ボケたらあかん 長生きしなはれ


出所<中風寺>京都府南丹市美山町豊郷
作・天中新一郎さん<1987年(当時94歳)朝日新聞に投稿>


−ボケたらあかん 長生きしなはれ−

年を取ったら 出しゃばらず 憎まれ口に泣きごとに
人のかげ口 愚痴いわず 他人のことは 褒めなはれ
聞かれりゃ教えてあげてでも 知ってることでも 知らんふり
いつでもアホでいるこっちゃ

勝ったらあかん 負けなはれ
いずれはお世話になる身なら 若いもんには 花持たせ
一歩さがって ゆずるのが 円満にいく コツですわ
いつも感謝を忘れずに どんな時でも へえおおきに

お金の欲を捨てなはれ
なんぼゼニカネあってでも 死んだら持っていけまへん
あの人はええ人(おひと)やった 
そないに人から言われるよう 生きてるうちにバラまいて
山ほど徳を積みなはれ

というのは それは表向き
ほんまはゼニを離さずに 死ぬまでしっかり持ってなはれ
人にケチやといわれても お金があるから大事にし
みんなベンチャラいうてくれる 内緒やけれど ほんまだっせ

昔のことはみな忘れ 自慢ばなしはしなはんな
わしらの時代はもう過ぎた なんぼ頑張り 力んでも
体がいうこと ききまへん あんたはえらい わしゃあかん
そんな気持ちで おりなはれ

わが子に孫に 世間さま どなたからでも 慕われる
ええ年寄りになりなはれ ボケたらあかん そのために
頭の洗濯 生きがいに 何か一つの趣味持って
せいぜい長生きしなはれや