心から願うもの.13
甘い、花の香り。
智史は腕の中のあきのの髪を、そっとひと房掴んで口づけた。
「・・・いい、匂いだな」
「・・・そう?」
あきのはほんのりと頬を染めている。
「ああ。・・・お前らしいと思う。・・・やっと、手に入れた」
「・・・うん」
17歳でつき合い始めてから、6年の月日が経とうとしている。
「・・・長かったな、今日まで」
「うん・・・でも、凄く嬉しい。智史の、奥さんになれて」
「あきの・・・」
智史はやさしい瞳で彼女を見つめ、その頬にキスをする。
「・・・今日からは我慢しないからな。覚悟、出来てるか?」
あきのは一瞬ぎくり、と肩を震わせたが、ゆっくりと頷いた。
「・・・うん・・・少しだけ、恐いけど・・・大丈夫。頑張る」
神妙な顔つきになっているあきのの鼻の頭を軽くつついて、智史は苦笑した。
「そんなに力入れなくていい。俺も、出来るだけ努力する。泣かさないように」
「智史・・・」
ゆっくりと、智史の顔が近づいてくる。あきのはゆっくりと瞼を閉じた。
唇が重なる。
何度か触れるだけのそれを繰り返し、智史はそっと舌であきのの唇を突いて僅かに開かせ、そこから彼女の口腔内に侵入した。
絡め取られる深いキスは、互いの吐息を熱くしていく。そして、求める気持ちと熱を増大させていった。
智史はキスを続けたまま、あきのが身にまとっているバスローブの紐をほどき、前をはだけさせる。そして、首筋から肩、そして豊満な乳房へと掌を滑らせて
いく。
あきのは心地よさと快楽の予感に肩を震わせた。
最後まではいかなくても、正式に婚約してからは智史に何度か触れられ、その度に心地よさが増していくのを覚えさせられてしまったあきのだ。
下着を外され取り去られてしまい、薄紅の頂をそっと指で摘まれると、快感が一気に背筋を駆け抜けていく。
キスで口が封じられているため、あきのは身体を捩って快感を訴えた。
智史はゆっくりと乳房を掬い上げ、揉み、頂に触れる。
その度にあきのはぴくりと反応し、次第に肌がほんのりと色づいてきた。
「・・・気持ちいいか? あきの」
耳元で囁くと、その声にすら、あきのは身体を震わせた。
「や、ぁっ・・・聞か、ないで・・・」
「・・・教えてくれよ、俺に。・・・不快なら、止めとかないとだろ」
「そん、な・・・ああんっ」
その間も、智史の愛撫の手は止まらず、あきのの頂を摘み、捩り、快感を引き出していく。
「意地、悪・・・あんっ」
「・・・続けていいか?」
「・・・ん」
恥じらいながらもはっきりと頷いたあきのに、智史は片方の頂を口に含み、舌で転がすようにしてやる。
「はぁんっ・・あぁ・・・」
痺れるような心地よさがあきのを震わせ、艶かしい声を上げさせる。
智史は一旦唇を離すと、あきのの肩から完全にローブを外して、脱がせた。そして、そのまま身体をベッドへと倒す。
「・・・これって・・・」
白いレースがあしらわれた最後の一枚は、サイドにリボンが付いている。
すっと引っ張ると、それは簡単に解けた。
「・・・へえ」
智史は唇の端だけを引き上げて笑みを作る。
「・・・期待してた、ってコトか? あきの」
「そ、そんな、こと・・・!」
あきのの頬は瞬時に真っ赤に染まった。
「香穂ちゃんが、くれたの・・・ブラとお揃いで。だから・・・」
「・・・あいつめ・・・」
智史は軽く溜息をつく。女子大生になってから、やたら色気づいてきた妹の行く末は少々心配だ。
それはともかくとして。智史はもう片方のリボンもすっと解き、それを取り去った。
「・・・初めて、だな・・・お前のこんな姿、見るの」
「あんまり見ないで・・・恥ずかしい・・・」
身体を隠そうとしたあきのの手を、智史はくい、と拘束する。
「隠すなよ・・・」
「でも・・・」
智史はゆっくりとあきのの身体を眺める。
やさしい曲線を描くラインは細すぎず、太くもなく美しい。
白い、滑らかで弾力のある肌は、羞恥のためか仄かに匂うような朱に染まって妖艶な程の色気を醸し出している。
「・・・綺麗だな・・・」
「・・・本当?」
不安そうなあきのの声に、智史は僅かに苦笑した。
「ああ。自信持てよ、あきの。お前は綺麗だ。・・・俺だけの、お前だ」
「・・・うん」
