 「*Pk+2」を指定すると、それよりも 2 半音高くなります。 「*Po..」( Pitch Origin の意)は、発声の基準音高を設定します。上記の「*Pa..」 「*Pi..」「*Pk..」の設定は、どれも相対的な音高の設定でしたが、この「*Po..」の 設定は、絶対的な音高の設定になります。 さて、「*Po..」の .. の数値には、MIDI( Musical Instrument Digital Interface ) のノートナンバーを入れます。これは言わば、ピアノの各鍵に対応する番号で、中央の ド(C4)が 60 になり、以降、半音高くなるごとに 1 ずつ増え、半音低くなるごとに 1 ずつ減ります。 例えば、「こんにちわ」と話す音高は、「*Po60」と設定しておくと、中央のド(C4) の高さになり、「*Po64」と設定しておくと、中央のミ(E4)の高さになります。 なお、「*Po..」の指定が無ければ、発声の基準音高は、音源の基準音高になります。 また、「*Po0」としても、音源の基準音高になります。ちなみに、現バージョンの 音源(「和音マコ」さんの音源)の場合、基準音高は、「*Po65」になっています。 この場合、「*Po0」は「*Po65」と同じ結果になります。 歌うときにも「*Po..」の設定は、影響します。これには注意が必要です。例えば、 「 c4 ド d4 レ e4 ミ」と歌う場合、「*Po..」の指定が無いときは、通常の高さ になりますが、「*Po62」に設定したときには、通常よりも、3 半音低くなります。 それは、現音源では「*Po65」が通常なので、「*Po62」はそれより 3 半音低いから です。 「*Pg..」( Pitch for Gender の意)の設定は、声の性質を、子供〜女性〜男性に 変えることができます。この .. に入れる数値が、0 のとき、音源本来の声になり、 この値が大きい程、子供ぽい声になり、この値が小さい程、男性ぽい声になります。 この値の有効範囲は、-12 〜 +12 です。 声の性質を変えて話す例を、次に示します。なお、ここでは、子供ぽい声のときは、 キーを少し上げて、男性ぽい声のときは、キーを少し下げています。 *Pg+3 *Pk+3 お[はよー]。 ! 子供ぽい声 *Pg0 *Pk0 こ[んにちわ]。 ! 女性(音源本来の声) *Pg-8 *Pk-3 こ[んばんわ]。 ! 男性ぽい声 次は、子供が「シャボン玉(作詞 野口雨情、作曲 中山晋平)」の歌を歌う例です。 *Pg+4.5 *Te60 *Ks-3 -b2 しゃ e1 ぼ e1 ん e2 だ f2 ま g2 と b2 ん b2 だ r2 +c2 や a2 ね +e2 ま +c2 で b2 と +c2 ん b2 だ r2 g2 や g2 ね f2 ま e2 で f2 と b2 ん b2 で r2 +c2 こ +c2 わ b2 れ e2 て g2 き f2 え e2 た r2 +e3 か +e1 ぜ +e2 か +e2 ぜ +e2 ふ +c2 く b2 な r2 e2 しゃ f1 ぼ f1 ん g2 だ b2 ま g2 と f2 ば e2 そ r2 ──────────────────────────────────────── 9.音量基準の設定 発声の音量は、前述のように、「~」「<」「>」「V..」「v..」の指定で変えることが できますが、これらに関連した音量の基準設定等について、ここで説明します。 音量は、0(最小)〜 100(最大)の範囲 で規定します。 「*Vo..」( Volume Origin の意)は、発声の基準音量を設定します。この設定がされ ていないときは、「*Vo50」になっています。 「*Vs..」( Volume Scale の意)は、「V..」と「v..」の1段の音量差を設定します。 例えば、「*Vo60 *Vs12」と設定した場合、「V0」「V1」「V-1.5」の音量は、それぞれ、 60, 72(=60+12), 42(=60−12×1.5)になります。なお、「*Vs..」の設定がされ ていないときは、「*Vs10」になっています。 「*Va..」( Volume for Accent の意)は、「~」1つあたりの音量差を設定します。 例えば、「*Vo60 *Va10」と設定した場合、「~」の付いた「かな」が発声されるときの 音量は、70(=60+10)になります。「~~」では、80(=60+10+10)になります。 