何度か蹂躙さそうになった自分の身体を、嫌悪ではなく許容出来るようになったのは智史のお陰だ。そして、彼によって触れ合う心地よさを教えられつつある
身体の中心は、まだ誰をも受け入れたことがない。
今夜は、その『初めて』を、夫となった智史と迎えようとしている。
未知の行為への不安はあるが、あきのにとって、それは喜びでもあった。
「智史・・・愛してる、よ」
「・・・馬鹿・・・煽んなよ」
「そんな・・・ああっ」
あきのの言葉で愛しさがさらに募り、智史はあきのの乳房への愛撫を再開し、頂を口に含み、右手を大腿へと滑らせていく。
すっと割れ目を撫で上げると、そこは既に潤み始めていた。
「・・・ちゃんと濡れてる」
「やぁ・・・言わないでぇ・・・」
あきのは恥ずかしさから頬を染める。
熱にうかされ、潤んだ瞳が僅かに開かれ、智史を見上げてきて。
それが更に智史の劣情を刺激するなんて、あきのには考えも及ばないのだろう。
「・・・ったく・・・天然にも程があんだろ・・・!」
やさしく、やさしく。そう思っていた筈なのに、こんな風に誘惑されてはそれも吹っ飛んでしまいそうだ。
智史はあきのの膝を大きく割って、その蜜を湛えた花弁を露わにした。
「いやっ・・・!」
「・・・凄いぜ、お前・・・綺麗で・・・メチャクチャエロい」
「やあっ・・見ないでぇ・・・」
いきなり秘所を晒されて、あきのはふるふると首を振る。それでも、智史の力に敵う筈がなく、なす術がない。
智史はその花弁を指で押し広げて、隠れていた花芽をすっと撫で上げた。
「ひあっ」
悲鳴にも似た嬌声が上がる。
智史はそのまま、甚振るようにゆっくりと、花芽を撫で回し、時折摘まんで刺激した。
「あっ、ひあっ、ああんっ」
あきのの口から明らかに快感を滲ませた声が絶え間なく漏れ出す。
花芯からはとろりとした蜜が流れ出て智史の指を濡らした。
「凄いな・・・どんどん溢れてくる」
蜜の中へも、指先を沈めてみる。
「ひっ、あうっ」
違和感に、あきのが身を強張らせた。
「・・・痛むか?」
智史が僅かに眉根を寄せて問いかける。
「・・・痛くは、ないけど・・・ヘンな感じ・・・」
その答えに、智史は更に奥へと指を進めてみる。
「くっ、ううっ」
異物を排除するかのように花芯が強張る。
「痛いか」
「・・・うん、少し・・・」
指一本でこれでは、智史と繋がるのは相当に難しそうだ。
かなり慎重に解してやらないと。
智史は自身の衝動を抑えるかのように深く息を吐いて、ゆっくりと、ともすれば甚振るような慎重さで挿入した指を揺らすように動かし始めた。
「んっ・・あ・・・あんっ」
異物に強張っていたナカが、少しずつ熱を帯びていく。
それに呼応して、蕩けるような蜜の量も増えていく。
頃合いを見計らって指をもう1本増やす。その瞬間、あきのはやはり辛そうに眉根を寄せた。
それでも、ゆっくりと広げるように指を動かしていくと、甘い声が漏れてくる。
「あきの・・・」
「んっ・・あっ・・あう・・・」
空いているほうの手をそっと胸へと伸ばし、その頂を弄ると、あきのの身体がぴくりと撥ねた。
「あんっ、ああん」
ナカと頂の両方を刺激され、あきのは快感にうち震えた。
強張っていた花芯が熱を帯びてほぐれていく。
ある一点をくっと押された時、あきのの背筋に駆け抜けるような快感が響いた。
「ひああっ」
「・・・ココ、か?」
智史が慎重にそのところを探る。2本の指をナカでバラバラに動かすようにしてその箇所を刺激すると、あきのは悲鳴のような嬌声を上げた。
「ひあっ、だめっ、ああっ、あっ」
くちゅりと淫らな水音が聞こえるほどに、あきのの花芯は蜜を溢れさせ始めた。
燃えるように熱くなる膣壁が智史を誘っているように感じる。
「くそっ・・・やばい」
自身の抑えが限界に近づいていることを感じ、智史は指の動きを早め、更に花芽にも刺激を与える。
「ひっ、あああっ、ダメぇっ、あああっ、やあっ!」
甘い甘い悲鳴を上げて、あきのは軽い絶頂に達した。
肩まで使って荒い息を漏らすあきのをみながら、智史は素早く自身に避妊具を被せ、あきのの入り口に宛がった。
1度達して弛緩しているナカに、ぐっと入り込む。
「ひっ、くうっ!」
中ほどまで進んだところで、あきのが痛みに身体を強張らせてしまった。
「あき、の・・・力、抜いて」
「痛いっ・・・やあっ」
「っ・・・力、抜かないと・・・お前が辛いぞ」
「そ、そんなこと・・・痛・・」
智史が更に進もうとすればする程、あきのは痛みに耐えられなくなっていく。
やさしくしてやりたいと思っていた。でも、ここまで来て拒まれても、もう止めることなんか出来ない。
智史はあきのの両方の頂を捩り刺激した。
「うっ・・あっ・・あっ・・」
あきのは胸に与えられる甘い刺激に、少しずつ強張りを解いていく。
智史は片手を花芽に移してそこも弄り始めた。
「ああっ、あんっ、あっ・・・」
また、強張りが緩む。
そこで、智史はいっきに奥へと進んだ。
「あうっ! 痛っ!!」
「・・・っ・・・全部、入った、あきの」
破瓜の痛みで涙を滲ませたあきのの目元にそっと口づけて、智史はゆっくりと息を吐き出した。
油断すると、このまま激しく律動してしまいそうになるが、それではあきのには痛みしか残らないだろう。
だから、あきのがこの繋がっている状態に少し慣れるまで、このまま動かずにいたい。
そうは思っても、あきののナカは想像以上に熱く蕩けそうで、心地良すぎておかしくなってしまいそうだ。
「・・・痛いか?・・・いや、痛いよな」
目尻からつう、と零れた透明な雫に、智史の胸が痛む。
それでも、このままで終わろうとは思えない己の欲望の深さに苛立ちを覚えながらも、智史はゆっくりとあきのの豊満な乳房に触れ、頂を捏ねるように刺激し
ていく。
「んっ、あっ、あん・・・」
身体を引き裂くかのような質感を持った智史自身の齎す痛みは想像以上で、あきのは涙が出るのを止められなかった。
けれど、その痛みの中にあっても、智史をきちんと受け入れられた、繋がってひとつになれたという充足感のようなものも感じている。
辛いのか嬉しいのか、よく判らなかった。
「あき、のっ・・・」
智史が掠れた声で名を呼ぶ。
それを合図に、智史が律動を開始する。
「うっ、んっ、あうっ・・・」
痛みに、あきのの眉根がぎゅっと顰められる。
それでも、智史は己を止められなかった。この心地よさの中で、欲望を吐き出すことだけを求めていた。
「あきのっ・・あきの・・」
うわごとのように名前を呼びながら、智史はあきのの熱と締め付けを感じて動き続ける。
上り詰める瞬間、智史は息を呑んだ。
背筋が震えそうな程の快感が嵐のように駆け抜けていく。
何度もあきのを抱くことを思いながら自分で抜いていたのとは桁違いな程の心地よさ。
欲望を吐き出し終えて、あきのの中から出ると、軽い喪失感のようなものを味わった。
シーツには赤いシミが出来ていて、あきのの痛みを物語っている。
自身の始末を終えると、智史はそっとあきのの肩を抱き、頬の涙の跡を拭った。
「・・・大丈夫か、あきの」
「・・・・・ん・・・・・なんとか・・・・・」
まだ、智史と繋がっていた部分に違和感を感じる。痛みは酷くはないが、何かがまだそこに挟まっているよう、と言えばいいのか。
「・・・悪かったな。泣かさないよう努力する、なんて言っときながら、無茶しちまった」
智史の自嘲気味な声音に、あきのはゆっくりと閉じていた瞼を開けた。
「・・・よく、判らないけど・・・でも、は、初めては痛いって、実香子にも聞いてたし、それに、あの、途中までは、その・・・き、気持ち、良かった、
し・・・だから・・・」
恥ずかしくて、明確には言えなかったが、決して嫌ではなかった。痛みはあったが、それだけではない、気持ちの上での満足感も確かにあった。
前戯で感じていたのも事実。それに、智史は懸命に気遣いながら抱いてくれていたような気がする。
「そ、それに、これで・・・私、本当に智史の奥さんになれた訳でしょ? だから・・・」
「あきの・・・」
智史はあきのをそっと抱きしめる。
愛しくて愛しくて仕方がない。
本当はすぐにでもまた、抱きたかったが、あきのの負担を思うとそれはダメだと、己に言い聞かせる。
「・・・・・これからも、よろしくな? あきの。・・・愛してる」
耳元でそっと囁くと、あきのは幸せそうに微笑んだ。
「私も、愛してる、智史」
やさしい、触れるだけのキスを交わし、2人は眠りについた。
END
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