なお、「*Va..」の設定がされていないときは、「*Va15」になっています。 「*Vi..」( Volume for Inflection の意)は、「<」「>」1つあたりの音量差を設定 します。例えば、「*Vi20」と設定した場合、「<」以降の音量はそれ以前よりも、20 だけ大きい音量になり、「>」以降の音量はそれ以前よりも、20 だけ小さい音量になり ます。なお、「*Vi..」の設定がされていないときは、「*Vi15」になっています。 ちなみに、「*Vo..」「*Vs..」「*Va..」「*Vi..」の音量基準の設定と「~」「<」「>」 「V..」「v..」の指定をどのようにしても、発声音量は、上記の範囲( 0 〜 100 )内 になるように、その最小最大でカットされます。 「*Vf..」( Volume Vibrato Frequency の意)は、ビブラートの周波数(単位:Hz) を設定します。これを設定すれば、発声にその周波数のビブラートがかかります。なお、 ビブラートには、音量の揺れと音高の揺れの二種類がありますが、「*Vf..」は前者の 方です。ビブラートを解除するには、「*Vf0」を設定します。 ビブラートの簡単な例を、以下に示します。 こ[んにち *Vf5 わーーーー] この場合、最後に伸ばすところの音量が 5 Hz で揺れる発声になります。 次は、5.5 Hz のビブラートを全体にかけて「さくらさくら(日本古謡)」を歌う例です。 *Vf5.5 *Te72 *Ks0 a4 さ a4 く b8 ら a4 さ a4 く b8 ら a4 の b4 や +c4 ま b4 も a4 さ b2 と a2 ー f8 も e4 み c4 わ e4 た f4 す e4 か e2 ぎ c2 ー -b8 り a4 か b4 す +c4 み b4 か a4 く b2 も a2 ー f8 か e4 あ c4 さ e4 ひ f4 に e4 に e2 お c2 ー -b8 う a4 さ a4 く b8 ら a4 さ a4 く b8 ら e4 は f4 な b2 ざ a2 ー f4 か e12 り r4 ──────────────────────────────────────── 10.まとめ A.基準設定(全トラックで共通) (1) 基本基準 *Sp 歌声モード( *Sp0 と同じ ) *Sp0 話声モード(聞き取り易く) *Sp1 話声モード(テンポを正確に) *Si 歌声モード *Tr.. トラック指定 *Te.. テンポ(1分間に発声する音節数 or 4分音符の個数) *Ks.. 調号( 正値:♯の数、負値:♭の数 ) (2) 音高基準 *Po.. 基準音高( MIDI ノートナンバーで指定 ) *Pa.. ^ 1つあたりの音高差(単位: 半音) *Pi.. [ ] 1つあたりの音高差(単位:半音) *Pg.. 声の性質( 子供〜女性〜男性 ) *Pk.. 調(キー)のシフト量(単位:半音) (3) 音量基準 *Vo.. 基準音量( 0 〜 100 ) *Vs.. V.. の1段階の音量差 *Va.. ~ 1つあたりの音量差 *Vi.. < > 1つあたりの音量差 *Vf.. ビブラート周波数 [Hz] B.抑揚指定(各トラックで個別) (1) 現指定から次指定の直前までの間の各音節に適用(途中は補間) P.. 音高差(単位: 半音) V.. 音量差 S.. 音長率( S4 が通常の音長 ) (2) 次の1音節に対してのみ適用 p.. 音高差(単位: 半音) v.. 音量差 s.. 音長率( s4 が通常の音長 ) C.抑揚記号(各トラックで個別) ^ 次の1音節の音高を1段上げる [ 以降の音節の音高を1段上げる ] 以降の音節の音高を1段下げる ~ 次の1音節に音量を1段上げる < 以降の音節に音量を1段上げる > 以降の音節に音量を1段下げる & 前後の音節の発声をなめらかに | 前後の音節の発声を区切る ? 疑問文のイントネーションに ? 〃 D.音符記号 c.. 中央ド d.. 〃 レ e.. 〃 ミ f.. 〃 ファ g.. 〃 ソ a.. 〃 ラ b.. 〃 シ # 半音あげる % 半音下げる + 1オクターブ上げる - 1オクターブ下げる r.. 休符 E.無音記号 / 基準の無音区間の 0.25 倍 , 〃 0.50 倍 . 〃 0.75 倍 、 〃 1.00 倍 。 〃 2.00 倍 ────────────────────────────────────────